働き方改革で健康診断にも変化 労働安全衛生法とは

働き方改革で健康診断にも変化 労働安全衛生法とは

健康診断は実施義務がある

健康診断の目的は、企業が雇用責任として従業員の健康を管理するためです。また、従業員が健康診断を受けることは、労働安全衛生法によって定められています。受けさせないと、違法行為となってしまいます。違法行為とみなされた場合、労働基準監督署から指導が入り、さらに無視を続けるなどすると、50万円以下の罰金を支払わなければなければなりません。
正社員はもちろん、契約期間が1年以上、かつ週所定労働時間の4分の3以上労働する契約社員やパート労働者も該当します。それは、個人事業でも中小企業や大企業でも違いはありません。

健康診断を拒否する社員への対応

業務が忙しいなど、従業員が健康診断の受診を拒否する場合があります。その際の対応として労働者の行きやすい病院を指定する、有給休暇、半休の取得を推奨する、業務量を調整するなどの対応を行い健康診断を行わせる必要があります。
労働安全衛生法は、労働者の受診義務違反に対する罰則は設けていませんが、企業は労働者に対して健康診断の受診を職務上の命令として命じることが出来、受診拒否する社員に対しては、懲戒処分をもって対処することもできます。

働き方改革による改定ポイント

労働安全衛生法は働き方改革法案に紐付く形で、2019年4月に改定されました。

産業医による産業保健機能の強化

産業医とは、事業場に配属されている労働者の健康管理などについて専門的な立場で指導ができる医師のことです。産業保健機能とは、事業場の産業医や保健師などのスタッフが職場以外の専門家の支援を受けながら行う、企業の保健的活動を指します。改正された法律では、産業医が専門的な立場から労働者の健康確保を行えるよう、事業者に対して以下の情報提供を求めることができます。産業医は事業者側の意見をヒアリングするとともに、事業者に対して労働者の健康管理におけるアドバイスや勧告を行うことができます。事業者は、これに基づいた改善策を講じる必要があり、従わない場合はその理由を記録して3年間保管するとともに、衛生委員会に報告しなければなりません。

  • 健康診断実施後、1ヵ月当たり80時間を超えた長時間労働者に対する面接、指導実施後、またはストレスチェックの結果に基づく面接指導実施後、これらの措置の内容
  • 1ヵ月当たり80時間超えて残業をした労働者の氏名・労働時間
  • 労働者の健康管理をするうえで必要とする労働者の業務に関する情報

労働時間の状況の把握と面接指導強化

これまで、長時間労働者で面接が必要と判断される労働者の定義は、1ヵ月当たり100時間を超えて時間外・休日労働をし、かつ疲労の蓄積が認められる者で本人からの申し出がある場合という基準でした。しかし、2019年4月以降は、80時間を超えて時間外・休日労働をし、かつ疲労の蓄積が認められる者で本人からの申し出がある場合という基準に変更されています。
事業者はタイムカードやパソコンの使用時間など客観的な方法で労働者の労働時間を把握し、1ヵ月あたり80時間を超えて時間外労働や休日労働をしている労働者本人および産業医にその旨を通知しなければなりません。

健康経営とは

そんな中、健康を働き方改革に取り込もうとする動きもあります。健康経営とは健康経営研究会によると企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても大きな成果が期待できるとの基盤に立って、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することを指します。 従業員の健康を経営資源と捉え、企業主導で従業員の健康維持に取り組むことにより、従業員の活力及び生産性の向上の実現、業績アップが期待できます。また、従業員が健康であれば、会社負担分の医療費の削減ができるといったメリットもあります。

まとめ

働き方改革を進める上でも従業員の健康管理は重要となります。特に2019年の法改正で長時間労働に関する項目がより厳しくなりました。
また健康経営といった新しい働き方改革のやり方も広まっており、健康管理の向上による集中力の向上やモチベーションアップを図る企業も増えてきております。健全な環境を保つために見直してみてはいかがでしょうか。?

