女性活躍の日本と世界の現状

女性活躍の日本と世界の現状

女性活躍の日本と世界の現状

政府が「2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%まで押し上げる」と目標を掲げたことで、女性活躍推進法が施行されました。 これにより女性管理職の増加を目指す動きが活性化していますが、思うように推進できていない企業が少なくないのが現実です。

女性活躍が推進されている背景

少子化による労働力不足

女性の活用が急がれる背景には、少子高齢化に伴う労働力不足問題があります。
労働人口の減少に伴う全体的な生産性の低下により、 従来通りのサービス、業務が出来なくなってしまう可能性があり、50年後には現在の半分にまで労働人口が落ち込むと言われています。この状況を打開するために、政府は成長戦略の一環として女性活躍推進法を制定し女性の活躍を推進しました。

再就職できない女性が多い

出産や育児を理由に一度仕事を離れていた女性が再就職を望んでいるにも関わらず、思うように復帰できない状況にあること多く、こうした女性の社会進出を妨げる要因を取り除くことで、労働力不足を補うことができると考えられています。

海外との比較

2016年に内閣府が発表した「管理的職業従事者に占める女性の割合(国際比較)」は下記となっており、日本は11位でわずか12.5%となっています。2020年に社会のあらゆる分野で指導的地位に女性が占める割合を30%程度にすると政府が目標を掲げていましたが、現実的に実現は不可能な状態です。

  1. フィリピン (47.3%)
  2. アメリカ (43.4%)
  3. スウェーデン (39.5%)
  4. オーストラリア (36.2%)
  5. ノルウェー (36.0%)
  6. イギリス (35.4%)
  7. シンガポール (33.9%)
  8. フランス (31.7%)
  9. ドイツ (29.0%)
  10. マレーシア (22.2%)
  11. 日本 (12.5%)

上位に入っている国にヨーロッパが多いですがそれには下記のような特徴があります。

キャリア意識の違い

ヨーロッパにおいて女性役員比率が高いのが目立ちますが、ヨーロッパの女性の社会進出が進んでいる理由の1つとして、まずキャリア意識が高いことが挙げられます。
ヨーロッパの人々は、幼少期からキャリア教育を受けて育ちます。そして、大学進学のときには将来のキャリアを見据えて専攻を選び、勉学に励みます。学生時代には長期インターンシップに参加します。また、日本のように定年まで1つの職に就き続けることは珍しく、キャリアアップのための転職が当たり前に行われています。

企業の採用基準の違い

ヨーロッパは主に実力主義社会のため、企業の採用では、日本のように新卒採用や既卒採用という枠組みがなく、即戦力であることが求められます。そのため、採用基準は、求職者の志望動機や自己PRよりも学歴や職歴が重視されます。採用条件に性別や年齢の制限もありません。
雇用形態は、日本と同様に正社員と非正規社員があります。賃金については、法律により雇用形態での差別を禁じられていることから同一労働同一賃金制が導入されており、女性だから、子育て中だからといった理由で待遇を差別されることはありません。

日本の女性活躍の課題

女性の活躍推進の目的が明確でない

女性の活躍を望んでいながらも、女性の活躍を推進する目的や意義を明確にしていない企業は少なくありません。 推進力を高めるには具体的な数値目標を設定をするなど、会社への影響や目標とすべき姿をしっかりと思い描くことが大切です。

女性を育成する風土がない

女性自身の仕事に対する意識が低いことや、良質な仕事にアサインしてもらえていないことから、中堅になる前に退職するケースが多いです。 この背景には、「女性は結婚や出産を機に家庭に入るべきだ」という考え方や、家庭を持った女性に対して重要な仕事を任せない企業の慣習などがあります。
女性の活躍を推進するにためには、まず女性を育成する環境を整えることが重要となります。

