2019/02/15

働き方改革に対応するために見直し必須!! 就業規則とは

働き方改革に対応するためには? 就業規則とは

働き方改革

働き方改革関連法の成立で、就業規則の見直しが必須に

就業規則とは、労働者の就業上遵守すべき規律及び労働条件に関する具体的細目について労働基準法等に基づいて定められた会社ごとの規則のことを指します。2019年4月に改正労働基準法が施行となり、各企業も働くためのルールである就業規則の見直しに着手する必要があります。

そもそも就業規則とは

就業規則の作成、届出義務があるのは、パート・アルバイトや、契約社員などの労働者等も含めた労働者が常時10人以上いる会社です。10人未満の会社についても、就業規則を作成している場合が多いです。厚生労働省の「モデル就業規則」の規程例や解説を参考に、各事業場の実情に応じた就業規則を作成・届出を行う必要があります。

ただし、派遣会社から自社へ派遣されている派遣労働者の場合は別となります。派遣労働者は、派遣元会社と契約を交わしている社員であるため、派遣先の常時10人には含まれません。

就業規則で定めること

絶対的必要記載事項として下記の3つは必ず記載する必要があります。また特定の制度を置く場合は就業規則に必ず記載しなければならない事項として相対的必要記載事項、服飾規定などを盛り込んだ任意記載事項を記載する必要があります。

絶対的必要記載事項

  1. 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、就業時転換に関する事項
  2. 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  3. 退職に関する事項

相対的必要記載事項

  1. 退職手当について、適用される労働者の範囲、決定、計算及び支払の方法並びに支払の時期に関する事項
  2. 臨時の賃金及び最低賃金額に関する事項
  3. 食費、作業用品その他の労働者の負担に関する事項
  4. 安全及び衛生に関する事項
  5. 職業訓練に関する事項
  6. 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  7. 表彰・制裁の定めについてその種類・程度に関する事項
  8. その他その事業場の全労働者に適用される定めに関する事項

制裁規定の制限

就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、また、総額が1賃金支払い期における賃金の総額の10分の1を超えてはならないという制限があります。賞与から減額する場合も同様です。

就業規則は会社で勝手に決めていいものなのか

ブラック企業

就業規則で定めた労働条件は、その事業場における労働条件の最低条件としての効力を持つ。就業規則に定める労働条件は、労働基準法に定める基準以上かつ合理的なものとしなければならないとされております。

就業規則は労働基準法に基づき作成する必要があり、また労働基準監督署への提出が必要となります。「法律では8時間勤務だけどうちの会社は20時間勤務」と言ったことは出来ないため、社労士と相談して作りましょう。

労働者の意見を聴かなければならない。

就業規則を届出するには、労働者の代表者の意見を聴いて、その内容を記載した意見書を添付しなければなりません。 「意見を聴く」とは、意見を求めることであり、同意しなければならないとか、協議しなければならないとかいうものではありません。 「労働者の代表」とは、その事業所に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者のことを指します。会社側が指定することは出来ません。
また労働者の代表者は管理、監督の地位にある者ではいけません。

労働者に周知する

就業規則の内容は労働者に知らせなければなりません。周知していない就業規則を無効とする判例もあります。
また労働者に就業規則を見せない、渡さないという会社には、それ自体違法であり悪意があります。そうした対応を受けたときには、基本的に会社が違法行為を行なっている、ブラック企業です。

トラブルになるケース

企業内の労使間のトラブルは後をたたず、監督署や弁護士などを介する深刻な問題に発展するケースも多々みられます。一方、それほど深刻なケースではないものの、労使間で「言った」「言わない」などの行き違いから、会社の秩序が乱れる場合もあります。

このような行き違いを防ぐツールとして、就業規則は非常に有効です。たとえば、解雇にまつわる規程を整備することで、解雇トラブルを未然に防ぐことができます。また、雇用形態による待遇差について明らかにすることで、正社員とパートなどの間で生じる格差トラブルを防止することが可能となり、賃金規程などの明確化は給料トラブルへの対策となります。

また届け出をせず会社独自で就業規則を作成し、違法な労働を行うブラック企業も多くあります。

試用期間

「試用期間だから」という理由で安易に労働者を解雇出来る訳ではなく、雇用保険や社会保険への加入義務が免除されることはありません。

使い捨てブラック企業

機密保持義務

「社員は、会社又は取引先の機密を漏らしてはならない。これは会社を退職した後も同様とする。」など漠然とした定めで社員を拘束することは出来ません。

また、既に退職した元社員に対して就業規則を守れと言っても無意味です。 退職者に対しては、個別に機密事項と期間を特定した上で、機密保持契約を締結するか念書を取る必要が有ります。

有給休暇

有給は労働者の権利であり、取得に特別な理由は本来必要ないもので、いかなる理由があっても会社が取得を拒否することが出来ない事になっています。就業規則において有給の取得を制限することは出来ません。

