2019/11/01

建設業の働き方改革対策

建設業の働き方改革対策

建設業の働き方改革対策

建設業界は、他業界と比べ休日の少なさや長時間労働の慢性化などが以前から問題視されていましたが、この法案によってどのような変化が求められるのでしょうか?

残業時間規制

残業時間規制に関しては、一般的な大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月からとされていますが、建設業については5年間の猶予期間が設けられていますので、2024年4月から建設業は企業規模を問わずに残業時間規制が適用されることになります。の適用対象となるため、建設業も法的にやらなけばなりません。このように国主導に働き方改革を推進する一方、企業側にも努力は求められ、実際に働き方を変えようと動いている企業事例もあります。

平均より300時間も長い労働時間

厚生労働省の毎月勤労統計調査によれば、建設業界の年間総実労働時間は年間で2,056時間。これは、全業種平均の1,807時間と比較すると300時間の差があります。
技能労働者の給与形態は約6割が日給制で、収入減を嫌う傾向が。それが原因となり、他産業では当たり前になっている週休2日も1割しかとれない状況に陥っています。また、社会保険に非加入の企業も多数存在しています。

人手不足

約500万人いると言われる就業者も約3割が55歳以上で、団塊世代の大量離職が見込まれる10年後には労働力が一気に低下する可能性もあり。将来的にはインフラ整備や災害対策が後手に回って国民生活に多大な影響が及ぶ恐れも考えられます。
従業員数について過剰しているあるいは不足していると答えた企業数の差を示した従業員数過不足 DI 値では、建設業は2017年全業種で最低のマイナス25.6という深刻な状況に陥りました。

建設業働き方改革加速化プログラム

建設業では長時間労働や休暇日数の少なさといった課題があり、今後の大量離職の準備として人手不足の解消・労働環境の改善をしなければ事業存続が困難です。
そのためには早期の働き方改革が必要と考え、2018年に建設業働き方改革加速化プログラムを国土交通省が策定しました。長時間労働の是正、給与・社会保険、生産性向上の3本柱のもと、建設現場の運営や施工管理に加えて、工事の発注・受注にも関わる内容が盛り込まれています。

長時間労働の是正

長時間労働を是正するための主な取り組み内容は、

  • 週休2日制の導入
  • 適正な工期設定

週休2日制の導入の背景にあるのは「建設業の現状と課題」で解説した通りですが、これを改善するため、まずは公共工事で週休2日工事を拡大しながら、民間でもモデル工事を試行し、評価も行うことでモデルケースの展開を目指します。また、公共工事については、週休2日の実施に伴って労務費・共通仮設費といった必要経費を計上するための補正率の見直しも行われます。
適正な工期設定とは、適切な働き方を目指すための指針をまとめた、国土交通省の「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドラインについて」の中で示された方針を具体化したものです。
主な内容は、建設工事の受注者は従事者の長時間労働が前提になるような過密な工期での請負を避ける一方、発注者は施工条件の明確化を図り、適正な工期設定を推進するものです。

給与・社会保険

処遇についてのポイントは、建設技能者への能力評価制度の導入と、施工業者・団体への待遇改善です。技能者の能力を把握するために、まず高い技術・経験を持った技能者を公共工事で評価し、施工企業の施工能力などの見える化を実施します。また、適切な単価が下請企業にも浸透するように工事の発注者側に対して要請するとしています。
また社会保険加入を建設業の最低限の基準として徹底させるために、発注者は施工企業を社会保険加入企業に限定させ、下請企業が施工企業を選ぶ際もこの方針を守るよう要請します。さらに、社会保険に未加入の企業は建設業の許可・更新を認めない仕組み作りも行います。

生産性向上

生産性向上を行う上で国土交通省は「i-Construction」を掲げています。これは建設現場の効率性や業務負担を減らすためのICT(IT情報通信技術)の活用が主な内容となっています。
ICTとは調査から施工、検査といったあらゆる場面でIT技術を活用することを指し、例えばタブレット端末によるペーパーレス化やドローンによる測量などを想定しています。
仕事の効率化についても、公的な申請の電子化や公共工事での書類負担の軽減を目指し、後者2の項目では将来的な技術者の減少を見据えた技術者配置要件の合理化、多重下請け構造のスリム化を推進します。

まとめ

建設業界の働き方改革はゆっくりとですが、着実に進んでいます。今後さらに改革を推し進めるためにも、国による支援を待つだけでなく、企業側の努力も必要となります。

建設業業の勤怠管理は、従業員が現場に赴くため、始業時間や終了時間、残業時間もまちまちで把握しにくいという課題があります。このような変化に対応すべくITシステムや、クラウド勤怠管理の導入などを現段階から検討するのもいいかもしれません。