罰則がある?女性活躍推進に取り組まなかった場合のリスク

罰則がある?女性活躍推進に取り組まなかった場合のリスク

女性活躍推進

女性活躍推進法とは

2016年4月1日、政府は女性活躍を実現するために女性活躍推進法を定めました。 「女性が仕事で活躍する」といった内容を事業主に対して義務化したことです。 女性の活躍推進に向けた数値目標を含む行動計画の策定及び公表、女性の職業選択に役立つ情報の公表が、国や地方公共団体、民間企業等の事業主に義務付けられました。

女性活躍推進法に基づく取り組み

こうした基本原則の実現のために、同法は国、地方自治体と企業等に以下のような取組内容を定めています。

  • 女性の活躍推進の基本方針、企業等が作成する「行動計画」の指針の策定
  • 企業の優れた取組への認定、発注先としての優遇扱い
  • 女性の職業選択に資する情報の公開、啓発活動、職業紹介、訓練、起業支援等による支援
  • 国の機関に勤務する女性のための行動計画の作成及び実施状況の公表
  • 管轄地域での女性活躍推進の計画作成
  • 働いている女性等からの相談対応、関係機関の紹介、情報提供、助言
  • 国が女性活躍推進で優良と認定した企業への発注先としての優遇扱い
  • 自治体の機関で勤務する女性のための行動計画の作成及び実施状況の公表

企業等の場合(300人以下の企業は努力義務)

  • 女性採用比率、勤続年数男女差、労働時間、女性管理職比率等、企業の女性活躍についての状況把握、課題分析
  • 状況把握及び分析に基づき、課題の解決ができる適切な数値目標と取組内容を含めた行動計画の策定、届出、周知、公表
  • 企業の女性活躍についての情報公開

厚生労働省によると、2017年12月末時点で行動計画策定等の義務のある一般事業主の99.7% にあたる16,071社が行動計画を届けています。努力義務とされる300人以下の一般事業主での策定・届出数は3,866社です。

女性活躍推進に取り組まなかった場合のリスクとは?

上記の定められた実施義務を行わなかった場合、企業に対する罰則はあるのでしょうか?。

罰則はないがイメージを損なうリスクがある

女性活躍推進法には罰則規定がありません。実施義務を行わなかったという理由で、企業及び社員が罰せられるということはありませんが、イメージダウンに繋がる可能性があります。
また現時点で罰則などは無いですが、一般事業主行動計画は殆どの対象企業が提出しているため、届け出は強く推奨されており、今後罰則など対応が変わる可能性もあります。また下記のデメリットがあります。

助言・指導もしくは勧告を受ける可能性がある

行政は必要に応じて事業主に報告を求めて助言・指導もしくは勧告を行うことが可能となっており、企業に指導が入る可能性はあります。

公開されていないことがイメージダウンにつながる

厚労省のサイトで企業の情報が公開されているため、公開していない場合は企業イメージを損なう可能性もあります。求職者が企業の女性活用状況を知ることが出来ないため、人材確保の面でネックとなる可能性があります。

一般事業主行動計画の届け出の進め方

301人以上の大企業については女性活躍推進法による取り組みの実施義務があり、一般事業主行動計画の届け出を行う必要があります。

自社の女性の活躍状況の把握・分析

現状を把握し、自社の課題点を洗い出します。チェックすべき必須項目は下記になります。

  • 女性採用比率
  • 勤続年数男女差
  • 労働時間の状況
  • 女性管理職比率

分析を元に行動計画の策定と情報公表

上記の必須項目を踏まえ、具体的な行動計画を策定します。これを、一元化されたデータベースである女性の活躍推進企業データベースを通じて外部に公表します。 厚生労働省から用意されている一般事業主行動計画策定入力支援ツール、一般事業主行動計画策定支援マニュアルもありますため、こちらを使用しましょう。

労働局への届け出

行動計画を策定したら、管轄の労働局へ届け出をします。電子申請、郵送、持参で届け出を行うことが可能です。厚労省が省令で定める情報から、事業主が女性の活躍に資すると考えるものを公表する必要があります。

まとめ

女性活躍推進法には罰則規定がありません。そのため、実効性を疑問視する声もありますが、法的義務である事に変わりはありませんので、罰則の有無に関わらず取り組みを行う事が重要となります。また女性活用を積極的に行うことや、行動計画や実施義務の届け出を行うことにより、企業のイメージアップに繋がり、何もしないことよりも大きなメリットがあります。

女性活躍に向けての取り組み方 女性活用のメリット・デメリット

女性活躍に向けての取り組み方 女性活用のメリット・デメリット

女性活躍推進法

2016年4月1日、政府は女性活躍を実現するために女性活躍推進法を定めました。 「女性が仕事で活躍する」といった内容を事業主に対して義務化したことです。 女性の活躍推進に向けた数値目標を含む行動計画の策定及び公表、女性の職業選択に役立つ情報の公表が、国や地方公共団体、民間企業等の事業主に義務付けられました。

女性活躍推進法の基本原則

同法では以下の基本原則を元に、女性活躍の推進が図られています。

  • 女性の採用、昇進等の機会の積極的な提供及び活用や、性別で固定的役割分担等を行う職場慣行の是正が実施されること
  • 「職業生活と家庭生活との両立」を実現するための環境整備により、それが円滑かつ継続的に実施されること
  • 上記の両立に関し、本人の意思が尊重されること

女性活躍推進法に基づく取り組み

こうした基本原則の実現のために、同法は国、地方自治体と企業等に以下のような取組内容を定めています。

  • 女性の活躍推進の基本方針、企業等が作成する「行動計画」の指針の策定
  • 企業の優れた取組への認定、発注先としての優遇扱い
  • 女性の職業選択に資する情報の公開、啓発活動、職業紹介、訓練、起業支援等による支援
  • 国の機関に勤務する女性のための行動計画の作成及び実施状況の公表
  • 管轄地域での女性活躍推進の計画作成
  • 働いている女性等からの相談対応、関係機関の紹介、情報提供、助言
  • 国が女性活躍推進で優良と認定した企業への発注先としての優遇扱い
  • 自治体の機関で勤務する女性のための行動計画の作成及び実施状況の公表

企業等の場合(300人以下の企業は努力義務)

  • 女性採用比率、勤続年数男女差、労働時間、女性管理職比率等、企業の女性活躍についての状況把握、課題分析
  • 状況把握及び分析に基づき、課題の解決ができる適切な数値目標と取組内容を含めた行動計画の策定、届出、周知、公表
  • 企業の女性活躍についての情報公開

厚生労働省によると、2017年12月末時点で行動計画策定等の義務のある一般事業主の99.7% にあたる16,071社が行動計画を届けています。努力義務とされる300人以下の一般事業主での策定・届出数は3,866社です。

