2019/11/01

建設業の働き方改革と残業時間

建設業の働き方改革と残業時間

建設業の働き方改革と残業時間

昨年、新国立競技場の建設現場で現場監督をしていた23歳の新入社員が過労自殺するという問題が起こりましたが、この男性が自殺する直前1カ月の残業は200時間を超えていたことが報じられています。建設業界では残業時間が極めて長い事が問題となっております。

長時間労働が生まれる背景

短納期でも工期を伸ばせない

建設現場では、依頼主から「いつまでに完成させてほしい」と納期が設定されます。 遅れると罰則金が発生し、依頼主との今後の取引にも影響するため、施工会社にとっては、納期は守らなければなりません。 また多少工期が短くても依頼を受けることも多く、現場の長時間労働を招く一因となっています。

他社との競争が激しい

近年は東日本大震災後の復興関連の工事や東京五輪に向けた建設ラッシュが進んでいます。 しかし、1990年代初頭のバブル期に比べると国内の工事受注件数は半減していると言われており、業界内での競争が厳しくなっています。 自社で仕事を受注するためには、短納期や安い工事費でも受け入れなければいけない場面もあり、こうしたしわ寄せは現場で働く人々に及びます。

業界全体の人手不足

過酷な仕事として知られ働き手が少なく、会社に入ってもすぐに辞めてしまう人が多いため、建設の職場では中堅以上の社員が多くても若手が圧倒的に足りません。 若手社員は、ほかにも覚える仕事が多く、会社に戻ってから行う事務作業の量も多く、残業が長くなってしまうのです。

業界の体育会系体質

建設業界は、伝統的に社風が体育会系の面があります。 上司は自分たちが経験した働き方を部下にも求める傾向があり、長時間のサービス残業を会社内で認める空気ができやすくなっています。

建設業は残業時間の上限

建設業は残業時間の上限が現状ない

社員を残業させるためには、会社側が社員と36協定と呼ばれる協定を結ぶ必要があります。
36協定では残業時間の上限も決められていますが、次の4つの業務については適用除外とされています。

  • 工作物の建設等の事業
  • 自動車の運転の業務
  • 新技術、新商品等の研究開発の業務
  • 厚生労働省労働基準局長が指定する事業または業務

建設業は、季節によって業務量の差が大きく、天候などの条件にも進捗が左右されやすいため、残業時間の上限規制が適用されないことになっておりました。
しかし、5年の猶予期間を設け2024年4月から建設業は企業規模を問わずに残業時間規制の適用対象となっております。

5年を待たず建設業も自主的に適正化の動き

とはいえ5年後の猶予期間まで、働き方改革に取り組まないわけではありません。
日本建設業連合会は昨年、労働時間の適正化に向け、会員企業を対象に時間外労働の上限を段階的に引き下げる自主規制の導入を発表し、 全国建設業協会も働き方改革行動憲章を策定するなど各団体ともに自主的な取り組みが広がりをみせています。

残業時間の「上限」はなくても残業代は発生する

現在残業時間上限規制は設けられていないものの残業時間の上限と残業代の支払いについては分けて考える必要があります。 会社側が建設会社の社員に1日8時間、週40時間を超えて仕事させた場合は残業代を支払わなければいけません。
そのため、自主的な仕事には残業代が出ない、タイムカードなどで管理されていない、現場監督は管理職だから残業代が出ない 、決まった時間分しか残業代は出ない、などような理由で残業代の支払いを行わないことは違法になります。

まとめ

今後、あらゆる業種で法令順守の要請がますます高まることが予想されます。 建設業においても労働時間に関する問題を現段階から解消に向け行う事で、少しずつでも働き方改革の実現に向けて進めて行くことが重要となります。
働き方改革を早い段階から行う事により、建設業に関するイメージの払拭や、人手不足の解消につながります。