まとめ

日本の女性の管理職比率は、国際データと比較しても決して高い水準ではありません。日本はまだまだ女性が社会進出するうえで困難が多い社会と言えるでしょう。一方で、性別を問わず優秀な人材が活躍できる環境作りに積極的に取り組む企業もあります。 働きたい女性のニーズに応えることは、人手不足に悩む国や企業にとってもメリットが大きいため、今後も女性活躍推進に向けて、国としてさらなる制度拡充と取り組みの強化が進んでいくことが期待されます。

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女性活躍推進法とは?背景と期待できるメリット

女性活躍推進法とは?背景と期待できるメリット

女性活躍推進法とは、女性が働きやすい環境づくりを企業に求める法律で、正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」です。女性活躍推進に向けて短期間で集中的な取り組みを進める必要があることから10年間の期限がある時限立法として2016年4月に施行されました。2019年5月にはその一部を改正されました。

女性活躍推進法とは

2016年4月1日、政府は女性活躍を実現するために女性活躍推進法を定めました。 「女性が仕事で活躍する」といった内容を事業主に対して義務化したことです。 女性の活躍推進に向けた数値目標を含む行動計画の策定及び公表、女性の職業選択に役立つ情報の公表が、国や地方公共団体、民間企業等の事業主に義務付けられました。

女性活躍推進法の基本原則

同法では以下の基本原則を元に、女性活躍の推進が図られています。

  • 女性の採用、昇進等の機会の積極的な提供及び活用や、性別で固定的役割分担等を行う職場慣行の是正が実施されること
  • 「職業生活と家庭生活との両立」を実現するための環境整備により、それが円滑かつ継続的に実施されること
  • 上記の両立に関し、本人の意思が尊重されること

こうした基本原則の実現のために、同法は国、地方自治体と企業等に以下のような取組内容を定めています。

  • 女性の活躍推進の基本方針、企業等が作成する「行動計画」の指針の策定
  • 企業の優れた取組への認定、発注先としての優遇扱い
  • 女性の職業選択に資する情報の公開、啓発活動、職業紹介、訓練、起業支援等による支援
  • 国の機関に勤務する女性のための行動計画の作成及び実施状況の公表
  • 管轄地域での女性活躍推進の計画作成
  • 働いている女性等からの相談対応、関係機関の紹介、情報提供、助言
  • 国が女性活躍推進で優良と認定した企業への発注先としての優遇扱い
  • 自治体の機関で勤務する女性のための行動計画の作成及び実施状況の公表

企業等の場合(300人以下の企業は努力義務)

  • 女性採用比率、勤続年数男女差、労働時間、女性管理職比率等、企業の女性活躍についての状況把握、課題分析
  • 状況把握及び分析に基づき、課題の解決ができる適切な数値目標と取組内容を含めた行動計画の策定、届出、周知、公表
  • 企業の女性活躍についての情報公開

厚生労働省によると、2017年12月末時点で行動計画策定等の義務のある一般事業主の99.7% にあたる16,071社が行動計画を届けています。努力義務とされる300人以下の一般事業主での策定・届出数は3,866社です。

女性活躍推進法の導入の背景

女性の活躍推進を求める背景には、少子高齢化に伴い労働者不足の加速化が予想され、女性の潜在的能力の活用が求められてきたことや、産業構造の変化により多様な人材を活用していこうという機運が高まってきたことなどが挙げられます。 また、女性の就労面の改善が不十分であったことも女性活躍推進法の導入の背景にあるとみられています。 女性の社会進出を巡っては、1985年の男女雇用機会均等法以来、育児休業法、育児介護休業法、次世代育成支援対策推進法が制定され、雇用面での男女の均等化への支援や、仕事と家庭の両立を図るための支援が実施されてきました。その結果、女性の就業者数は上昇し、特に2012年からの5年間では約7.2%増と、大きく改善しています。 しかし、管理職に占める女性の割合は11.2%に留まります。これは、2003年に男女共同参画推進本部が目標値としていた30%程度に遠く及びません。女性の就業は徐々に進んでいるものの、職務は補助的な役割に留まっており、キャリア形成では不十分な状況でした。