女性活躍推進法の導入の背景

日本社会では、急速な少子高齢化や人口減少の進展に伴う労働力不足が本格化しています。この状況を打開するために、政府は成長戦略の一環として女性活躍推進法を制定し女性の活躍を推進しました。 また、女性の就労面の改善が不十分であったことも女性活躍推進法の導入の背景にあるとみられています。 女性の社会進出を巡っては、1985年の男女雇用機会均等法以来、育児休業法、育児介護休業法、次世代育成支援対策推進法が制定され、雇用面での男女の均等化への支援や、仕事と家庭の両立を図るための支援が実施されてきました。その結果、女性の就業者数は上昇し、特に2012年からの5年間では約7.2%増と、大きく改善しています。 しかし、管理職に占める女性の割合は11.2%に留まります。これは、2003年に男女共同参画推進本部が目標値としていた30%程度に遠く及びません。女性の就業は徐々に進んでいるものの、職務は補助的な役割に留まっており、キャリア形成では不十分な状況でした。

ここから言えることは、「雇用」や「仕事と家庭の両立」など、女性の就業を支えるための個別の施策だけでは、女性のキャリア全体を支援することにはならず、本当の意味で女性の社会進出を促すことにはならないということです。そこで、「雇用面での均等支援」と「仕事と家庭の両立支援」を包含した施策が求められるようになりました。

女性活用のメリット

業務の改善

女性の積極的な採用や管理職への登用は、そのための環境整備を伴います。育児や介護などに対する支援、休職後の復帰支援など、女性にとって働きやすい環境を用意しなければ、人材は確保できません。 そのための取り組みは、往々にして女性だけでなく他の社会的弱者やマイノリティに視点を向けることにつながり、ダイバーシティ対策に発展します。そして、そのための活動が、ひいては職場全体の環境改善につながっていくのです。 女性が働きやすく、やりがいの感じられる職場を実現することは、男性も含む全ての従業員にとって働きやすい職場になるということです。

企業文化の改革

女性活躍の推進は企業文化の改革にもつながります。日本企業の多くは、制度面でも風土面でも男性中心の状態が続いていましたが、近年は女性の社会進出に伴い、大企業でも変化が見られます。「働きやすい職場」を実現するためにまず必要なのは制度改革ですが、これを浸透させ、実用化するためには全ての従業員の意識改革が必要です。 その過程で、時代に見合った新しい風土が生まれていきます。 例えば、女性の方が上下関係を超えたコミュニケーションが得意なため、縦割り組織の是正や会社全体のコミュニケーションの活性化につながる、などです。 日本では経済産業省と東京証券取引所が共同で、女性活躍推進に優れた上場企業を「なでしこ銘柄」として選定し、「中長期の企業価値向上」を重視する投資家に紹介しています。選定された企業では株価の上昇だけでなく、企業イメージの向上も期待できるでしょう。「なでしこ銘柄」選定企業は経済産業省のHPで確認できます。 女性活躍推進は政府の主導で開始されたものですが、企業にとってのメリットは明らかです。ぜひ積極的に取り組み、企業としての成長につなげましょう。

女性の活躍の課題とデメリット

女性の活躍推進するにあたっての取り組みが多く進む中同時に課題も多く出てきております。

社員の意識改革が進まない

「女性活躍」というキーワードだけが認知され、女性が働きやすい環境が整うことによる効果や必要性がまだ十分理解されていない状況です。 特に、施策を運用したり業務のマネジメントを行う管理職層に女性活躍推進の必要性を浸透させることは必要不可欠です。 女性が働きやすい環境を整備することで、組織全体にどのようなメリットがあるのかをしっかりと周知していくことが大切です。

制度はあるもの運用がうまくいかない

「女性社員に向けた制度を整えたものの現場ではなかなか使われていない」このように、女性が働きやすい環境を整えようと施策を打つものの、 実際の管理職や女性社員がその制度を活用できていないというケースは非常に多くあります。

施策の内容が自社の女性社員の課題に合っていない

「管理職を任せたいと思っても女性社員に意欲がない」というように、女性社員に活躍の場をつくろうと試みても、なかなか女性社員を登用することが難しい場合があります。 人事が求める女性社員像と、女性社員が希望するキャリアの描き方のすり合わせができていないことが考えられます。 また、働く女性の中にはワークとライフの両立に対して不安を抱き、キャリアを自ら抑えてしまう女性社員もいます。

育児・介護の両立がうまくいかない

仕事と育児の両立のハードルも高い。 両立経験者のうち、仕事をやめようと思ったことがある人は半数以上で理由は「時間的な余裕がなく、子どもに向き合えない」が最も多く。 共働きの夫の1日の家事・育児時間は46分で妻の6分の1以下で負担は女性に偏っています。 上司や職場の理解・夫の理解と協力が進んでおらず、職場・家庭双方での男性の意識を変える必要があります。


女性社員が実際にどのような悩みや不安を抱えているのかという本音を具体的に把握し、 それらを解消しながら活躍をサポートしていくことが必要です。

女性活用を円滑に進めるためには

女性活用のメリットデメリットはありますが、大抵デメリットは会社側の都合であるので、社風の転換や女性のための制度の導入、それを有効活用できる環境が必要です。

制度を利用しやすい環境にする

女性活用の制度が用意されていても利用できない状況では意味がありません。形だけでなく女性が実際に活用できるような空気を作ることが大切です。

時短勤務やテレワークなどワークライフバランスの実現

育児・介護の両立の関係上、女性はワークライフバランスを重視する人が多いです。そのため育児や介護に対応できるよう時短勤務やテレワークなどの体制を整え、企業は柔軟に対応できるようにする必要があります。
特に育児は子供の面倒を見る必要がありますので、在宅で業務を行えるようになれば女性の負担軽減になります。

まとめ

女性が働きやすい環境を整えることは、さまざまな従業員が働きやすい環境をつくることでもあります。 また、女性は男性とは違い育児などがあるため、時短勤務やテレワークへの移行など柔軟に対応できるようにしなければなりません。
女性を採用した後は、女性が長く働けるよう、産休や育休の取得を促すなど職場環境の改善に努めましょう。

時短勤務、在宅勤務でも活用できる管理ツール

育児や介護で時短勤務、在宅勤務になった際の勤怠管理において下記のツールが最適となります。

SmartRPA

時短勤務、在宅勤務を活用する際はこちらのツールの導入もいかがでしょうか?このツールは業務に関するあらゆる情報を管理下に置き、最適化に最も適したツールです。

出退勤、タスクの管理も可能となっており、勤務状況と同時に可視化され、適切な労働環境を作り出す事が可能です。

女性の育児や介護によって一時的にテレワークを行う際の勤怠管理にも使用できます。

公務員における女性活躍推進の動き

公務員における女性活躍推進の動き

女性職員の活躍と働き方改革の推進

政府は、女性国家公務員の採用を拡大するとともに、積極的な登用を推進しており、男女問わず職員が働きやすい職場を目指して環境整備を進めています。

女性公務員の比率

2015年12月25日閣議決定の第4次男女共同参画基本計画では、女性国家公務員の採用について、国家公務員採用試験および国家公務員採用総合職試験からの採用者に占める女性の割合を毎年度30%以上にするという政府目標を掲げており、5年連続で目標を達成しています。