健康経営のデメリット

健康経営のデメリット

健康経営とは

健康経営に限らず、どのような施策にもメリットとデメリットはつきものです。双方をしっかりと把握し、課題と目的を明確にして取り組むことで成功により近づくことが可能になります。

健康経営の目的

健康経営の目的は2つあり、1つは、少ない労働人口のなかでいかに生産性を高めて企業成長を促進させる事
もう1つは、社員の健康増進による医療費削減といった経営上のリスク回避が挙げられます。

健康経営のデメリット

健康経営といっても、始めたからといってすぐに効果が現れるものではなく、日々の行動と継続が重要となります。短期間で効果が現れないという事と長期間の継続性が健康経営の現状のデメリットとなります。

効果の不透明性

健康経営導入のデメリットとして、健康経営の効果がみえにくいという点があります。
例えば、離職者や休職者がゼロになった場合、喜ばしいのことのように感じますが、必ずしもそうとは限らないのです。
休職や離職がしにくい雰囲気が社内で広がり、従業員が無理をしてまで仕事をしていたとしたら、その会社はいい会社になったというのは、難しいからです。 成果が必ずしも数字の上がり下がりだけでは示せないことがあります。

また効果もすぐ現れるものでもないため、長期的な継続が課題となります。

社員の健康経営に関する意識の定着

経営層がやる気でも、社員にとっては面倒だと感じることはどのような施策にも起こりがちです。
社員一人一人の行動意識は、健康経営を成功させるうえで必要不可欠です。少々時間がかかるとは思いますが、社員へ意識を根付かせることは大変重要な課題と言えます。

データの管理に手間かかる

健康経営では、従業員の健康に関するデータを扱うこととなり、それらは重要な個人情報です。
データを管理するための労働力や設備の導入も必要になり、データの管理にセキュリティを厳重にしたり、プライバシーに配慮するなど、コストがかかることがありそうです。

従業員の健康は企業の発展に不可欠

働き方改革が行われる一方で、いまだに長時間労働で心身に不調をきたし、メンタルヘルスの疾病から完全回復できないという人は後を絶ちません。健康を損ねるような働き方は、働く個人からは労働生産性を奪い、企業は収益性の低下、ひいては日本社会の経済力低下にもつながります。

健康経営にしっかりと取り組む企業が増えることで、働く個人は生産性や働きがいを取り戻し、企業はブランドイメージと従業員満足度を上げることができます。

まとめ

健康経営は効果の数値化が難しく、また目に見えた効果も現れづらいため続けていくのは難しいと思われます。
しかし従業員の健康を維持することにより、離職率を減らすと同時に企業イメージの改善にも繋がります。すぐに効果は現れなくとも、継続して行うことで初めて効果が現れます。

健康経営銘柄とは

健康経営銘柄とは

健康経営銘柄

健康経営銘柄は、経済産業省と東京証券取引所が共同で実施している企業の認定制度です。
健康経営において優れた企業を選定し、健康経営の取組が社会的に促進されることを図っています。東証に上場している企業から1業種につき1企業が選出されます。

健康経営

健康経営とは、従業員の健康への配慮を単なる人事・労務管理と捉えるのではなく、利益をもたらす経営戦略として考え実践することです。
過労問題やワークライフバランスなどが注目されている昨今、いかに健康で気持ちよく働ける職場であるかは求職者にとって非常に重要な要素となっています。
労働人口が減少する中で人材を安定的に確保するために、健康経営への取り組みは必須の課題となります。

健康経営銘柄の選定基準

健康経営優良銘柄に選ばれるには以下の基準をクリアする必要があります。

  • 健康経営度調査に回答した企業の上位20%に入ること
  • 法令違反の有無や社内の体制づくりなど、定められている健康経営の必須項目を全て満たすこと
  • 自己資本利益率の直近3年間平均が0%以上であること

以上の3つを満たした企業のうち、業種内で最も健康経営度が高い企業が健康経営銘柄として選出されます。2019年は2018年までの1業種1社の制限が払われ、28業種37社と多くの企業が選定されました。

