2019/09/05

固定残業代制とは

固定残業代制とは

残業時間にかかわらず一定の残業代

固定残業代制とは、企業が一定時間の残業を想定し、あらかじめ月給に残業代を固定で記載し、残業時間を計算せず固定分の残業代を支払うという制度です。一般的には「みなし残業」とも言われています。
一方、残業が想定する時間を超えてしまった場合は、別途残業代が支払われないといけません。

明示義務

職業安定法と指針の改正により、平成30年1月から、固定残業代制による求人を行う際の募集要項には、

  • 固定残業代の時間数及び金額
  • 固定残業代を除外した基本給の額
  • みなし残業時間を超えた残業に対して残業代を追加で支払うこと

などを明示することが義務付けられました。ハローワーク等に求人申込みをする場合だけでなく、自社HPなどで労働者を募集する場合なども明示が求められます。

固定残業代制の種類

事業所内労働

営業職などで一日中顧客回りなどをしている場合、労働時間を正確にすることができません。 この為固定残業代制を採用することができます。

裁量労働制

研究者やソフトの製作者など仕事の進み具合によっては激務になることもあるが、仕事がひと段落するとまとまった休みが取れるような仕事の場合に用いられる制度です。
このような業務はいちいち指示を受けて働くよりも、労働者の判断で仕事を進めたほうが合理的とされ、固定残業代制によって、働いた時間をみなすことが可能です。

しかし、裁量労働の場合、労働時間の配分は労働者に任せられているにもかかわらず、実際は会社が管理していて、「残業しても残業代は出ないのに、仕事が早く終わったりしても休めない」状況となってしまい、サービス残業の温床となっていると言われています。

固定残業代制の違法性は

労働基準法に則った就業規則なら違法ではない

たまに聞く裁量労働でも事業所外労働でもないのに、企業がみ固定残業代制を採用しているケース、これは違法なのでしょうか。
労働基準法は労働環境を守る最低限の法律で、労働基準法に定められた内容を満たしているのならば、その企業独自で就業規則を決めることは可能で、必ずしも違法とはいえません。 定額の残業代が労働基準法で定められた割増賃金以上の額であれば、問題ないという裁判の判例もあります。

残業代が定額の残業手当を上回る場合は請求の対象

しかし、みなし残業制度として定額の残業代が支払われていても、実際に行われた残業が多く、残業代が定額の残業手当を上回る場合に、上回った部分については、企業は別途残業代を支払わなくてはならず、実際に行われた残業が少なくても、定額の残業代は支払わなくてはなりません。

また、残業が多かった月に定額の残業代を超えた分を支払わず、残業が少なかった月に支払われたものとすることもできません。
しかし、固定残業代分を超える残業時間があっても、超えた部分に関しては支払われず、サービス残業となるケースが多く、 残業代の未払いの一つとして問題になっています。

違法な固定残業代の運用事例

固定残業代の金額・時間が明確に記載されていない

固定残業代でよくある内容は、曖昧な記載をされているということです。

  • 月給22万円(みなし残業手当42時間分含む)+交通費(上限3万円)
  • 月給21万3750円(一律残業手当含む)

例えばこのようないくら分が残業代なのか、残業代の時間も金額も全く分からない求人の場合違法となります。

こちらは、求人票だけではなく就業規則にも言えることです。会社で固定残業代制を取り入れていて、その金額や時間がはっきりしていないようであれば、固定残業代は無効になります。

一定時間に満たないと固定残業代が支払われない

ブラック企業での過労死が問題にもなりましたが、例えば月に80時間以上残業しないと、固定残業代が払われず給料が下がってしまうような労働体制をとっている企業もありました。
固定残業代は、例え決めてある残業時間に達成しなかったとしても一律で支払わなくてはいけません。

超過した残業代が支払われない

固定残業代の問題でよくあるのがこの内容です。例えば、残業手当5万円、月45時間分という形で固定残業代を設定した上で、 月に45時間以上働いたのであればその分の追加の残業代を支払う義務があります。
もし、45時間を超えているのに「うちは、固定残業代だから残業代は出ないよ」という姿勢の企業ならば完全に違法です。

最低賃金を下回っている

厚生労働省が発表している平成30年の最低賃金の全国平均は一時間あたり874円になっています。 時間外労働の計算方法は×1.25。例として、時間外労働の平均最低賃金は1,092円/時間になります。
例えば「残業手当3万円(月45時間分)を含む」と、時間も金額も明確に設定されていたとします。 しかし、時給に換算してみると666円にしかなりません。この料金設定だと違法になり、今までの過不足を請求することができます。

雇用側が固定残業代を周知していない

固定残業代制を取り入れる企業は、労働者に周知せず給料形態に固定残業代制を含むということは許されません。基本的に固定残業代を今までの固定給に上乗せするような企業はありません。
今までの基本給は変えず、その一部を固定残業代にする企業がほとんどです。例えば、今までの基本給が25万円だったとします。 それを基本給20万円にして、5万円を固定残業代にするので、実質貰える金額は変わらない。という説明を労働者にする義務があります。

まとめ

固定残業代制は悪用されるケースが多く、あまり良いイメージを持っていない人が大半かと思われます。しかし、現在固定残業代制を取り入れている企業が多いのも事実です。
一言に固定残業代制と言っても運用に問題なければ適法な為、正しい知識を身につけておくことが重要となります。
また今後、働き方改革関連法の成立によって労働時間の把握・管理が法律上義務化されることなどとも相まって、固定残業代に対する今後指導強化されると考えられます。