国家公務員

内閣の発表によると、2019年度の国家公務員の女性採用比率は33.9%となっております。

  • 総合職:34.5%
  • 一般職:38.3%
  • 専門職:31.6%

地方公務員

2016年度に実施した内閣府および総務省の調査によると、地方公共団体の女性採用比率は都道府県で44.2%、政令指定都市で34.4%です。一般行政職に限ると、都道府県は40.9%、政令指定都市では37.3%となります。
地方で働く女性公務員の増加を後押しするのは、2016年度施行の女性活躍推進法です。同法と、政府が推進する働き方改革との2本立てにより、女性が働きやすい環境の整備が公務員でも民間企業でも進んでいます。特に地方で活躍する女性公務員の数は今後も増えていくことが予想されております。

各省庁の取り組み

公務員による女性活躍推進の動きは政府が率先して行っております。各省庁の取り組みとしては以下のようなものがあります。

経済産業省

仕事や職場、組織に対する職員意識を把握するためのアンケート調査を継続的に実施。各部局に結果をフィードバックし、業務改善や職場活性化に役立てています。

総務省

課長級職員に対し、育児・介護中または出産予定の職員を含む職場のワークライフバランスの実現に関する研修を実施。しています。

内閣法制局

テレワークの推進、幹部職員による定時退庁の完全実施、超過勤務の事前申請などの手続きを導入しております。

環境省

管理職の理解度を高める理解度テストの実施、職員の管理職研修を積極的に行っております。


また激務である官僚においても、女性活躍推進社会の取り組みにより女性比率が近年高まっており、法務省においては6割となっております。働きやすい環境づくりと継続が今後の課題となっていきます。

地方自治体の取り組み

各自治体は、女性職員の採用・登用を積極的に進めるべく、目標数値を設定するなどしています。 また、自治体はワークライフバランスの推進にも力を入れています。仕事・子育ての両立支援制度は地方公務員法などに規定されていますが、それに加え独自の支援制度を設計する自治体も。女性を対象とする子育て支援はもちろん、男性の育児参加や家事参加の支援も急増しています。そのほか、定時退庁を促して勤務時間の短縮をバックアップする施策も積極的に取り入れられています。

まとめ

女性活躍推進社会の動きは政府が率先して行っており、今後も引き続き推進されると予想されます。また、並行して働き方改革の取り組みも行っており、女性によって働きやすい環境になりつつあります。

女性の社会進出の歴史と課題

女性の社会進出の歴史と課題

女性の社会進出の歴史と課題

国際条約批准から始まった男女平等への取り組み

1985年に制定された男女雇用機会均等法は、国連が採択した女性差別撤廃条約を日本が批准するために必要となり、作られたものです。国連の働きかけと外圧がなければ、女性の社会進出は進んでいなかったかもしれません。 それ以前は、男女で採用条件や待遇を変えることが禁止されていませんでした。女性だけに結婚したら退職や30歳で定年などの条件を課して雇うことが、少なからず行われていました。

男女雇用機会均等法

この男女雇用機会均等法は募集や採用時に男女を均等に考えること、昇進や、定年・退職・解雇などについて女性であることを理由に男性と差別することを禁止するものです。かつては結婚や出産を理由に退職を迫られることも少なくなかったようですが、男女雇用機会均等の制定により、徐々に企業側の意識も改革されていきました。 均等法は、定年・解雇については性別による差別を禁止、募集・採用及び配置・昇進については差別を行わないことを努力義務としましたが、1997年の法改正でこれらも禁止になりました。

女性の社会進出はいつから?

日本の女性の社会進出は遅れているとよく言われますが、日本の女性の社会進出の歴史はどうなっているのでしょうか?

明治維新、西洋化がきっかけ

日本女性の社会進出は明治時代から糸工場で働く女性を皮切りに、教師・医師・看護婦といった専門職に女性が就きはじめるようになり、1912年~1926年の大正時代には、第一次世界大戦による経済成長で新分野の仕事が生まれ、女性の就労機会は広がっていきました。事務員・タイピスト・電話交換手・百貨店店員などの仕事に就く職業婦人が登場しました。しかし民法による家系制度による制約や学歴、身分による制約により平等とは言い難い状況でした。

本格的な整備は戦後から

1945年に終戦を迎えると、同年、婦人参政権が成立。1947年には賃金や就労時間などの労働条件に関する最低基準を定めた労働基準法が公布されました。1954年~1973年の高度経済成長期には事務職が大幅増加し、短時間労働で働くパートタイマーが出現。職場での男女格差が問題になると、その対策として1985年には男女雇用機会均等法が制定されました。

仕事と子育ての両立支援が本格化

1992年からは育児休業法が制定され、まずは常用雇用者に対して1歳までの育児休業が保障されました。これは、1989年に合計特殊出生率が過去最低の1.57を記録し、その後もさらに低下が続いたことから出てきた出生率向上策です。 その後も、育休の適用範囲拡大、育休中の給付割合の増加、短時間勤務や時間外労働の免除など、規定の内容が充実し、両立支援は手厚くなりました。

なぜ日本は遅れているのか

国連が採択した女性差別撤廃条約を批准するまで国策レベルでの女性の社会進出と就業支援に関して消極的でした。なぜここまで遅れているのか、そこには日本特有の事情がありました。

男女の役割分担意識

男女格差がなくならない要因として多く挙げられるのは、男は仕事、女は家庭という性別役割分担意識がいまだに根強いことです。 背景には夫が稼ぎ、妻は家事を担いつつ家計を補うという古いモデルを前提にした制度や慣習が会社や社会全体に残り、女性が正社員として働き続けることが難しい現状があります。
また、男女の役割分担意識は、女性を働きにくくさせるだけでなく、男性が家事に携わることも難しくします。 日本の男性の家事・育児時間が諸外国と比べても短いことは有名ですが、これは当人のやる気の問題以上に、男性の仕事が忙しすぎることや、家庭のことは女性がきちんとやらなければいけないという考え方に女性も含めて囚われているという問題が大き面があります。

