2019/03/05

有休義務化で何が変わる?意外と知らない有給休暇のルール

有休義務化で何が変わる?
意外と知らない有給休暇のルール

有休義務化

有給取得義務化

働き方改革関連法の成立により、2019年4月から年次有給休暇の5日以上の取得が義務化されることになりました。中小企業も例外ではなく、またパート・アルバイト、非正規雇用にも適用されます。

高プロにばかり注目が集まっていましたが、有給義務化の方が企業や労働者にとっては重要度が極めて高い法律ではないでしょうか。

有給取得義務化が行われる背景

もともと労働基準法では、一定の要件を満たす労働者に対して毎年一定日数の年次有給休暇を与えることが定められています。しかし、職場への配慮やためらい、忙しい、取らせてもらえないからといった理由から取得する人が少ないという現状がありました。

こうした状況を改善するために定められたのが、今回の有給休暇の取得義務化です。有給休暇の取得を会社側から働きかけることで、労働者が有給休暇を取得しやすいようになるのがねらいです。

有休取得の記録義務化

労働者ごとに有給の付与日、取得日、基準日の記録を作成し、3年間保存しなければなりません。

取得させなかった場合の罰則

最低年5日の年休を取得させなかった場合、労働者一人当たりにつき最大30万円の罰金に処せられます。人単位でカウントするため、事業所の平均取得日数が5日を超えても、1名でも5日未満の労働者がいれば法律違反となります。

企業が時季を指定しなかった場合はもちろん、時季を指定したにもかかわらず労働者が出勤した場合も処罰される可能性もあります。

有休取得の目的を聞くのはNG

有給休暇を取得する際、申請用紙に利用目的を記入するという会社があります。また、忙しい部署では、上司が有休の目的を聞いてくる場合もあります。

しかし、有給休暇を何に使うかについては誰もが干渉するべきことではありませんし、利用目的を聞いたうえでその取得を承認するようなやり方は法律違反です。これについては最高裁判所の判例でも明確に示されています。

悪質な不利益変更に要注意

休日を有休扱いに?

しかし悪質なブラック企業などでは罰則を逃れるために就業規則を変更して有給義務化をクリアしようとしている場所も多く出てきており、今後トラブルの増加が懸念されます。

これまでは「休日」としていた日や、夏季休暇や年末・年始休暇など、これまでも労働契約上「休暇」としていた日を就業規則を変更して取りやめその日を有休として指定しまう方法です。

これを就業規則を変更して、休日のうち5日を労働日に変え、その日を有休として指定することにより理屈上はクリアになります。
しかし、労働者の休みは増えず、休める権利である有休5日分がなくなります。

これは労働契約の不利益変更になりますので、たとえ就業規則の変更によるものだとしても、労働契約法によって、こうした変更をする必要性や合理性が求められます。

ブラック企業

就業規則は合理的な理由がないと変えられない

 

そもそも、この法律で5日の有休を取らせる事を義務付けたのは、有給休暇の取得を一部義務化することで労働者の休みを増やすためです。
にもかかわらず、従来からの休日や休暇とすり替えてしまうのは法の潜脱行為で、変更に合理的な理由がなく、無効となる可能性が高いです。

また、このような変更をしようとしている企業は、もしこの変更が無効となれば、有休を取得させていなかったことになり、刑事罰を受ける可能性があります。刑事罰は労働者1名につき1罪が成立するため、ケースによってはかなり重めの罰になります。

参考記事

形だけ休みにされる危険性

今でもたまに聞く話ではありますが、有休を取ったことにして実際は仕事をしていたという事態が横行するということが懸念されています。しかし有休取得の記録義務化がされてます為立ち入り調査で記録と照らし合わせて不自然だった場合発覚する可能性が高いです。

仕事が忙しくて休めそうにない

人手不足の業界や中小企業では有休消化に関し否定的な意見が多く、業務の混乱や停滞が懸念されます。かと言って形だけ休んで実際は仕事をしていた場合も罰則の対象になります。

スケジュールを立てて有休を取得

労働基準法で定められている「年次有給休暇の計画的付与制度」を活用するのもいいかもしれません。例えば、企業が決定した日に企業や事業所全体で一斉休みにする事や、班やグループを形成し、グループごとに休みを交代制で休む等予め有給を使う日を5日指定する事により、業務を円滑に進めつつ休めるやり方です。有給休暇の取得日があらかじめ割り振られるため、従業員も気兼ねなく休むことが出来ます。

休んでも弊害が出ない体制

有給休暇の取得をためらう人の多くは「他の従業員に迷惑がかかるから」「後で忙しくなるから」と回答しています。 このようなことを防ぐには、誰かが休んだとしても問題なく仕事が回るように、「休む人がいる前提」の体制づくりが重要になります。

普段から各自の仕事内容・進捗状況の共有を行い、業務のマニュアル化などをしておき、主となる担当者が休んだとしてもある程度は業務の対応が可能にする。一つのタスクに必ず2人以上の担当者を割り振る。などしておけば、お互いがカバーでき休暇も取りやすい状況が作れるでしょう。

システム化によりスムーズな体制づくり

全従業員でスケジュールや業務の手順、状況を共有することによって、休んでも弊害が出ない体制を実現することが出来ます。業務書類も一括管理することにより管理職の有休義務化対応も実現することが出来ます。

参考

まとめ

有給義務化は、4月から施行となります。 また、法改正がなされたからといった理由だけでなく、従業員がより働きやすい環境を作るといった点でも、有給休暇の取得率を上げていくことはとても重要な課題となります。

またそれに合わせ、誰かが休んでも弊害が出ない職場環境の構築を急ぐ必要があります。