高齢者活用に関する補助金・助成金

高齢者活用に関する補助金・助成金

高齢者活用に関する補助金・助成金

老齢年金の受給開始年齢が引き上げられるなど、高齢者にとって定年後の再就職は死活問題になっていますが、簡単に就職できるほど企業が門戸を開いている状況でもありません。 そこで政府では、60歳以上の高齢者の雇用を促進するための施策として、数々の助成金を用意しています。

高年齢者雇用開発特別奨励金

入社日の満年齢が65歳以上の離職者をハローワーク等の紹介により、1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者として雇い入れる経営者に対して助成されます。(1年以上継続して雇用することが条件です。) 定年を迎えたような労働者が活躍できるよう、労働市場を拡げる動きを政府が応援するために作られた制度です。

支給要件

  • 対象従業員の雇入れ日の前後6か月間に、事業主の都合による解雇をしていないこと。
  • 労働者名簿、賃金台帳、出勤簿等を法の定めに則って整備・保管していること。
  • ハローワーク、民間職業紹介事業者等を経由し、紹介されたうえで雇用されること。
  • 1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者として雇い入れられること。

支給金額

1週間の所定労働時間が週20時間~週30時間未満の労働者の場合 約50万円(1年に2回半額支給)
1週間の所定労働時間が週30時間以上の労働者の場合約70万円(1年に2回半額支給)となっています。

65歳超雇用推進助成金

少なくとも65歳まで希望者全員が安心して働ける雇用基盤を早期に整備するとともに、定年70歳に向け65歳以上への定年引き上げ、定年の定めの廃止、または66歳以上までの継続雇用制度の導入を行う企業に対して、助成金が支給される制度です。この助成は雇用内容によって三つのコースがあります。要件の確認や相談、申請は独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構の各都道府県支部が窓口となっています。

65歳超継続雇用促進コース

「A.65歳以上への定年引き上げ」「B.定年の定めの廃止」「C.希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入」のいずれかを採用した事業主に対して助成を行うコースです。要件として

  • 制度を規定した際に経費を要した事業主であること。
  • 労制度を規定した労働協約または就業規則を整備している事業主であること。
  • 制度の実施日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、高年齢者雇用安定法第8条または第9条第1項の規定と異なる定めをしていないこと。
  • 支給申請日の前日において、当該事業主に1年以上継続して雇用されている者であって60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いること。
  • 高齢者雇用推進員の選任および年齢者雇用管理に関する措置を一つ以上実施している事業主であること。(教育訓練の実施、作業施設・方法の改善、健康管理、安全衛生の配慮、処遇の改善など)

高年齢者雇用環境整備支援コース

高齢者向けの機械設備の導入や雇用管理制度の整備を行う場合に支給されるコースです。

1.機械設備・作業方法・作業環境の導入や改善を行う場合

中小企業であればかかった費用の60%が助成されます。

2.高齢者の職務に応じて賃金・能力の評価制度、短時間勤務制度などを導入した場合

1年以上の雇用で60歳以上の雇用保険被保険者のうち「措置により雇用環境整備計画の終了日翌日から6カ月以上雇用されている人数×28.5万円」が助成されます。 これらは、1と2の金額を比較して少ない方の金額が支給となります。また、企業規模問わず総額で1,000万円が上限となります。

高年齢者無期雇用転換コース

50歳以上で定年年齢未満の有期契約従業員を無期雇用に転換した場合に支給されるコースです。

申請を行うためには

「特定求職者雇用開発助成金」などはハローワークより案内をしてもらえますが、提出する出勤簿、賃金台帳、雇用契約書等についてはそれぞれの整合性など法律に沿った審査が入ります。 法令に沿っていなければ、最悪不支給になるケースもあります。
また、65歳超雇用推進助成金は、審査を行うのが各都道府県労働局ではなく、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構という機関になっています。こちらは労働局に提出する助成金申請書よりも数段チェックが厳しいとのです。 確実な申請のためには労働基準法を始めとした労働法令をクリアする必要がありますので、社労士等に相談する必要があります。

高齢者活用に関する事例

高齢者活用に関する事例

再雇用事例

65歳以上の再雇用に関しては、一部企業では以前から行われていますが、年齢の問題により多くの企業はなかなか高齢者の活用に関してはあまり積極的ではありませんでした。しかし人材不足が本格化してきた今高齢者の再雇用の動き、定年の延長などが少しずつ動き始めています。