女性活躍推進、正社員化の動き

政府も問題があることは理解しています。そうした中で働き方改革で長時間労働を是正しようとしたりしているわけです。 そして、企業に対するより直接的な働きかけとして2016年4月に女性活躍推進法を施行しました。これを受けて管理職に占める女性の割合を増やすことを目標にする企業が増えています。そのためにはまず管理職候補を育てなければなりませんから、一般職を総合職に、あるいは非正規社員を正社員に転換するという動きも出てきています。 また、少子高齢化による人手不足への対応としても、非正規社員の正社員化に取り組む企業が増えています。 なかでも、勤務地限定や短日・短時間勤務などを認める限定正社員」というコースを作って、これまではやむを得ず非正規の仕事を選んでいた人たちを呼び込み、つなぎとめようとするケースが目立ちます。

まとめ

日本において女性の社会進出は戦後以降大きく進みました。しかし、女性の社会進出にはまだ多くの課題や理解が必要な状態です。働き方改革においても女性活躍社会は重要な課題となっていますので、古い価値観の淘汰、さらなる施策の継続と理解が必要となっていきます。

なぜ進まない?日本の女性活躍の現状

なぜ進まない?日本の女性活躍の現状

女性管理職3割目標2020年30%から2030年までに先送り

政府は、社会の指導的地位に占める女性の割合を30%程度にするとした目標を先送りし、2030年代に指導的地位にある男女の比率が同水準になることを目指すとする新たな目標を掲げる方針を固めました。
女性の社会進出を後押しするため、政府は、社会の指導的地位に占める女性の割合をことし2020年までに30%程度にするとした目標を掲げていましたが、国家公務員や民間企業の女性管理職の割合が依然として低い水準にあることなどから達成は困難だとして、今年までの目標の達成を断念し、達成を目指す時期を「2020年代の可能なかぎり早期に」へと変更し、先送りすることになりました。
このように政府が後押しや目標を立ててもなかなか思うように女性の社会進出は進みづらいのが現状です。その背景には何があるでしょうか?

達成できなかった理由

この目標は2003年6月20日男女共同参画推進本部で決定し、2014年の世界経済フォーラムWEF年次総会ダボス会議で2020年までに、指導的地位にいる人の3割を女性にすると宣言したことにより実現に注目が集まっておりました。達成できなかった理由として家事やケアワークの負担が女性に偏りがち、キャリアと家庭の両立支援が不十分との指摘が多くありました。
女性活躍社会を目指すには、法律や制度、ルールを設計する意思決定の場に女性が参画することが重要です。議員選挙では120以上の国で、候補者や当選者についてどちらの性も40%を下回らないなどと法律で定めたり政党が自主ルールを設けたりするクオータ制が導入されています。欧州を中心に企業の役員会にもクオータを設ける国も。しかし日本では議論が深まっていません。

日本の女性活躍の現状

ジェンダー・ギャップ指数」G7最下位

世界各国の男女平等の度合いを指数化したジェンダー・ギャップ指数2020報告書が、2019年12月17日に世界経済フォーラムにより公表され、日本が前年の110位から順位を下げて153カ国中121位で過去最低となっております。経済、教育、保健、政治の 4 分野の中で、日本が後れを取っているのが、経済分野と政治分野。いずれの項目においても、意思決定への参画やリーダー層の男女比において女性の存在が際立って低いのが現状です。

管理職登用を望まない女性が多い

そもそも女性たちが昇進を望んでいないという声もあります。登用を希望しない理由をみると、仕事と出産・育児両立の難しさやロールモデルの不在などがあります。
また今までの、いい大学から有名企業に入り出世・昇給することが幸せに繋がるとされてきた昭和の価値観。そのために、競争が全てで、無駄な長時間労働や無慈悲な単身赴任に耐える必要という風潮が多く残っているのも要因としてあげられます。

女性を育成する風土がない

女性自身の仕事に対する意識が低いことや、良質な仕事にアサインしてもらえていないことから、中堅になる前に退職するケースが多いです。 この背景には、「女性は結婚や出産を機に家庭に入るべきだ」という考え方や、家庭を持った女性に対して重要な仕事を任せない企業の慣習などがあります。
女性の活躍を推進するにためには、まず女性を育成する環境を整えることが重要となり、 男性型の社会構造を見直し、女性も働きやすい環境や制度を経済や政治分野で整え、女性リーダーを周りが支援し、女性自身もリーダーになる主体性を持てる社会を作っていく必要があります。

女性活躍実現ののポイント

女性社員の状況や想いを正しく理解する

女性活躍推進に成功している企業では、女性社員の状況や想いを正しく理解すること、ニーズを汲み取ることに注力しています。 逆に、女性活躍推進がうまくいっていない企業では育児中の女性社員に配慮するあまり、責任のある仕事は時間制約のない社員が行う体制になっている。など女性社員への配慮の仕方が違っている、配慮が行き過ぎているというケースが多くみられます。 実際に女性社員の話をしっかりとヒアリングすることで、本当に配慮してほしいポイントを理解することが重要です。

働き方の選択肢を増やす

働く時間や場所などのに対して選択肢を用意し状況に応じて選べるようにすることが重要です。 女性社員の働き方の希望はライフイベントや本人の志向により様々です。 育児中であっても、「時短勤務で残業をせずに、子どもとの時間を優先したい人」、「さらなる成長を目指し時間をうまくやりくりして管理職で働き続けたい人」など。 選択肢がある分、働き続ける選択をする女性が増えます。

育児中の女性だけではなく全社員を対象にする

企業の女性活躍で見落とされがちなポイントとして、育児中の女性だけではなく全社員を対象にするという点があげられます。 制度を作る際には、育児中の女性だけではなく、介護中や副業をしている男性なども含めた全社員を対象とした制度にするべきです。 育児中の女性だけが利用できる制度にすることで男女格差につながり、男性は長時間働くことが当たり前の風土ができ、夜の時間帯の会議が多くなるなど結果的に女性活躍を阻害してしまう結果になるケースも発生しています。 育児中の女性だけが利用できる制度では、フルタイム勤務の女性や男性からの不満につながりかねません。 皆が平等に利用できる制度にしたところ、会社全体の離職率が下がったという企業もあり全社員を対象にすることでのプラスの面が大きいようです。

まとめ

女性活躍というトレンドに乗っかるだけではなく、男女全社員の働き方、会社の仕組み自体を変革していかなければ根本的な解決にはなりません。 企業の文化や働き方が変われば、女性社員のみならず、全社員の在り方・成果も変わってくるはずです。

女性活躍推進の取り組み くるみん認定とは

女性活躍推進の取り組み くるみん認定とは

女性活躍推進の取組

くるみん認定とは?

