2020/11/17

脱はんこによる働き方改革

脱はんこによる働き方改革

政府主導で大幅に前進 脱はんこ

菅内閣発足直後に行われた官公庁、行政の押印廃止が大きな話題となりました。
確認と承認の意味や、セキュリティー面でも意味を持つ押印作業ですが、一承認の意思を残すことが目的であれば、その形式ははんこにこだわらなくてもよいのでは?という意見も多く現在の承認作業自体がそもそも本当に必要なものなのか、別の承認スタイルを検討する余地はありそうです。

なぜ脱はんこなのか

はんこ文化は日本の商習慣において広くそして深く浸透しています。しかし働き方も多様化し、各ITツールも充実している現在において、はんこ文化は本当に必要なのでしょうか?

押印のためだけ出社しなければならない

テレワーク中も押印のためだけにやむなく出社という本末転倒な状況が発生している事が以前大きな話題となりました。また、本社の他に支部や支所、店舗を複数持つような他拠点企業では押印のために移動をしたりすることもあると言います。押印のために本業の時間を潰してまで複数の拠点を行ったり来たりするのはその分時間を無駄にしており本業の生産性を下げていると言えます。

押印がないとワークフローが進まない

ワークフローや業務プロセスを進める際に押印が必須だと、前段で触れたようなわざわざ押印のために移動が必要だったり、押印のための何度も同じ説明をしなければならなかったり、様々なムダが発生してしまいます。押印前の根回しから押印のための移動や待ち時間、押印後の書類提出と管理で「仕事」とも言いづらい業務が発生しているのが分かります。こうしたムダは省きたいものの、押印が必須であり、押印のリレーを繋がなければ意思決定ができないため止むを得ず本業を後回しにしてでも対応しなければなりません。

ペーパーレスが進まない

はんこ文化はそのままペーパーレスを妨げる原因となります。ペーパーレスが進まなければ結局はその書類が物理的にある場所で仕事をし、回覧や共有・決裁をしなければならないので、出張等での不在時に対応ができない、あるいは他拠点の場合は決裁のために郵送しなければならないといった手間が増えます。また紙の書類は保管・管理業務も手間がかかります。保管スペースをとる上、ファイリングやラベリングといった管理のための業務が発生します。こうした保管・管理業務がひいては、社内文書全体によく関わるバックオフィスの負担となり、バックオフィスの生産性を低下させます。

はんこの役割

はんこの目的は、承認者が承認するという意思を記録として残すことになります。大企業であればあるほど、こうした文化が根強く残っています。 しかし、働き方改革推進の背景で急増するテレワーク化においても、はんこがもたらしている紙媒体の必要性は大きな課題の一つ。本業以外の時間と労力を費やし、ペーパーレス化を妨げるはんこは再考の時期に突入しています。 例えば電子化された書類は、承認印を押すために一度プリントアウトし、押印。それをスキャンし、再度電子化して保存。さらに、念のため紙書類をオフィス内に保管することも。当たり前に行われている光景ですが、改めて考えてみると手間と無駄が多いです。

セキュリティとしてのはんこの限界

印鑑を認証手段として利用することのリスクは明らかに高まっており、例えば押印からはんこを複製されてしまうということがあります。 またこれまでにも本人以外が代理で押印できてしまうことは問題となっており、高齢化社会により、家族が通帳と印鑑を持ち出して本人の同意を得ずに預金の引き出すといった問題も多く発生しており、金融機関では身分証明書提示などで本人確認を実施する運用が一般化しています。本人確認のためのはんこなのにそれ以外の証明が必要なのは本末転倒です。

電子印鑑とは

そうした背景から登場したのが電子印鑑です。 電子印鑑は、その名の通りデータ化されたハンコのこと。PDFなどの電子書類をプリントアウトせずに押印することが可能なため、ハンコを持ち歩いたり都度取り出したりする必要がなく、作業効率の向上を期待されるサービスです。電子印鑑を押した書類は、印刷せずにそのままメールでの送信も可能。紙書類をやりとりする手間が省けるため、大幅な作業効率アップにつながるうえ、コストの削減も期待できます。さらに、多くの書類をペーパーレス化でき、文書管理も簡素化できます。

電子印鑑のメリット

一番のメリットは遠隔地からpcを通して押印ができることです。電子契約のメリットは押印して返送してもらう時間のロスがなくなるので大幅な時短が可能となり、リモートワークでの対応も可能となります。また電子契約には原本とコピーの違いがないため、コピーを遠隔地のストレージへ収納しておくなどリスク分散も可能となります。

電子印鑑の課題

その一方で、導入時に発生するコストやサービス利用のための固定費、またデジタルデータであるが故の不正リスクも考慮しなければなりません。相手の企業がセキュリティーの観点から電子印鑑を認めないという場合もあるため、導入には確認と調整が必要です。

まとめ

以前テレワークなのに印鑑を押すだけに出社というニュースが話題になりましたが、電子印鑑をはじめ、承認というフローにおけるはんこをそろそろ考える時期が来ております。
また、印鑑廃止といったテーマが注目されると、それが目的化して、本来解決しようとしていた課題が見失われてしまうという点があり、印鑑問題について言えば、押印という行為をなくすだけではなく、認証手段として必要とされる要件を充たしているか、確認行為の結果が共有できるようになっているか、業務効率化に役立つかといった、目的に応じた代替手段の検討と、事務プロセスの見直しが必須となります。