健康経営銘柄に選定されるメリット

企業イメージが向上し、社会へのアピールになる

健康経営銘柄に選定されると、従業員の健康に対して戦略的に取り組んでいる企業として、社会に魅力を伝えることができます。求職者にも大きなアピールポイントとなり、優秀な人材の確保につながります。

指標の一つとなる

健康経営銘柄に選定されれば、健康経営施策を担当する管理部や総務にとっては明確な評価となり、健康経営の指標となります

株式の評価が向上する

健康経営銘柄は、経済産業省と東京証券取引所が行なっている取り組みです。選定されると投資家にとって魅力的な企業として紹介されるため、株価の向上が期待できます。

健康経営優良法人

健康経営銘柄とよく似たものに、健康経営優良法人という認定制度があります。 こちらも健康経営に取り組む企業を認定・公表する経済産業省実施の制度ですが、以下のような違いがあります。

  • 認定を受けるのに上場企業である必要がない
  • 中小規模法人部門と大規模法人部門(ホワイト500)があり、企業規模を問わず認定を受けられる
  • 中小企業の場合、健康経営度調査に回答する必要がない
  • 大企業の場合、健康経営度調査の回答企業の上位50%以内に入れば良い
  • 認定企業数に制限がない(500社しか認定されないわけではない)
  • 健康経営銘柄よりも認定を受けやすい制度となっております。その一方で、近年ではホワイト企業の証として採用力の強化などに大きな効果が期待されています。

    まとめ

    働き方改革の推進を加速させるには、まず社員の健康と就業環境の健全化が必要不可欠です。
    社員の健康増進によって、集中力の向上やモチベーションアップなど、働き方改革を進めるうえでプラスの効果を発揮するメリットが多くあります。またこのような制度を活用し、健康経営企業であることや、適切な労働管理ができる企業である事をアピールすることでコンプライアンス上でも効果があります。

働き方改革と健康経営の事例

働き方改革と健康経営の事例

健康経営の企業取組事例

労働人口減少が著しいと叫ばれる今日の日本では、働き方改革のように従業員のパフォーマンスを高め、より長く働ける環境を整えることが企業の課題になっています。 そうした従業員満足度を高めることが重視される中、健康経営という言葉も注目を集めています。
2016年から経済産業省も「健康経営優良法人」のような認定制度を設け、国を挙げて健康経営に力を入れています。

健康経営銘柄とは?

健康経営銘柄とは、経済産業省と東京証券取引所によって運営される、健康経営に取り組む上場企業の中から、原則1業種1社を健康経営銘柄として認定し表彰する制度です。
健康経営銘柄を取得した企業は、各社が行った健康経営の経営理念・方針、組織体制、制度・施策実行、評価・改善というフレームワークに則り、選定企業紹介レポートという形で公表されています。

人間ドック受診制度の導入

建設会社の事例では、30歳以上の従業員に年1回の法定健診に加えて人間ドック受診を義務化し、受診休暇制度や費用補助を実施。
30歳未満の従業員には年2回の健診受診を義務化することにより、従業員の健康管理意識の改善・向上につなげています。
こうした施策をより効果的に進めるため、人間ドック予約や定期健診の有所見者への精密検査の受診勧奨は専門業者に委託するなど、PDCAによる体制改善を進めています。

全員面談のデータ活用したセルフケア

産業医・保健スタッフが毎年全従業員を対象とした個別面談を行い、抽出した課題を土台に施策を実施。面談結果や健診データなどを一元管理する統合システム導入によってセルフ・ケア度の可視化・定量化を進めるとともに、施策改良につなげています。さらに、ライフログデータを記録できるスマホアプリを活用し、個人の生活習慣や価値観に合わせた的確なセルフ・ケア指導にも役立てています。
サテライトオフィスの整備や設備見直しをはじめとする生産性向上への取り組みの結果、2017年度の売上高は前年度比5%増、総実労働時間は同74時間減少となり、着実な成果に結びついています。