くるみん認定

くるみん認定とは、仕事と子育ての両立支援に取り組んでいる企業を認定する制度です。次世代育成支援対策推進法という法律に基づいて厚生労働省が実施しています。
さらに、2015年4月1日より、くるみん認定を既に受け、相当程度両立支援の制度の導入や利用が進み、高い水準の取組を行っている企業を評価しつつ、継続的な取組を促進するため、新たにプラチナくるみん認定がはじまりました。 プラチナくるみん認定を受けた企業は、プラチナくるみんマークを広告等に表示し、高い水準の取組を行っている企業であることをアピールできます。

次世代育成支援対策推進法とは

日本の急激な少子化の進行に対応して、次代の社会を担う子どもたちの健全な育成を支援するため、企業・国・地方公共団体は各種行動計画を策定することとされています。国を挙げて環境整備に努めるために2005年に施行され、10年間を集中的・計画的取組期間とした時限立法となっています。後に法改正によって2025年3月末まで有効期限が延長されています。

くるみん認定を受けるには?

くるみん認定を受けるには、以下のような対応を行う必要があります。

  • 次世代育成支援対策推進法に基づいて一般事業主行動計画を策定する
  • 都道府県労働局雇用環境・均等部に一般事業主行動計画策定・変更届を届け出る
  • 自社ホームページや厚生労働省運営のWebサイト両立支援のひろばなどで一般に公表する
  • 従業員に周知徹底する
  • 一般事業主行動計画に定めた目標を達成する
  • くるみん認定申請書等を都道府県労働局雇用環境・均等部に提出する

行動計画指針には、企業における仕事と家庭(育児)の両立支援のさらなる取り組みを促進するために、パートなど非正規雇用の労働者も取り組みの対象であること、男性の育児休業取得を促進すること、所定外労働の削減に取り組むこと、年次有給休暇の取得を促進することなど、働き方の見直しにつながる取り組みを進めていくことが重要であると示されています。

プラチナくるみん認定とは

プラチナくるみん

プラチナくるみん認定は、くるみん認定を受けた企業のうち、さらにレベルの高い取り組みを行って一定の要件を満たした優良企業に与えられるものとなります。
プラチナくるみん認定申請書に必要書類を添えて、都道府県労働局雇用環境・均等部に申請すると、認定が受けられます。 育児休業を取得している社員の割合や人数の目標数値が高く、時間外労働の月平均などを公表しなければならないなど、とても高いハードルが課せられています。プラチナくるみん認定を受けるためには、事前にくるみんマークの認定を受けていなければなりません。

プラチナくるみん認定を受けるには、以下のような対応を行う必要があります。

  • 育児休業を取得した男性社員が13%以上いること。もしくは、育児休業かそれに類似する企業独自の休暇制度を利用した男性社員が30%以上いて、かつ育児休業を取得した男性社員が1人以上いること
  • 所定外労働時間の削減、有給休暇の取得促進、多様な労働条件の整備のすべてについて対策を行い、時間外労働と有給休暇については数値目標を定めてそれを達成すること
  • 出産した女性社員のうち90%が、出産から1年後に在籍していること(育児休業中でも可)。もしくは、出産した女性社員か出産予定で退職した女性社員のうち55%が、出産から1年後に在籍していること(育児休業中でも可)
  • 育児休業を取得したり、子育て中の女性社員がこれから先も仕事を続け、活躍し続けられるよう、スキル向上やキャリア形成のための取り組みを計画し、それを実施していること
  • フルタイム労働者の時間外労働・休日労働の月平均時間を公表すること
  • 時間外労働が月平均60時間以上になっている社員の数を公表すること

くるみん認定のメリット

企業のブランドイメージが向上する

くるみん認定を受けると、認定マークが企業の広報活動や企業の製品・広告・インターネットなどによる広報に掲載できるようになり、就職や転職を希望する人に広くアピールすることが可能になります。
子育て支援を行っている企業というイメージを与えやすくなり、企業イメージの向上に役立ちます。

税制優遇措置が受けられる

認定企業になると、事業における建物などの取得や事業所の増改築で減価償却が優遇制度として受けられるくるみん税制などの税制優遇措置が適用されます。
青色申告書を提出し一定期間内にくるみん認定を初めて受けると、受けた企業では、認定を受けた1年間の事業年度に新築・増改築した建物などは以下のの割増償却率で割増償却することができます。

まとめ

くるみん認定を受けると企業イメージの向上につなげる施策を打てたり、税制の優遇を受けられるなどのメリットがあります。基準は厳しくなっていますが、ぜひくるみんマークの取得を目指してはいかがでしょうか?

女性活躍推進の取り組み えるぼし認定・プラチナえるぼし認定とは

女性活躍推進の取り組み えるぼし認定・プラチナえるぼし認定とは

女性活躍推進法とは?

女性活躍推進法の改正

2019年5月29日、女性活躍推進法等の一部を改正する法律が成立し、6月5日に公布されました。 その中でもえるぼし認定に更にもう一段上のプラチナえるぼしが追加されました。
改正内容は以下のとおりとなっております。

一般事業主行動計画の策定義務の対象拡大

 

一般事業主行動計画の策定・届出義務及び自社の女性活躍に関する情報公表の義務の対象が、常時雇用する労働者が301人以上から101人以上の事業主に拡大されます。

女性活躍に関する情報公表の強化

 

常時雇用する労働者が301人以上の事業主は、情報公表項目について、

      
  • 職業生活に関する機会の提供に関する実績
  •   
  • 職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績
  •  

上記の各区分から1項目以上公表する必要があります。

特例認定制度(プラチナえるぼし)の創設

 

女性の活躍推進に関する状況等が優良な起業の認定(えるぼし認定)よりも水準の高いプラチナえるぼし認定を創設。

えるぼし認定とは

えるぼし認定とは行動計画の策定・届出を行った企業のうち、女性の活躍に関する取組の実施状況が優良な企業については、申請により、厚生労働大臣の認定を受けることができる制度となっております。
認定を受けた企業は、厚生労働大臣が定める認定マークを商品などに付することができます。この認定マークを活用することにより、女性の活躍が進んでいる企業として、企業イメージの向上や優秀な人材の確保につながるなどといったメリットがあります。

えるぼし認定の基準

採用されてから仕事をしていく上で、女性が能力を発揮しやすい職場環境であるかという観点から、以下5つの評価項目が定められています。なお、認定要件は年度ごとに変更されます。申請を検討されている方は厚生労働省の女性活躍推進法特集ページを事前に確認してください

  • 採用
  • 継続就業
  • 労働時間等の働き方
  • 管理職比率
  • 多様なキャリアコース

えるぼしの認定の段階

認定段階は3段階あり、上記5つの評価項目のうち、基準を満たしている項目数に応じて取得できる段階が決まります。

えるぼし認定
  • 5つ全ての基準を満たす :3段階目(最高位)
  • 3~4つの基準を満たす   :2段階目
  • 1~2つの基準を満たす   :1段階目

認定実績として現在約579社が「えるぼし」認定を受けています。

認定の取り消し

えるぼしマークは、女性活躍推進法に基づく認定制度です。そのため、女性活躍推進法に定められたものに違反した場合や、基準に満たなくなってしまった場合にはえるぼし認定が取り消される場合があります。