ここから言えることは、「雇用」や「仕事と家庭の両立」など、女性の就業を支えるための個別の施策だけでは、女性のキャリア全体を支援することにはならず、本当の意味で女性の社会進出を促すことにはならないということです。そこで、「雇用面での均等支援」と「仕事と家庭の両立支援」を包含した施策が求められるようになりました。

期待される効果

女性活躍促進法は、女性が自身の意志によってキャリアを構築し、スキルを十分に発揮することが可能となる社会づくりを目指す法律です。その実現のため、主に以下の3つの方針を基本原則としています。

  • 採用や昇進が平等に行われ、職場環境においても平等が配慮されるべきこと
  • 仕事と家庭が両立できる環境をつくること
  • 女性本人が、仕事と家庭の両立に関する意思決定をできること

仕事と家庭を両立

会社での長時間労働を前提とした働き方では、女性に仕事か家庭生活かの二者択一を迫ることになります。 女性に仕事と家庭を両立した上で十分に能力を発揮してもらうには、長時間労働を改める、多様な働き方を認めるなど、抜本的な労働環境の見直しが必要になります。
女性はもちろん男性も含めて、育児や介護などで時間に制約のある労働者が増えてきている現状に合わせて、働き方改革を行い、誰もが働きやすい職場を実現することが重要となります。

男性が家庭生活に参画する事

少子高齢化や共働き世帯の増加によって、男性が家事・育児・介護などの家庭生活に参加する場面は着実に増えてきています。男性が積極的に家庭生活を支えれば、女性の負担も減り、職場での活躍も進むでしょう。
そのため女性だけでなく、男性も家庭生活に気兼ねなく参画することを強力に推進し、仕事と家庭生活を両立させることが当たり前となるような社会や、働きやすい職場環境を整えていくことが求められます。

女性のキャリアアップを邪魔しない

出産を終えて職場に復帰したとしても、育児のために残業ができなかったり早退や休むことが多かったりするため、簡単な仕事しか与えられなくなり、出世コースとは異なるコースに乗ってしまうことが多くなります。
このような状況を改善するには、仕事と家庭を両立できる支援制度や、家庭生活に参画しながらキャリアを形成していけるような仕組みの構築が重要となります。

女性活用のメリット

企業文化の改革

女性活躍の推進は企業文化の改革にもつながります。日本企業の多くは、制度面でも風土面でも男性中心の状態が続いていましたが、近年は女性の社会進出に伴い、大企業でも変化が見られます。「働きやすい職場」を実現するためにまず必要なのは制度改革ですが、これを浸透させ、実用化するためには全ての従業員の意識改革が必要です。 その過程で、時代に見合った新しい風土が生まれていきます。 例えば、女性の方が上下関係を超えたコミュニケーションが得意なため、縦割り組織の是正や会社全体のコミュニケーションの活性化につながる、などです。 日本では経済産業省と東京証券取引所が共同で、女性活躍推進に優れた上場企業を「なでしこ銘柄」として選定し、「中長期の企業価値向上」を重視する投資家に紹介しています。選定された企業では株価の上昇だけでなく、企業イメージの向上も期待できるでしょう。「なでしこ銘柄」選定企業は経済産業省のHPで確認できます。 女性活躍推進は政府の主導で開始されたものですが、企業にとってのメリットは明らかです。ぜひ積極的に取り組み、企業としての成長につなげましょう。

女性の活躍の課題とデメリット

女性の活躍推進するにあたっての取り組みが多く進む中同時に課題も多く出てきております。

社員の意識改革が進まない

「女性活躍」というキーワードだけが認知され、女性が働きやすい環境が整うことによる効果や必要性がまだ十分理解されていない状況です。 特に、施策を運用したり業務のマネジメントを行う管理職層に女性活躍推進の必要性を浸透させることは必要不可欠です。 女性が働きやすい環境を整備することで、組織全体にどのようなメリットがあるのかをしっかりと周知していくことが大切です。

