2018/11/12

働き方改革関連法案対応すべきポイント

働き方改革関連法案に対応する5つの方法

働き方改革関連法案

2018年6月29日、参院本議会で「働き方改革関連法案」(正式名称:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案)が可決・成立しました。
同法案は、雇用対策法、労働基準法、労働時間等設定改善法、労働安全衛生法、じん肺法、パートタイム労働法(パート法)、労働契約法、労働者派遣法の労働法の改正を行う法律の通称となっております。
働き方改革の総合的かつ継続的な推進、長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現等、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保の3つを柱とし、2019年4月1日に施行される各法案に向けて対応が必要となります。


法律改正の内容

働き方改革関連法は、労働基準法、労働安全衛生法、労働契約法、雇用対策法などを含む8つの法律を一括して改正するもので、影響は広範にわたり、それぞれ対応する必要があります。
新たに罰則などを設けていたり、業務内容によっては届出が必要になるため対応する必要があります。

1.労働時間を月45時間未満、年360時間未満にする

一部職種を除き、時間外労働の上限が月45時間未満、年360時間未満となります。
罰則も存在し、上限を超えた場合雇用主には半年以下の懲役または、30万円以下の罰金が科されます。 労使協定を締結した場合にはこれを超えることが出来ますが、その場合、労働時間適正把握ガイドラインによって細かく規定されていて、

  • 月100時間未満
  • 年720時間未満
  • ただし、月45時間を上回る回数は年6回まで、連続する2カ月から6カ月平均で月80時間以内

となっていますので、基本は原則を超えないよう設定し、万が一に備え労使協定を結んだ上で、ガイドライン以下で設定を行うべきでしょう。

2.勤務間を8時間以上空ける

過重労働による健康被害予防のため、勤務の終業時間と開始時間の間を、一定時間空けて休息を確保する制度として、勤務間インターバル制度の普及促進がなされます。 先行して導入している企業は、8時間、8時間+通勤時間、10時間など、独自のガイドラインを設定して運用しています。
「仕事の疲れを翌日に残さない」というのは、個人や業種によっても異なりますので、自社の勤務をしっかりと鑑みた上で、インターバル時間を設定するのが良いでしょう。

3.年間5日以上の年次有給休暇を取得させる

この度の法改正で、年次有給休暇の取得日数が5日と義務付けられました。
取得しない場合、させ無い場合は罰則も存在する大変厳しい改正です。2019年の4月1日より施行されますので、勤務の記録と有給休暇取得日の設定を必ず行いましょう。
記録と集計の負担を減らせるよう、入力しやすく、集計しやすいシステムを導入すると良いでしょう。

4.産業医・産業保健機能の強化

企業が労働者の健康を適切に管理するため、事業者における労働者の健康確保対策の強化、産業医がより一層効果的な活動を行いやすい環境の整備することを求める制度。
「新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務につく労働者」および「特定高度専門業務・成果型労働制の対象労働者(高度プロフェッショナル労働者)」への医師の面接指導を行わなかった場合、罰則の対象となります。

5.労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者について、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明が義務化される。

上限が明確に

働き方改革関連法の成立により、時間外労働の時間上限値が明確になりました。
これまでのルールでは罰則がなかったことや、抜け道(特別条項)を使うことで無制限となっていましたが、
必ず制限が設けられるようになったので注意が必要です。
適正な労働時間の把握・管理、長時間労働をさせない業務体制を早急に整備する必要があります。

ただし、高度プロフェッショナル制度にみられるように特定の専門性の高い人に対しては、高い給与を与えることと定期的な産業医検診を受けることを前提に、時間外労働の上限が適用されない特殊なケースが残ります。

早い段階での対応を

各改正事項が施行される時期はそれぞれ異なるため、企業の労務管理担当者はそれらの時期に合わせて準備を進めなければならなりません。
中小企業の適用猶予はある程度設けられておりましたが2020〜2023年にかけて中小企業向けにも順次執行するため今のうちからでも対応を検討する必要があります。
しかし考え方によってはこれを機会に生産性を高めることや効率化により業績を改善するための見直すチャンスでもあります。
比較的有利な状況で法改正に対応できる可能性があります。

勤怠管理の効率化

今回の労働時間把握義務が、労働基準法ではなく、労働安全衛生法側に定められたことも、健康管理のための労働時間把握が重要であると立法者が考えていることが示唆されます。 サービス残業はもちろんのこと、過労死ラインを超えるような長時間労働に対する労基署の取り締まりも、実務上厳しくなってくると想定されますので、企業規模問わず労働時間把握義務への対応は必須です。
また、中小企業においては、紙のタイムカードを使っていたり、出勤日に押印をするだけの出勤簿を使っている会社も多く、労働状況の把握という面で実態との剥離が起きやすい、集計効率が悪いなどの問題があります。 システムを用いた勤怠管理システムの導入をすれば、記録された打刻に基づき、リアルタイムで労働時間や残業時間が集計され、管理者はその時点での状況把握をすることができます。 リアルタイムで労働時間が可視化されれば、改善を促しやすくなり労務管理の精度が向上します。