2019/09/09

2020年からの働き方改革 同一労働同一賃金

2020年からの働き方改革 同一労働同一賃金

2020年4月から同一労働同一賃金が徹底化

正規雇用者と非正規雇用者の不合理な待遇差をなくす同一労働同一賃金が、大企業では2020年4月、中小企業では2021年4月から適用されます。
法改正後は、不合理に当たる待遇差の明確化や労働者の待遇に対する説明義務の強化などが徹底されるようになります。

同一労働同一賃金とは

同一労働同一賃金とは、同じ仕事に就いている限り、正規雇用労働者であるか、非正規雇用労働者であるかを問わず、同一の賃金を支給するという考え方です。
様々な事情により、非正規雇用を選択する労働者が増加している中、政府はいわゆる働き方改革のひとつとして、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を解消し、多様な働き方を選択できる社会にすることを目指しています。

今回の法改正について

同一労働同一賃金の徹底化が盛り込まれた働き方改革関連法は、2020年4月1日から施行されます。中小企業への適用は猶予期間が入り、2021年4月1日となります。
今回の法改正では、同じ企業内において、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間などで雇用形態による不合理な待遇差を設けることが禁止されます。具体的に何が不合理な待遇差に当たるのかについては、指針を示したガイドラインが策定されており、改正法の施行と同時に適用される予定です。

均等待遇規定

同じ働き方をしている場合に、賃金をはじめとして労働条件における処遇を同じにすることです。同じ働き方であるかどうかは、職務内容と職務内容・配置の変更の範囲によって判断されます。現在の仕事だけではなく、転勤や昇進などの人事異動が見込まれるかどうかでも判断される為注意が必要です。職務内容には、業務内容と有している責任の両方が含まれます。

均衡待遇規定

働き方が違うのであればその違いに応じてバランスを考えた待遇をしなければならないという規定で、したがって不合理な待遇差を禁止しています。このバランスは職務内容、職務内容・配置の変更の範囲、その他の事情の3点を考慮して決定されます。

派遣労働者の待遇

派遣労働者の待遇についても、派遣先の労働者との均等・均衡待遇、一定の要件を満たす労使協定による待遇の2つの方式のいずれかを確保することを派遣元企業の義務とする規定が設けられています。
併せて派遣先の企業に対しても、派遣労働者の待遇に関して派遣元企業への情報提供をしなければいけないというルールが設定されます。

労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

非正規雇用労働者が自身の待遇について説明を求める権利が、法的に明確化されます。これまで、パートや派遣の労働者に関しては、雇い入れ時に待遇内容の説明を、さらに要求があった場合には待遇決定に際しての考慮事項についての説明を行うことが、企業側の義務として定められていました。
しかしながら、有期契約の労働者についてはその限りでなく、また、労働者の雇用形態にかかわらず、正社員との待遇差についての説明義務に関しては特に規定がありませんでした。
今回の法改正によって、これらの事柄についての説明を求める労働者側の権利と、それに対して事業主が答えなければいけないという義務が明確化します。

行政による事業主への助言・指導や行政ADRの規定整備

労使紛争について行政がどう関わるかの規定が改正されます。都道府県労働局において、無料かつ公開で労働者と使用者の間の紛争解決手続きを行うようになります。

企業の対応

正規労働者・非正規労働者間の賃金の違いを、多くの企業が正規雇用労働者と非正規雇用労働者とでは将来の役割期待が異なるため、賃金の決定基準・ルールが異なるという主観的・抽象的な説明に終始しがちですが、これだけでは同一労働・同一賃金の説明としては不十分です。
職務内容、配置の変更範囲、その他の客観的・具体的な実態に照らして合理的に説明できるものでなければなりません。規程の整備や職務内容の見直し、社内の意識醸成等をしながら最新の情報をキャッチアップしていく必要があります。

ガイドラインなどを読み込み、具体的な事例を通して何が違法で合法となるのかを把握しておきましょう。

罰則は

罰則は設けられていません。
ただし、訴訟に発展し、違法性が裁判で認められると、差分の賃金や手当を払わなければならないこともあります。過去に企業側に差額の支払いが命じられています。

同一労働・同一賃金による各種手当の均等・均衡待遇の確保

賞与

賞与とは定期または臨時的に一時金として支払われるもので、会社が規程等で自由に定める事ができます。しかし、会社の業績等への貢献に対して支給しようとする場合、正規雇用労働者と同一労働・貢献である非正規雇用労働者には、同一の支給をしなければならないとされています。ガイドライン案によると、業績や目標数値に対して、正規雇用労働者に対してのみ未達の場合に処遇上のペナルティを課しているような場合、その見合いの範囲内であれば同一賃金の考え方は当てはまらないとされています。また、賞与の趣旨を職務内容や貢献等に関わらず正規雇用労働者全員に支給している場合、非正規雇用労働者に対しても同一賃金の考え方を持たなければなりません。

役職手当

役職の内容、責任範囲・程度に対して支給するのが一般的ですが、役職の内容、責任の範囲・程度が同一の場合、同一の役職手当を支給しなければなりません。

その他の手当

業務の危険度や作業環境に応じて支給される特殊作業手当や、精皆勤手当、時間外(深夜)割増率、特定の地域で働く補償として支給する地域手当なども正規と非正規労働者の間で同一労働・同一賃金の考え方があてはまります。ただし、それぞれの手当の性格や趣旨に照らして、同一として考えられるのかはしっかり見定める必要があります。各種手当について定義を曖昧にしておくと、合理的な説明に欠けてしまう恐れがありますので、定義を明確にしておく必要があります。

まとめ

働き方改革関連法の成立によって、同一労働同一賃金の実施がより厳しく企業に求められます。早めに準備して労働者の合意も取り付けた上で、適切な制度改正と対応を行いましょう。