下記3点が取り消しの対象になる項目です。一度認定されたとしても取消になってしまう場合があります。

  • 認定一般事業主が女性活躍推進法第9条に規定する基準に適合しなくなったと認めるとき
  • 女性活躍推進法又は女性活躍推進法に基づく命令に違反したとき
  • 不正の手段により認定を受けたとき

プラチナえるぼしとは

プラチナえるぼし

プラチナえるぼしは、えるぼし認定3段階目の上の特例認定となり、継続就業、管理職比率の基準が厳しくなっており、5つの評価項目以外にも以下の項目が追加されます。

  • 策定した一般事業主行動計画に基づく取組を実施し、当該行動計画に定めた目標を達成したこと。
  • 男女雇用機会均等推進者、職業家庭両立推進者を選任していること。
  • プラチナえるぼしの管理職比率、労働時間等の5つの基準の全てを満たしていること
  • 女性活躍推進法に基づく社内制度の概要を除く情報公表項目のうち、8項目以上を女性の活躍推進企業データベースで公表していること。

このように具体性、実践性、目標の達成が求められており、プラチナえるぼしでは基準をクリアしているだけではなく、事業として実施していけるかどうかを求められるようになっています。

えるぼし認定のメリット

この認定マークを活用することにより、女性の活躍が進んでいる企業として、企業イメージの向上や優秀な人材の確保につながるなどといったメリットがあり、例えば認定を受けた企業は、厚生労働大臣が定める認定マークえるぼしマーク又はプラチナえるぼしマークを商品 などにつけることができます。また、公共調達や低利融資面が得られやすくなるなど、企業運営にとっても魅力的な要素が揃っています。
プラチナえるぼし認定企業は、一般事業主行動計画の策定・届出が免除されます。

まとめ

えるぼし認定の取得は、公共の入札が有利になる、優秀な従業員の確保ができるなど企業活動の促進に役立つほか、企業の社会的責任を果たしている証明になるため、取得して損のない制度となっております。認定企業数は創設以来増加しており、今後もさらに増えていくでしょう。

女性活躍の日本と世界の現状

女性活躍の日本と世界の現状

女性活躍の日本と世界の現状

政府が「2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%まで押し上げる」と目標を掲げたことで、女性活躍推進法が施行されました。 これにより女性管理職の増加を目指す動きが活性化していますが、思うように推進できていない企業が少なくないのが現実です。

女性活躍が推進されている背景

少子化による労働力不足

女性の活用が急がれる背景には、少子高齢化に伴う労働力不足問題があります。
労働人口の減少に伴う全体的な生産性の低下により、 従来通りのサービス、業務が出来なくなってしまう可能性があり、50年後には現在の半分にまで労働人口が落ち込むと言われています。この状況を打開するために、政府は成長戦略の一環として女性活躍推進法を制定し女性の活躍を推進しました。

再就職できない女性が多い

出産や育児を理由に一度仕事を離れていた女性が再就職を望んでいるにも関わらず、思うように復帰できない状況にあること多く、こうした女性の社会進出を妨げる要因を取り除くことで、労働力不足を補うことができると考えられています。

海外との比較

2016年に内閣府が発表した「管理的職業従事者に占める女性の割合(国際比較)」は下記となっており、日本は11位でわずか12.5%となっています。2020年に社会のあらゆる分野で指導的地位に女性が占める割合を30%程度にすると政府が目標を掲げていましたが、現実的に実現は不可能な状態です。

  1. フィリピン (47.3%)
  2. アメリカ (43.4%)
  3. スウェーデン (39.5%)
  4. オーストラリア (36.2%)
  5. ノルウェー (36.0%)
  6. イギリス (35.4%)
  7. シンガポール (33.9%)
  8. フランス (31.7%)
  9. ドイツ (29.0%)
  10. マレーシア (22.2%)
  11. 日本 (12.5%)

上位に入っている国にヨーロッパが多いですがそれには下記のような特徴があります。

キャリア意識の違い

ヨーロッパにおいて女性役員比率が高いのが目立ちますが、ヨーロッパの女性の社会進出が進んでいる理由の1つとして、まずキャリア意識が高いことが挙げられます。
ヨーロッパの人々は、幼少期からキャリア教育を受けて育ちます。そして、大学進学のときには将来のキャリアを見据えて専攻を選び、勉学に励みます。学生時代には長期インターンシップに参加します。また、日本のように定年まで1つの職に就き続けることは珍しく、キャリアアップのための転職が当たり前に行われています。

企業の採用基準の違い

ヨーロッパは主に実力主義社会のため、企業の採用では、日本のように新卒採用や既卒採用という枠組みがなく、即戦力であることが求められます。そのため、採用基準は、求職者の志望動機や自己PRよりも学歴や職歴が重視されます。採用条件に性別や年齢の制限もありません。
雇用形態は、日本と同様に正社員と非正規社員があります。賃金については、法律により雇用形態での差別を禁じられていることから同一労働同一賃金制が導入されており、女性だから、子育て中だからといった理由で待遇を差別されることはありません。

日本の女性活躍の課題

女性の活躍推進の目的が明確でない

女性の活躍を望んでいながらも、女性の活躍を推進する目的や意義を明確にしていない企業は少なくありません。 推進力を高めるには具体的な数値目標を設定をするなど、会社への影響や目標とすべき姿をしっかりと思い描くことが大切です。

女性を育成する風土がない

女性自身の仕事に対する意識が低いことや、良質な仕事にアサインしてもらえていないことから、中堅になる前に退職するケースが多いです。 この背景には、「女性は結婚や出産を機に家庭に入るべきだ」という考え方や、家庭を持った女性に対して重要な仕事を任せない企業の慣習などがあります。
女性の活躍を推進するにためには、まず女性を育成する環境を整えることが重要となります。

まとめ

日本の女性の管理職比率は、国際データと比較しても決して高い水準ではありません。日本はまだまだ女性が社会進出するうえで困難が多い社会と言えるでしょう。一方で、性別を問わず優秀な人材が活躍できる環境作りに積極的に取り組む企業もあります。 働きたい女性のニーズに応えることは、人手不足に悩む国や企業にとってもメリットが大きいため、今後も女性活躍推進に向けて、国としてさらなる制度拡充と取り組みの強化が進んでいくことが期待されます。

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女性活躍推進法とは?背景と期待できるメリット

女性活躍推進法とは?背景と期待できるメリット

女性活躍推進法とは、女性が働きやすい環境づくりを企業に求める法律で、正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」です。女性活躍推進に向けて短期間で集中的な取り組みを進める必要があることから10年間の期限がある時限立法として2016年4月に施行されました。2019年5月にはその一部を改正されました。