ダイキンの場合

ダイキンでは2001年時点で65歳まで希望者全員を再雇用する制度を導入、勤務形態は、それぞれの勤務の必要性と本人希望を勘案し、個別に決めていきます。その際、体力面の衰えをはじめ、家庭の関係で介護などといった個人の事情を考慮して、フルタイム、短時間、隔日、登録型の4つの勤務形態から選択する形での形態で再雇用を行っています

介護業での事例

人材不足が叫ばれている業界では年齢問わず採用しているところもあり、高齢者雇用の動きが活発になっております。介護業界は常に人材不足の状態が続いています。実際に、60歳を過ぎてから訪問ヘルパーとして活躍する人も少なくありません。また高齢者同士なので入所者とのトラブルの発生率も抑制することが期待できます。

地域サービス業・観光業の事例

地方の飲食店や観光業では利用者や客層に高齢者が多いため、同じ目線を持つ高齢者を採用することによって、高齢者ユーザーに向けたサービスを企画するなど、地域の活発化に期待ができます。

高齢者雇用促進の動き

高年齢者雇用開発コンテスト

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が厚生労働省との共催で毎年開催している「高年齢者雇用開発コンテスト」では、職場環境の改善や新職場の創設により、生涯現役で働ける職場を実践している事例や、高齢者が身につけた能力を十分に発揮できる職場環境を創意工夫して実現した事例などを募集し、優れた取組みを表彰しています。このような形で高齢者活用事例などを広めることにより高齢者の活用の推進を行っております。

高齢者活用のヒント

高齢者ならではの仕事を用意する

現在、高齢者の主な職務領域は、共通事務や庶務などを代表とする単純作業が大半を占めています。定年前に従事していた業務でその一部を引き続き担当する、専門的な知識や経験を生かした業務を行う、といったケースもありますが、量的にはごく限られたものに過ぎません。

増加する高齢者ユーザーへのサービス

企業にとって社会の高齢化はエンドユーザーの高齢化も意味しています。営業職や接客の現場などでは、高齢者ユーザーへの対応はもちろん、同世代の視点での商品開発やサービスの向上、サポートなどが期待できます。

知識や経験を生かした品質管理

研究・開発といった現場では、長年の従事で培った知識を活用することで既存製品の保守や品質管理といった分野での活躍も期待できます。

セカンドキャリアを意識したUターン・Iターン

若者の仕事に対する価値観が変化し、転勤が好まれなくなってきていることから、新卒・中途採用の現場でも積極的に実施されている地方採用・現地採用ですが、生まれ育った地元や企業が事業展開している地域への「Uターン・Iターン」といった地方勤務も、高齢者の職務領域として挙げられます。定年退職後は田舎でゆったり仕事をしながら暮らしたいと考えている高齢者も多く、セカンドキャリア・サポートの観点からも有効だと考えられます。

特に近年では「地方創生」がキーワードに挙げられる機会も多く、助成金を受けることができたり積極的に支援する自治体も出てきたりするなど、企業としても取り組みやすくなっていると言えます。

高齢者活用のポイント

高齢者活用のポイント

再雇用のポイント

モチベーションを理解する

労働意欲のある高齢者と言っても、年金受給年齢に達するまでの生活費や孫にあげる小遣いを稼ぎたい人、社会とのつながりを維持したいと考えている人、自身の技術を埋もれさせたくないと考えている人など、モチベーションは様々です。 高齢者人材のモチベーションを理解し、中途採用並みに個々に焦点を当てる考え方にシフトすることが必要となります。

高齢者が活躍するために

さらなる法的整備も必要ですが、企業の努力も必要となります。高齢者自身の努力や意識改革も必要となってきます。現在若年層として働いている人たちにも、今のうちから考え備えておくべきことがたくさんあります。

企業側で行うこと

高齢者ができる仕事は高齢者に任せられるようなシステムを作ったり、高齢者の体力やその日の体調で勤務時間を調整できる柔軟な体制を整えたりする必要があります。定年前から再就職に向けての職業訓練を積極的に行って、高齢者の再就職のサポートをすることも有効です。 このような行政、企業の努力も期待されるところですが、それ以上に今後の高齢者の努力・意識改革が必要であると考えられます。

