2019/03/14

36協定とは

36協定とは

時間外労働をしても違法にならないための協定

36協定とは、1日8時間・週40時間の「法定労働時間」を超えた労働(残業)をするために、会社と従業員との間で締結される協定です。従業員一人一人と協定を結ぶのではなく、労働組合や労働者の代表と会社の間で締結します。

多くの会社では当たり前のように残業がありますが、36協定が締結されていなければ残業することはできません。

36協定が締結されているかどうかは、就業規則や雇用契約書を見れば確認できます。それらに36協定が盛り込まれていなければ、従業員に残業の命令を出すことが出来ません。

36協定のルール

36協定で定められている、時間外労働には限度時間が定められています。

これは、「上限無く時間外労働が可能となっていた臨時的な特別の事情がある場合として労使が合意した場合であっても、上回ることのできない上限を設定することが適当である。」として、厚生労働省が労働基準法を基に上限を決めた時間であり、原則として月45時間かつ年360時間とされています。

特別条項付き36協定

特別条件付36協定とは、臨時的な場合、36協定の限度時間を更に延長して、残業させることができるとする協定です。特別条項付き36協定を取り入れるには、以下の内容を満たしている必要があります。

  • 原則としての延長時間(限度時間以内の時間)を定めること。
  • 限度時間を超えて時間外労働を行わせなければならない特別の事情をできるだけ具体的に定めること。
  • 特別の事情は、「一時的・突発的」「全体として1年の半分を超えないことが見込まれること」
  • 一定時間の途中で特別の事情が生じ、原則としての延長時間を延長する場合に労使がとる手続を、協議、通告、その他具体的に定めること。
  • 限度時間を超える回数を定める。(年何回など)
  • 限度時間を超える一定の時間を定める。
  • 限度時間を超える一定の時間は、なるべく短くするように努める。
  • 限度時間を超える時間の割増賃金率を決める。
  • 増賃金率は、法定割増賃金率を超える率とするよう努めること。

特別条件付き36協定も、労働者の代表と使用者で話し合って、決めなくてはなりません。しかし、協定の手続を履践すれば会社の都合で上限時間を超えて労働させることのできるようになっています。

しかし特別条項を抜け穴として長時間残業が常態化している事に対して、当然問題視もされており、ここに月100時間を超えるような残業時間を記載している企業には、労基署による監査が入りやすくなります。

また働き方改革法案による法改正により、特別条項を結んだ際の上限は月100時間未満、年720時間未満、月45時間を上回る回数は年6回まで、連続する2カ月から6カ月平均で月80時間以内となり、適用条件も厳格化されます。

36協定の有効期限

36協定の有効期限は最長で1年となっております。36協定は自動更新条項を付けることはできませんので、毎年、新しい36協定を労働基準監督署に提出する必要があります。

36協定を提出しなかったり、更新期限が切れたまま従業員に残業をさせてしまうと、従業員に時間外労働をさせるのは罰則の対象になり、6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金になります。

働き方改革 参考記事

36協定の上限時間がない業種

一部業種では独自の規定が設けられており、36協定が適用されないことがあります。

土木、建築の現場作業、大規模な機械・設備の工事などを行う職種

建設関連業は、36協定による残業時間の上限が適用されません。そのため、週15時間・月45時間を超えて残業しても、違法ではありません。

ただし、もし長時間労働が原因となって精神疾患などが発生した場合、労災認定されます。

運輸関連業

トラック、タクシー、バスのドライバーの場合は、独自の規定が存在します。

これらのドライバーの1日の労働時間は、運転、整備、荷扱いなどの作業時間と、荷待ち・客待ちなどの手持ち時間を合わせた労働時間が13時間以内で、休憩時間を継続して8時間以上取らなければならない、という規定があります。

季節などによって業務量が大きく変化するような業種

郵政事業の年末年始における業務などの一部業種は36協定における上限時間がありません。

ただし1年間における残業時間の上限は設定されています。

36協定違反事例

36協定で決めた時間を超えて働かせてしまうと、労働基準法に違反します。場合によっては、刑事事件として立件され書類送検される可能性もあります。

特別条項付き36協定を不当に結ぶ

特別条項付き36協定を結べば、ある程度まで労働時間を延ばすことが出来ます。しかし、特別条項付き36協定は、労使で決めなくてはいけません。

実際には労使間で協議していないのに、会社側が一方的に協定を作成して届け出てしまうというケースも存在します

2012年には居酒屋チェーンのワタミが労働基準法で定められた労使間の手続きを踏まずに従業員に長時間労働を行わせ過労死させる事件が起きております。
また労働組合のない中小企業の場合会社が協定届をねつ造し本人に無断で代表にして署名押印というケースも多くあり、大きな問題となりました。

特別な事情がないのに、上限を超えて残業している

特別条項付き36協定は、あくまで臨時的・一時的・突発的な特別の事情が発生した場合にのみ、36協定の上限時間を延長させることができるという協定です。

特別な事情がなく、日常的に月45時間といった上限を超えた残業が発生している場合、特別条項付き36協定があっても違法です。

サービス残業をさせる

36協定の上限を超えて働かせると違法となるならば、残業時間をカウントせず残業をしなかったことにしようとする事をサービス残業といいます。「45時間以上残業したら自己責任だから、それ以上はタイムカードを押せない」というのが典型例です。

最近はそこまであからさまな会社は減ってきたかもしれませんが、現在もサービス残業を強いられたという話はチラホラと聞きます。しかし、そもそもサービス残業は残業代の支払いを不当に免れる行為として違法です。

別の労働形態を結ぶ

他にも特殊な労働形態を取り入れたように装って残業を誤魔化すというケースもあるかもしれません。例えば、労働時間に制約のない労働形態なので残業も関係ないといったケースが考えられます。

残業によって著しい不利益を被った

労働時間の条件が満たされていても、あなたが著しい不利益を被ってしまうような残業は、違法となる可能性が高いです。

  • 体調不良(持病などを含む)
  • 家族の危篤
  • 妊娠している
  • 家族に対する育児、介護が必要

このような場合、自分や家族の身体・生命に関わるため、残業の強制は認められません。

36協定違反の罰則

36協定で決めた時間を超えて働かせてしまうと、労働基準法違反として、「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられます

働き方改革 参考記事

まとめ

特別条項を利用するにあたっては、決して無制限に36協定の上限時間を延長できるわけではなく、年に6回までであるとか、過労死ラインを超えないようにしなければならないという点に気を付けなければなりません。

そもそも、1日の労働時間8時間を超えて残業をするということ自体が、労働基準法上は稀であるという扱いのため、特別条項は、イレギュラーの中でさらにイレギュラーな制度ということになりますので、可能であれば特別条項は使わないという考え方が本来あるべき姿と言えます。