女性活躍推進法とは

2016年4月1日、政府は女性活躍を実現するために女性活躍推進法を定めました。 「女性が仕事で活躍する」といった内容を事業主に対して義務化したことです。 女性の活躍推進に向けた数値目標を含む行動計画の策定及び公表、女性の職業選択に役立つ情報の公表が、国や地方公共団体、民間企業等の事業主に義務付けられました。

女性活躍推進法の基本原則

同法では以下の基本原則を元に、女性活躍の推進が図られています。

  • 女性の採用、昇進等の機会の積極的な提供及び活用や、性別で固定的役割分担等を行う職場慣行の是正が実施されること
  • 「職業生活と家庭生活との両立」を実現するための環境整備により、それが円滑かつ継続的に実施されること
  • 上記の両立に関し、本人の意思が尊重されること

こうした基本原則の実現のために、同法は国、地方自治体と企業等に以下のような取組内容を定めています。

  • 女性の活躍推進の基本方針、企業等が作成する「行動計画」の指針の策定
  • 企業の優れた取組への認定、発注先としての優遇扱い
  • 女性の職業選択に資する情報の公開、啓発活動、職業紹介、訓練、起業支援等による支援
  • 国の機関に勤務する女性のための行動計画の作成及び実施状況の公表
  • 管轄地域での女性活躍推進の計画作成
  • 働いている女性等からの相談対応、関係機関の紹介、情報提供、助言
  • 国が女性活躍推進で優良と認定した企業への発注先としての優遇扱い
  • 自治体の機関で勤務する女性のための行動計画の作成及び実施状況の公表

企業等の場合(300人以下の企業は努力義務)

  • 女性採用比率、勤続年数男女差、労働時間、女性管理職比率等、企業の女性活躍についての状況把握、課題分析
  • 状況把握及び分析に基づき、課題の解決ができる適切な数値目標と取組内容を含めた行動計画の策定、届出、周知、公表
  • 企業の女性活躍についての情報公開

厚生労働省によると、2017年12月末時点で行動計画策定等の義務のある一般事業主の99.7% にあたる16,071社が行動計画を届けています。努力義務とされる300人以下の一般事業主での策定・届出数は3,866社です。

女性活躍推進法の導入の背景

女性の活躍推進を求める背景には、少子高齢化に伴い労働者不足の加速化が予想され、女性の潜在的能力の活用が求められてきたことや、産業構造の変化により多様な人材を活用していこうという機運が高まってきたことなどが挙げられます。 また、女性の就労面の改善が不十分であったことも女性活躍推進法の導入の背景にあるとみられています。 女性の社会進出を巡っては、1985年の男女雇用機会均等法以来、育児休業法、育児介護休業法、次世代育成支援対策推進法が制定され、雇用面での男女の均等化への支援や、仕事と家庭の両立を図るための支援が実施されてきました。その結果、女性の就業者数は上昇し、特に2012年からの5年間では約7.2%増と、大きく改善しています。 しかし、管理職に占める女性の割合は11.2%に留まります。これは、2003年に男女共同参画推進本部が目標値としていた30%程度に遠く及びません。女性の就業は徐々に進んでいるものの、職務は補助的な役割に留まっており、キャリア形成では不十分な状況でした。

ここから言えることは、「雇用」や「仕事と家庭の両立」など、女性の就業を支えるための個別の施策だけでは、女性のキャリア全体を支援することにはならず、本当の意味で女性の社会進出を促すことにはならないということです。そこで、「雇用面での均等支援」と「仕事と家庭の両立支援」を包含した施策が求められるようになりました。

期待される効果

女性活躍促進法は、女性が自身の意志によってキャリアを構築し、スキルを十分に発揮することが可能となる社会づくりを目指す法律です。その実現のため、主に以下の3つの方針を基本原則としています。

  • 採用や昇進が平等に行われ、職場環境においても平等が配慮されるべきこと
  • 仕事と家庭が両立できる環境をつくること
  • 女性本人が、仕事と家庭の両立に関する意思決定をできること

仕事と家庭を両立

会社での長時間労働を前提とした働き方では、女性に仕事か家庭生活かの二者択一を迫ることになります。 女性に仕事と家庭を両立した上で十分に能力を発揮してもらうには、長時間労働を改める、多様な働き方を認めるなど、抜本的な労働環境の見直しが必要になります。
女性はもちろん男性も含めて、育児や介護などで時間に制約のある労働者が増えてきている現状に合わせて、働き方改革を行い、誰もが働きやすい職場を実現することが重要となります。

男性が家庭生活に参画する事

少子高齢化や共働き世帯の増加によって、男性が家事・育児・介護などの家庭生活に参加する場面は着実に増えてきています。男性が積極的に家庭生活を支えれば、女性の負担も減り、職場での活躍も進むでしょう。
そのため女性だけでなく、男性も家庭生活に気兼ねなく参画することを強力に推進し、仕事と家庭生活を両立させることが当たり前となるような社会や、働きやすい職場環境を整えていくことが求められます。

女性のキャリアアップを邪魔しない

出産を終えて職場に復帰したとしても、育児のために残業ができなかったり早退や休むことが多かったりするため、簡単な仕事しか与えられなくなり、出世コースとは異なるコースに乗ってしまうことが多くなります。
このような状況を改善するには、仕事と家庭を両立できる支援制度や、家庭生活に参画しながらキャリアを形成していけるような仕組みの構築が重要となります。

女性活用のメリット

企業文化の改革

女性活躍の推進は企業文化の改革にもつながります。日本企業の多くは、制度面でも風土面でも男性中心の状態が続いていましたが、近年は女性の社会進出に伴い、大企業でも変化が見られます。「働きやすい職場」を実現するためにまず必要なのは制度改革ですが、これを浸透させ、実用化するためには全ての従業員の意識改革が必要です。 その過程で、時代に見合った新しい風土が生まれていきます。 例えば、女性の方が上下関係を超えたコミュニケーションが得意なため、縦割り組織の是正や会社全体のコミュニケーションの活性化につながる、などです。 日本では経済産業省と東京証券取引所が共同で、女性活躍推進に優れた上場企業を「なでしこ銘柄」として選定し、「中長期の企業価値向上」を重視する投資家に紹介しています。選定された企業では株価の上昇だけでなく、企業イメージの向上も期待できるでしょう。「なでしこ銘柄」選定企業は経済産業省のHPで確認できます。 女性活躍推進は政府の主導で開始されたものですが、企業にとってのメリットは明らかです。ぜひ積極的に取り組み、企業としての成長につなげましょう。