高齢者が行うこと

高齢者が雇用されにくい理由に、「適した仕事がない」というものがあります。これを解決するためには高齢者の側で努力し、さまざまな職種に適応できる能力を身に着けておく必要があります。高齢者には体力的に難しい仕事も多い為、身体に過度な負担がかからない職種の能力を高めておくとよいでしょう。 60歳になるまでにいくつか資格を取得しておく方がいいかもしれません。
また60歳まで頑張ればいいという考えから、社会のためにも生涯現役を続けるという考えに変える必要があります。報酬については収入が下がることを当たり前と考えて、60歳までの収入と比較しないこと。60歳までは部下を持っていた方でも、再就職では人から使われる立場になります。プライドを捨てて、これに対しても謙虚に受け入れ、若い世代ともうまくコミュニケーションをとることが重要になります。

管理体制を構築する

高齢者を受け入れる現場にも、意識改革・体制強化が必要となります。年齢や過去の肩書に囚われない高齢者向けの評価方法を現場での役割に応じて確立させるのはもちろん、実際にシニア人材とともに働く現場の従業員やスタッフに対しても研修や教育が必要となります。

高齢者のモチベーションを維持する為にも目標を立てる、などモチベーションを維持しやすい環境を作ることも重要になります。

高齢者活用のデメリット

高齢者活用のデメリット

在職老齢年金制度

年収によっては老齢厚生年金の支給額が減額されることがあります。厚生年金の被保険者が老齢厚生年金の支給を受ける場合、総報酬月額相当額と年金の月額に応じて年金の一部または全部が支給停止されるという内容です。 総報酬月額相当額とは年金の受給権が発生した月以後の月収に、その月以前1年間における年間賞与を12カ月で割った額を足した金額です。 特別支給の老齢厚生年金が受けられる60歳~64歳の場合、この総報酬月額相当額と年金月額の合計が28万円以下であれば年金は減額されません。

高齢者活用のデメリット

待遇

高齢者の場合、体力や健康状態の問題が就業のネックにならないか、肉体的に負担の少ない仕事に配置することや、加齢に伴う労災事故(転倒や墜落、転落など)の発生に注意する必要があります。 60歳以降の継続雇用で再雇用後の賃金低下が就業意欲を失わせているという議論や、定年前と同じ業務であるにも関わらず、再雇用後に有期雇用契約の嘱託社員のトラック運転手が不当にさげられたのは、おかしいと会社を訴えたケースもおきています。 それとは別に、年金の受給額に合わせて、正社員を選択せずに、短時間のパート・アルバイトで週に数日だけ、短時間で勤務したいという生活費全額を働いて稼ぐ必要がない高齢就業希望者にとっては、ワークシェアリングなどの柔軟な勤務の選択肢を用意する必要があるでしょう。 高齢者雇用を考える企業が把握しておきたい点として、以下が考えられます。

  • 担当する仕事の内容・範囲
  • 職責
  • 期待する仕事の成果
  • 配置転換の頻度

新規で高齢者を雇用する場合は、企業が期待する仕事と高齢者が希望する仕事のミスマッチに気を付ける必要があります。

健康面の不安

高齢者に限ったことではありませんが人間には体力的な限界があります。 特に高齢者では体力的に長時間の労働が難しい場合がほとんどです。 そのため、長時間勤務が必須の職場や、体力を多く消耗する作業などには向いていません。また判断力も衰えている為素早い行動を求められる仕事は難しいのではと思います。

社員の高齢化

会社全体の高齢化が進みます。 もちろん技術や知識を持ったベテランが会社に残ることは会社に大きな利益をもたらしますが、短期的な目標ばかりを追求してしまうと、若手の人材育成が滞ってしまったり、会社としての柔軟性を失ってしまうという悪影響も考えられます。また社内の対人関係においても若年層との年齢の壁ができてしまう可能性もあり、業務が滞るリスクもあります。

高齢者の雇用は慎重に

高齢化の進行によって働き手が足りない、定年延長による年金の支給年齢の変更など、今後高齢者雇用の機運が増加するものと思われます。しかしデメリットが大きく体力的な問題や再雇用の際に待遇面でトラブルが絶えないなど問題点が大きいです。継続、再雇用に関しては慎重に行う必要があります。