また働き方改革において有給義務化が義務付けられますが、土曜祝日を有給扱いにすることにより、有給の消化を達成しようとしている企業も出てきているため、今後トラブルが増加することが懸念されます。

解雇事由

解雇は、相手に解雇の意思表示が到達しないと成立しません。また「勤務成績又は作業能率が著しく不良で、社員としてふさわしくないと認められた者は解雇する。」など曖昧且つ漠然とした規定では、実際に社員を解雇した場合、「不当解雇だ!」という労使トラブルの原因になるだけです。 何を以って勤務成績や作業能率が著しく不良と判断されるのかに対する客観的な基準を具体的に定めなければ解雇規定の実効性が有りません。

会社が就業規則を守らない場合

まず、就業規則の内容を定めるのは会社なので、その内容が個人の労働契約内容よりも下回っていたり、 新たに作成した就業規則がそれまでよりも低い内容になってしまった場合にトラブルになりがちです。

しかし、就業規則の適用は無制限に認められるのではなく、法律で規制がかけられています。まず、労働基準法などの法令を下回る就業規則の適用は一切できません。 また就業規則の一方的な変更も、一定の要件を満たさないと認められません。

参考記事

働き方改革関連法の対応が必要となる箇所

法改正

おそらく大半の企業が対応しなければならない箇所になります。新しく作成する就業規則の内容は改定後の労働基準法に合致していなくてはなりません。合致しているかどうかは社労士などに確認する必要があります。

同一労働同一賃金導入

非正規雇用と正規雇用の間の不合理な待遇差の解消です。日本では、フルタイムの正社員(無期雇用労働者)に比べ、有期雇用の労働者の賃金が低く抑えられる傾向にありました。これからは、同一労働同一賃金導入に向けた就業規則の整備が求められます。

残業時間の上限規制

2019年4月に改正される労働基準法では、残業時間について上限規制が定められることになりました。

  1. 臨時的な特別な事情がある場合でも、限度時間は720時間を上回れない
  2. 休日労働を含み、月100時間を超えない
  3. 2~6ヶ月の期間いずれも、休日労働を含んで月平均80時間以内とする

もしこの限度を超えてしまうと新たに規定される罰則の対象となってしまします。各企業については、改正労働基準法の施行後は、新たな36協定を締結する必要が出てきます。

年次有給休暇の取得義務化

労働基準法の第39条では、企業が一定日数の年次有給休暇を労働者に対して与えることが義務付けられています。
今回の改正労働基準法においては、年10日以内の有給休暇が付与される労働者について、5日間は取得が義務づけられることになりました。取得させない企業については罰則の対象となります。

しかし、有給義務化の制度を悪用し土曜や祝日、夏季休暇を有給扱いにし、有給消化を達成しようとしているブラック企業が出てきてしまい、今後トラブルの増加が懸念されます。

高度プロフェッショナル制度

高度で専門的な知識を持つアナリスト・プログラマー・コンサルタントなどの職種の人で、年収1075万円を超えるような労働者について、導入されることになりました。 労働者本人の希望が前提となるのですが、裁量労働制で労働時間管理の対象から外すという制度になります。 高度プロフェッショナル制度に該当する労働者については、健康確保措置を1つ以上取り決めしなくてはなりません。

休日については、年間104日以上、4週間で4日以上の休日を、対象となる労働者の健康維持のために定めることも義務付けられます。 就業規則の中に規定する場合、該当する労働者と非該当の労働者について、二重の基準で労務管理が求められます。 社員の合意を得た上で、就業規則の内容に盛り込んでいく必要があります。

特定労働者への支援

育児休業、介護休業について就業規則で定めていく必要があります。ただ、規定する内容が多いため、育児休業規程、介護休業規程と別規程にする必要があります。これらを就業規則に明記することによって周囲の理解を得るという事も重要です。

働き方改革 参考記事

モデル就業規則などの雛形やテンプレートを活用

厚生労働省のホームページに掲載されている「モデル就業規則」という就業規則のテンプレートを活用するという手段もあります。
厚生労働省が掲載しているモデル就業規則は、国が作成する雛形であることから、労働基準法を初めとした法律を遵守した、信頼性の高い内容が展開されています。

目次から各項目の条文が順に紹介されており、一つの条文ごとに守るべき法律の内容や定める目的、解釈が記載されているため、各条文の内容を確実に理解しながら就業規則を作成することができます。また、厚生労働省など国が作成するテンプレートの場合、不定期に行われる法改正の内容も随時対応した内容に更新されますため、対応がしやすくなります。

参考

まとめ

就業規則は働くなかで、重要な事項が記載されていますが、普段は軽視してしまいがちです。この機会に一度見直してみましょう。
また、就業規則でしっかりとした制度を、設計することにより、これから休業をしようとしている労働者や休業している労働者に、安心感を与え、モチベーションの維持につなげることが出来ます。就業規則飲み直しに関してはまた働き方改革を率先してきた企業の事例などを参考にしつつ社労士などの専門家と相談して企業にあった就業規則に修正を行うのもいいかもしれません。