女性の活躍の課題とデメリット

女性の活躍推進するにあたっての取り組みが多く進む中同時に課題も多く出てきております。

社員の意識改革が進まない

「女性活躍」というキーワードだけが認知され、女性が働きやすい環境が整うことによる効果や必要性がまだ十分理解されていない状況です。 特に、施策を運用したり業務のマネジメントを行う管理職層に女性活躍推進の必要性を浸透させることは必要不可欠です。 女性が働きやすい環境を整備することで、組織全体にどのようなメリットがあるのかをしっかりと周知していくことが大切です。

育児・介護の両立がうまくいかない

仕事と育児の両立のハードルも高く、両立経験者のうち、仕事をやめようと思ったことがある人は半数以上で理由は「時間的な余裕がなく、子どもに向き合えない」が最も多く。 共働きの夫の1日の家事・育児時間は46分で妻の6分の1以下で負担は女性に偏っています。 上司や職場の理解・夫の理解と協力が進んでおらず、職場・家庭双方での男性の意識を変える必要があります。

まとめ

女性活躍を推進するためには様々な準備が必要となりますが、その分、社員・企業双方に大きなメリットがあります。
女性活躍推進法の定める義務と向き合い、まずは自社の現状や現場のニーズをしっかりと把握することから始めましょう。社員にもさまざまなメリットを周知させ、長期的に計画を行ってきます。職場における男女格差をなくし、企業環境全体を良くする足がかりになります。

女性活用の事例

女性活用の事例

女性が活躍しやすい会社

女性の働きにくさを考えた時、大きな問題になるのが、妊娠~出産~育児の時期です。子どもができるまでは、時間的に男性と働く条件に差がないことが多いでしょう。 しかし、出産を期にどうしても時間的な制約ができてしまいます。

しかし、そのような時間的制約を持たざるを得ない女性社員が自身の能力を最大限発揮できる職場環境にしなければなりません。 これまで、一部の大企業では、福利厚生として子育て支援制度が充実しているケースがありました。 しかし今後は、301名以上の従業員がいる企業ならば必ず (300名以下の規模の企業でも努力目標として) 女性の活躍推進に具体的に取り組むことが求められています。 これは法で決められた企業の義務ではありますが、女性の活躍を促すことで、全体的に生産性向上を促すものとなることも期待されているためです。 社員間で業務を共有したり引き継いだりしやすい仕組み、在宅勤務など場所を問わずに働きやすい環境作りなどが、これからの企業には求められています。

女性活躍推進に取り組む企業

セブン&アイ・ホールディングスの事例

2006年に経営トップが女性役員比率を20〜25%にすると発表、2020年までに女性管理職比率30%を目指しております。 また、2012年に「ダイバーシティ推進プロジェクト」を設置。同グループの店舗に来店する顧客の多くが女性であることから、女性の視点や感覚を活かした商品・サービスの開発や売場づくりを中心に行い、女性の活躍推進に焦点を当てました。取り組みのステップとして、2012年度に推進体制を構築、2013年には、女性自身の意識改革のための取り組みや制度運用の見直しを実施、2014年度には管理職の意識改革に取り組みました。また、2015年度からは仕事と介護の両立支援に向けた取り組みも進め、現在は2020年を期限としたダイバーシティ推進目標実現のために取り組んでいます。

全日空の事例

2014年2月に「ポジティブ・アクション宣言」を行い、女性管理職などの数値目標を社内外に公表しました。
ANAは、社員数の半数以上を女性が占めることから、女性がその多様な視点や感性、価値観を活かしてより一層活躍し続けることを経営課題とし、女性の役員数や管理職比率などの数値目標を設定しました。 具体的には、

  • 女性役員2名以上登用
  • 女性管理職比率15%
  • 総合事務職・客室乗務職掌における女性管理職比率30%を設定

また、ダイバーシティ推進にも積極的に取り組み、「ダイバーシティ&インクルージョン推進室」を設置。 「ダイバーシティ&インクルージョン推進室」では、個々のライフスタイルや価値観を大切にしながら、ワークとライフの相乗効果を生み出せる「ワーク・ライフ・バランス」を推進しています。

大成建設株式会社の事例

大成建設株式会社のでは、6種類の取組を行い、総合的に女性が活躍できるような職場づくりを心がけました。 特に男性が多いと言われている建設業界では画期的な取り組みとなり、徐々に社員の意識改革や制度の活用の幅が広がっています。

  • ホームページなどの求人誌で女性社員を紹介
  • 女子トイレや更衣室の整備、女性向けの安全防具の導入、短時間勤務や女性労働者の海外派遣の導入
  • 棋院無知変更制度やキャリア選択制度、両立支援セミナーの実施で継続就業を支援
  • 女性の管理職数3倍増の目標を掲げ、評価制度や育成研修の実施
  • ジョブリターン制度の導入
  • 職場風土への改革の為の意識調査や個別ヒアリングの実施・ハンドブックの配布

女性活躍に成功している企業の事例から見えてきた共通のポイント

女性社員の状況や想いを正しく理解する

女性活躍推進に成功している企業では、女性社員の状況や想いを正しく理解すること、ニーズを汲み取ることに注力しています。 逆に、女性活躍推進がうまくいっていない企業では育児中の女性社員に配慮するあまり、責任のある仕事は時間制約のない社員が行う体制になっている。など女性社員への配慮の仕方が違っている、配慮が行き過ぎているというケースが多くみられます。 実際に女性社員の話をしっかりとヒアリングすることで、本当に配慮してほしいポイントを理解することが重要です。

働き方の選択肢を増やす

働く時間や場所などのに対して選択肢を用意し状況に応じて選べるようにすることが重要です。 女性社員の働き方の希望はライフイベントや本人の志向により様々です。 育児中であっても、「時短勤務で残業をせずに、子どもとの時間を優先したい人」、「さらなる成長を目指し時間をうまくやりくりして管理職で働き続けたい人」など。 選択肢がある分、働き続ける選択をする女性が増えます。

育児中の女性だけではなく全社員を対象にする

企業の女性活躍で見落とされがちなポイントとして、育児中の女性だけではなく全社員を対象にするという点があげられます。 制度を作る際には、育児中の女性だけではなく、介護中や副業をしている男性なども含めた全社員を対象とした制度にするべきです。 育児中の女性だけが利用できる制度にすることで男女格差につながり、男性は長時間働くことが当たり前の風土ができ、夜の時間帯の会議が多くなるなど結果的に女性活躍を阻害してしまう結果になるケースも発生しています。 育児中の女性だけが利用できる制度では、フルタイム勤務の女性や男性からの不満につながりかねません。 皆が平等に利用できる制度にしたところ、会社全体の離職率が下がったという企業もあり全社員を対象にすることでのプラスの面が大きいようです。

女性活躍というトレンドに乗っかるだけではなく、男女全社員の働き方、会社の仕組み自体を変革していかなければ根本的な解決にはなりません。 企業の文化や働き方が変われば、女性社員のみならず、全社員の在り方・成果も変わってくるはずです。