測定会

ヘルスリテラシーの低い従業員のために、内臓脂肪や骨密度を測定してその場でデータを確認できる体感型測定会を開催しています。
その場でデータがわかるだけでなく、専門スタッフによるアドバイスも実施しています。保健指導の対象者や健康診断後のフォローとして行い、従業員の健康状態の指標が主要企業10%以内に入ることを目指しています。
また従業員の健康増進をするために、朝食や運動習慣など従業員が健康的な生活を包括的にサポートしています。

健康経営を行なっている企業の共通点

健康経営の施策に成功している企業に共通して見られるのは、長時間労働の改善をまず行なっている点になります。
長時間労働、残業による食生活の乱れから体調不良や肥満を引き起こしていることを突き止め、部署ごとの状況などを可視化することで長時間労働を改善し、有休取得率の向上、欠勤、休職する従業員の減少に効果を出した事例があります。

長時間労働の削減はともすれば従業員の残業代などの減少で収入に影響しますが、健康経営に成功している企業では、労働時間が短くなることで削減された人件費を賞与支給時に従業員にそっくり還元したり、従業員一人一人の健康に対する取り組みにポイント制を導入して、一定以上のポイントを取得することで資格手当を支給したり、定年後の再雇用時に優遇するなどの取組みを実施しています。
従業員にもはっきりとわかる利益がある形で還元することで、長時間労働の削減が人件費のカットを目的としたものではないことを示し、従業員の健康や就業に対するモチベーションを高めることがポイントとなります。

まとめ

健康経営とひとまとめに言っても、事業所や企業ごとで実施している施策やその効果は様々です。
企業によって事情は異なるため、全く同じ施策が有効であるとは限りませんが、健康経営に取り組む上で、検討するのもいいかもしれません。

働き方改革と健康経営のポイント

働き方改革と健康経営のポイント

健康経営とは

健康経営とは、従業員等の健康管理や健康増進の取り組みを投資と捉え、経営的な視点で考えて、戦略的に実行する新たな経営手法です。
これは、従業員の健康保持や健康増進を目的とした企業側の積極的な取り組みは、コストではなく将来への投資であるという考え方の元、健康管理を重要な経営課題の1つとして経営的な視点で向き合う事を指します。

メンタルヘルスやブラック企業が社会問題として取り上げられる昨今、健康管理を企業の経営課題ととらえる企業が増加しています。
この傾向は、経済産業省と東京証券取引所が、従業員の健康管理に戦略的に取り組む企業を「健康経営銘柄」として選定していることにも現れています。
健康経営は、単に健康管理面でのマネジメントが行えるだけではなく、長期的にみて経営面もよくなっていく可能性が高い方法です。

日本で健康経営が推進される背景

労働力人口とGCPの減少

昨今、労働者不足問題が深刻化するなか、官民を挙げて働き方改革が推進されています。 しかし、労働生産性の向上を実現するためには働き方を変えるだけでなく、全ての従業員が心身ともに健康な状態で活き活きと働くことのできる土台作りにも、力を入れなければなりません。

従業員一人ひとりの労働生産性を高めることができなければ、労働力人口の減少とともにGCP(社内総生産)も減少していくばかりです。健康経営を通じて個々のパフォーマンスを高い状態で維持し、魅力的な企業を作り上げることによって、多くの求職者が希望する強い企業を作り上げることができるでしょう。

機会損失に対するリスク回避

組織は人なりという言葉があるように、組織は従業員がいなければ何の活動も行うことができません。
また、多くの従業員を抱えていたとしても、常習的に遅刻や早退、欠勤を行う従業員や、出勤はするものの心身の不調によって十分なパフォーマンスを発揮することができない従業員の割合が多ければ生産性や業績を高めることはできません。
健康経営は、 足踏み状態による機会損失を未然に防ぐリスクマネジメント の観点からも大きな期待が寄せられているのです。

