2019/09/06

2020年からの働き方改革の対応と罰則

2020年からの働き方改革の対応と罰則

施策の本格化に伴う対応

既に適用されているものも含め2020年以降も引き続き働き方改革の法案が実施されます。また中小企業の猶予期間も順次終了する為、対応を急がなければなりません。

有給休暇を5日以上取得できる体制の整備

2019年4月から適用された、有給休暇10日以上の保有者に対し、5日以上の付与の義務化が中小企業にとって一番インパクトが大きかったのではないでしょうか。
対応の事例として、個別指定方式、計画年休制度の二つがあります。

個別指定方式は、従業員ごとに消化日数が5日以上になっているかをチェックし、5日未満になってしまいそうな従業員について、会社が有給休暇取得日を指定する方法です。
例えば、就業規則で、「基準日から1年間の期間が終わる1か月前までに有給休暇が5日未満の従業員について会社が有給休暇を指定する」ことを定めて、実行していくというものです。個別の従業員ごとに管理の手間がかかりますが柔軟な運用が可能となります。

計画年休制度は、会社が従業員代表との労使協定により、各従業員の有給休暇のうち5日を超える部分について、あらかじめ日にちを決めることができる制度です。 法改正の前から存在する制度で、労働基準法39条6項に定められています。
計画年休制度で年5日以上の有給休暇を付与すれば、対象従業員について5日以上は有給を消化させていることになるため、今回の法改正による有給休暇取得日の指定義務の対象外になります。
計画年休制度の手続きとして労使協定が必要になります。従業員代表との話し合いを行い、労使協定を締結することが必要です。 また、計画年休制度の場合、労使協定で決めた有給休暇取得日は会社側の都合で変更することができず、休みにしても業務に支障が生じにくい日の見通しが立てづらく、後で日にちを変更する必要がでてくる可能性のある場合などには対応できません。

労働時間把握義務への対応

今回の改正で労働安全衛生法に「事業者は、労働者の労働時間の状況を把握しなければならない」という条文が追加されます。
これは、産業医の機能強化と同様に労働者の健康管理・維持が主たる目的となるため、労働者には管理監督者や裁量労働制適用者も含まれます。

労働時間はガイドラインで「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義づけられており、業務上義務づけられた研修や教育訓練の受講、業務に必要な学習、着替え等の時間も含まれます。また、終了打刻後退出までに行った業務があるなどの場合も正確な把握が義務化されるため、今後は始業・終業の打刻時間の正しい管理が求められます。
今回の改正では自己申告はほぼ認められていませんので、タイムカードやICカードなど客観的に労働時間を記録・管理する仕組みが必要になります。

同一労働同一賃金

2020年から中小企業の猶予期間が終了します。業務上の責任の範囲や人材活用の運用が異なる場合を除き、同じ業務を行っているのなら正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇に差をつけてはいけないことになります。

また、待遇について非正規雇用労働者は待遇差の内容や理由についての説明を求めることができるようになるため、企業は彼らの求めに応じて合理的根拠を説明しなければならなくなります。待遇差の内容・理由に関する説明については、行政による指導も行われます。

対応遅れの罰則

時間外労働の上限規制の罰則

時間外労働の上限規制に違反した会社に対しては、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則が定められました。

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、以下を超えることはできません。

  • 年720時間 以内
  • 休日を含む複数月平均80時間
  • 月100時間未満(休日を含む)

また、原則である月45時間を超えることができるのは、年間6か月までです。
罰則を受けた場合、懲役や罰金があるばかりでなく、程度によっては、厚生労働省によって企業名を公表されます。そうなってしまうと企業の取引などにも影響しかねません。

年次有給休暇の取得義務の罰則

年間10日以上の有給休暇を付与されている労働者に、年間最低5日の有給休暇を取得させなければならないことが、働き方改革法によって決定されました。
そして、この有給休暇の取得義務に違反した場合には従業員1人あたりにつき30万円以下の罰金という罰則が定められました。

罰則のない改正法条項

働き方改革法の中の同一労働同一賃金、高度プロフェッショナル制度は、いずれも違反に対する罰則はありません。
しかし、違反に対する制裁がないとはいえど、改正法を理解し対応していかなければ、トラブル発生時、訴訟など責任追及を受けるおそれがあります。

まとめ

2020年から適用開始になる働き方改革法案の対応、猶予期間の終了等で対応に追われている企業も多いと思います。 早めに準備して労働者の合意も取り付けた上で、適切な制度改正を行いましょう。