高齢者活用のメリット

高齢者活用のメリット

高年齢者雇用の現状

厚生労働省が2016年10月に公表した「高齢者の雇用状況」によると、従業員31人以上の企業約15万社のうち、高齢者雇用確保措置の実施済企業の割合は99.5%となっており、 このことから、65歳までの雇用確保を基盤としながらも、高齢者雇用安定法の義務を超え、年齢にかかわりなく働き続けることを可能としていく必要があります。

高齢者活用のメリット

人件費や採用コストの削減できる

65歳以上の従業員を雇い続ける場合、新たに人材を雇い入れる必要がないので採用コストを低く抑えられます。 また、高齢者雇用に関する助成金の活用や、再雇用制度によって労働条件を変更して新たな雇用契約を結ぶなど、人件費を抑えることも可能です。

若手社員の育成に効果が期待できる

これまでに培ってきた知識や経験、スキルなどはスペシャリストとしての役割だけでなく、豊かな社会人経験を生かして若手社員の教育を任せることもできるでしょう。 また、トラブル発生時にはリーダーシップを発揮して問題解決に導いたり、管理職に従事する中堅社員をサポートしたりと、組織のマネジメント面での効果も期待できます。

フレキシブルな勤務形態に対応できる

65歳を過ぎても就業したいと考えているシニア層は、フルタイムでの仕事へのこだわりが少ないというのも特徴です。 空いた時間を有効活用することを目的としている場合も多く、勤務日や勤務時間といったイレギュラーな勤務形態も柔軟に受け入れてもらえるため、既存の従業員では難しい時間帯(早朝や休日など)での活用に有効です。

高齢者が働くメリット

収入がある

年金の支給が65歳に先送りされた状態で、60歳で定年退職をしたら、5年間は収入が無くなり退職金・貯金で生活する事になります。 貯金が減っていく不安というのは精神衛生上よくないものですので、そのような不安を減らすことができるというのは大きなメリットです。 もし、貯金が底を突くような事態が実際に起こると、その頃には今よりさらに高齢になっており、働くことへのハードルが高くなっているかもしれませんので、事前に計画を立てて進めていくことが大切です。

健康に良い

健康面でのメリットとしては、規則正しい生活になる、頭を使うので認知症の予防になる、軽作業などが程よい運動になる、雇用形態によっては健康診断を受ける事もでき病気を早期発見できる可能性が高まるなどが挙げられます。

コミュニケーション

仕事をせずに家にいる状態になると、外部との関係が絶たれてしまい孤独を感じる方が多いです。 しかし、仕事をしていると、職場のスタッフとのコミュニケーションや、仕事を通じて人に喜んでもらうなど様々な刺激もあり、やる気の向上にもつながります。

高齢者を活用するにあたってのポイント

高齢者はパソコンの操作などに不安があることも多く、高齢者を常にフォローできる体制を構築することが重要です。 また、実際に高齢者が作業するにあたって間違えやすい部分などを盛り込んだマニュアルを作成することで、作業効率の向上につなげることもできます。 平常時は1日4時間の短時間勤務、繁忙期は1日8時間のフルタイム勤務と、業務量の変動にフレキシブルに対応させて高齢者を活用する「高齢者スポット勤務」などがあり、ます。 このように高齢者を活用することで、高齢者の就労ニーズを満たすことはもとより、他の従業員にとっても大きなメリットが得られます。

高齢者を雇用する企業への支援策

高齢者を積極的に雇用する企業に対して、厚生労働省では助成金を支給しています。 高齢者の活用促進のための雇用環境整備の措置を実施する事業主や、高齢の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換させた事業主に対して助成されます。 特定の「高年齢者活用促進の措置」を内容とする「環境整備計画」を作成し、計画を実施することで受給することができる「高年齢者活用促進コース」と、50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換する「無期雇用転換計画」を作成し、その計画に基づき無期雇用転換措置を実施することで受給することができる「高年齢者無期雇用転換コース」の2つのコースがあります。
60歳以上65歳未満の高齢者等の就職困難者を、ハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対して助成されます。