医療費の増大と健康保険組合の解散

近年、メンタルヘルスの不調を訴える社会人が増加しており、企業が負担する医療費は年々増加の一途をたどっています。 また、その影響を受けて大企業の社員とその家族が加入する1,394の健康保険組合のうち、4割以上もの組合が経営赤字に陥っています。
医療費の企業負担が増加すれば利益が減少し、戦略的投資に使用できる資産が少なくなってしまいます。 そして、健康保険組合が解散すれば全国健康保険協会に加入することになるため、組合独自の給付が受けられなくなる上、自社が加入している健康保険組合の保険料が協会けんぽよりも低く設定されている場合には支払う保険料が増加することになってしまいます。
健康保険組合連合会の試算によると、団塊世代が後期高齢者となる2025年には、全体の4分の1を超える健康保険組合が解散の危機を迎えるといいます。
従業員やその家族の健康に配慮して医療費の削減を図ることは、企業が率先的に取り組むべき重要課題 になっているのです。

健康管理の具体的な取り組み

会社の現状を知る

社員の健康管理を行う前に、先ずは会社の人事制度や具体的な取り組みの実態を把握する必要があります。自社の人事制度では健康的な労働生活を送ることができるか、健康に関して既に取り組んでいることはあるかなど、現状をしっかりと把握しましょう。働く人の環境変化や年齢により求められていた制度が今は変わっている場合もあります。

自社の現状をどのように把握すれば良いのか分かりかねているという企業担当者の方は、厚生労働省が提供している働き方・休み方改善指標や、経済産業省が実施する健康経営度調査と自社を照らし合わせてみると良いでしょう。

定期的な健康診断・ストレスチェックの実施

社員の健康に関する実情を把握するには、社員全員に対して定期健康診断を実施すること、さらにはストレスチェックも行い、体には表れていない精神衛生の部分も現状を把握するといった取り組みを行うべきです。そして、形だけを作るのではなく、健康診断受診率100%を目指し、実質を伴ったものにしなくてはいけません。会社での疲弊やストレスは、社員の心身ともに影響を与えます。定期的に社員の心身の両面から管理し、実際の取り組みにつなげていくことが大切です。

社員の健康を維持する仕組みづくり

ただ定期的に心身の状態を確認するだけでは、データが集まるだけで社員の健康にはつながりません。大切なのは、社員が自ら健康増進を心がけ、健康を維持できる仕組みをつくることです。十分な休憩時間の確保や長時間労働の是正、専門家による健康セミナーの開催、社内での部活動の推進など、様々な制度として設けたり、健康を意識する機会や情報を提供したりすることで、社員が健康へ関心を寄せるよう計らいます。1度のセミナーやイベント実施で終わるのではなく定期的に健康についての情報を発信し続けることで、社員が積極的に健康を意識するようになれば、自然と健康増進、維持につながるはずです。

女性の働きやすさにも配慮

女性のさらなる社会進出および活躍が期待されている昨今、企業は女性の働きやすさについても考える必要があります。
希望者は定期的にカウンセリングを受けられる制度や、婦人科検診が受けられる制度といった施策は大変効果的でしょう。また、産休育休制度を充実させることで出産育児と仕事の両立への不安も少なからず解消されるはずです。

まとめ

働き方改革の推進を加速させるには、まず社員の健康と就業環境の健全化が必要不可欠です。
社員の健康増進によって、集中力の向上やモチベーションアップなど、働き方改革を進めるうえでプラスの効果を発揮するメリットが多くあります。まずは会社の現状を把握し、課題に適した取り組みを行うことが大切です。社員の健康管理から、働き方改革を加速させていきましょう。

働き方改革と健康経営のメリット

働き方改革と健康経営のメリット

働き方改革を阻む意外な要因

働き方改革を阻む意外な要因として社員の不健康が挙げられます。

・休職者の増加

社員の不健康化が進んでしまうと、生活習慣病などの疾病、メンタルヘルスの不調などを引き起こす可能性が高まります。重度の場合は休職せざるを得ない場合もあるでしょう。
突然の欠員が増えると他の社員がカバーすることになるので、長時間労働やオーバーワークなどが起こりかねません。

・モチベーションの低下

社員が疲弊し、心身共にストレスを抱えた状態であると、出社をしても仕事をする気にならない、集中力が続かないといった事態に陥ります。仕事へのモチベーションが保ちづらくなり、パフォーマンスの低下にもつながります。
このように、社員が不健康であることは、働き方改革が進まない要因の一つになりえるのです。

社員の健康管理の重要性

近年社員の健康管理、増進が注目されるようになりましたが、どうしてここまで叫ばれるようになったのかというと、「社員の健康を増進させることが、結果的に労働生産性を高めることにつながる」ということが分かってきたからです。
長時間労働や過重労働で疲弊した社員は、体調不良や集中力の低下によってミスを起こしやすくなります。また、組織が全体的に落ち込んだ雰囲気では、前向きな行動やアイデア、活発な意見交換などは成しがたいものです。社員が集中して取り組むことができ、前向きで活発な組織づくりを行うには、まず社員の健康管理から始める必要があります。社員が健康になれば、その分労働生産性は向上していくはずです。

リスク管理と健康経営

電通事件をはじめ、過労死が表面化してきました。健康障害が発生しない取り組みを講じていかないと、大きな社会的非難を浴びる時代となっています。労働基準監督署の調査も次々と入り、細かいチェックが入ってます。企業イメージが損なわれることのデメリットも計り知れません。
また、従業員の健康障害や過労死があった場合、雇用主はもとより管理監督者である上司も訴えられる事態となっています。健康経営はリスク管理として捉えなければならないのです。

健康経営とは

健康経営とは健康経営研究会によると「企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても大きな成果が期待できるとの基盤に立って、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することを指します。
従業員の健康を経営資源と捉え、企業主導で従業員の健康維持に取り組むことにより、従業員の活力及び生産性の向上の実現、業績アップが期待できます。また、従業員が健康であれば、会社負担分の医療費の削減ができるといったメリットもあります。

健康経営優良法人認定制度とは

「健康経営」を評価する認定制度や表彰制度はいくつか存在しますが、最も注目度が高いものが、経済産業省による「健康経営優良法人認定制度」です。
これは、「地域の健康課題に即した取組や日本健康会議が進める健康増進の取組をもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度」です。
認定基準は、

  • 経営理念(経営者の自覚)
  • 組織体制
  • 制度・施策の実行(健康課題の把握、対策の検討、ワークライフバランスの推進、健康増進・生活習慣病予防対策、メンタルヘルス対策など)
  • 評価・改善
  • 法令遵守・リスクマネジメント

という5つの大項目をベースに、それぞれ具体的な取組みが評価項目として設けられています。これらの認定基準が十分に満たされていることで、「健康経営優良法人」と認定されます。

健康経営優良法人に認定されれば、企業のイメージや社会的評価の向上はもちろん、認定企業は金融機関から低利融資などの優遇措置を受けられることもあります。

健康経営のメリット

医療費の削減

メリットの一つに、医療費削減があります。
従業員が健康になり病院に行く回数が減ることで、企業が負担する医療費も減ることとなります。

労働生産性の向上

健康経営の各施策によって、心身の体調不良による休業や休職者が減ること、出勤していても調子が悪く、ボーッとしてしまい、生産性が落ちてしまうことを減らしていく効果があります。
特に後者の「出勤しているけれどパフォーマンスが悪いことによる損失」は、企業が負担する医療費や、休業による損失額よりも大きいと言われています。

従業員が健康になる

従業員にとっての最大のメリットは、健康になるということです。
健康経営の施策によって、健康に対する意識づけや、正しい知識を学ぶことができ、生活習慣の改善などにつながるでしょう。

まとめ

働き方改革の推進させるには、まず社員の健康と就業環境の健全化が必要不可欠です。社員の健康増進によって、集中力の向上やモチベーションアップなど、働き方改革を進めるうえでプラスの効果を発揮するメリットが多くあります。まずは会社の現状を把握し、課題に適した取り組みを行うことが大切です。