育児・介護の両立がうまくいかない

仕事と育児の両立のハードルも高く、両立経験者のうち、仕事をやめようと思ったことがある人は半数以上で理由は「時間的な余裕がなく、子どもに向き合えない」が最も多く。 共働きの夫の1日の家事・育児時間は46分で妻の6分の1以下で負担は女性に偏っています。 上司や職場の理解・夫の理解と協力が進んでおらず、職場・家庭双方での男性の意識を変える必要があります。

まとめ

女性活躍を推進するためには様々な準備が必要となりますが、その分、社員・企業双方に大きなメリットがあります。
女性活躍推進法の定める義務と向き合い、まずは自社の現状や現場のニーズをしっかりと把握することから始めましょう。社員にもさまざまなメリットを周知させ、長期的に計画を行ってきます。職場における男女格差をなくし、企業環境全体を良くする足がかりになります。

2020年に向けた働き方改革 中小企業

2020年に向けた働き方改革 中小企業

中小企業猶予期間

働き方改革の一部施策には中小企業に関して猶予期間が設けられております。
この猶予期間は2020年4月以降段階的に終了し、働き方改革に基づいた会社運営を行わなければなりません。

そもそも中小企業とは

働き方改革法における中小企業の定義は、下記にカテゴライズされます。
業界によって資本金・出資金の総額、常時使用する労働者数の要件が異なるためよく確認しましょう。

  • 資本金5000万、従業員数50人以下の小売業
  • 資本金5000万、従業員数100人以下のサービス業
  • 資本金1億、従業員数100人以下の卸売業
  • 資本金3億、従業員数300人以下のその他業種

働き方改革法の適用時期

中小企業の猶予期間の廃止時期は以下のとおりです。早めの準備を行い今の段階からしっかりと対応する必要があります。

  • 残業時間の上限規制:2020年4月
  • 同一賃金同一労働:2021年4月
  • 割増賃金の中小企業の猶予廃止:2023年4月

先延ばしは禁物 中小企業の働き方改革対応

働き方改革関連法案の猶予期間=焦って準備する必要はないというわけではありません。
例えば、恒常的に残業時間が長くなりがちな職場で時間外労働の上限規制にどう対応するか、パート・アルバイトを多く抱える現場で同一労働同一賃金をいかにして考えるべきか、このあたりの解決策の検討はすでに定着している働き方や考え方を大きく変える必要があり、簡単にはいかないからです。
単に就業規則や賃金規程などを整備するだけでは実運用がついていかず制度の導入に失敗してしまいます。まずは各制度について理解を深め、職場意識の改善を図り、その上で、時間をかけて会社に合った形での導入を検討していかなければなりません。

適切な勤怠管理

まだ働き方改革に向けた取り組みを行えておらず、どこから手を付ければいいかわからない場合は、労働時間の計測を行える環境をまず整備し、従業員の働き方を正しく把握することから始めましょう。
具体的には、正しい形で勤怠を管理し、実態を知ることです。勤怠データから、おのずと職場の問題点や課題が明らかになります。例えば、長時間労働が恒常化する人や部署が特定されることで、より効果的な取組みの検討がしやすくなります。

これからの働き方改革

これからまだまだ働き方改革関連法は出てくるかもしれません。というのも、働き方改革の目的は労働人口減少への対応のため、法律の施行によって何かしらが起これば新たな法律が適用されたり、成立する可能性があります。動向を見守りつつもしっかりと働き方改革を進めていきましょう。

まとめ

働き方改革について、まだ中小企業においてあまり進んでいない状況などが見て取れますが、順次猶予期間が終了し、刑事罰を伴う罰則のある法律が適用されることになります。
働き方や制度はすぐに変えられるものではありません、急いで準備を行い働き方改革に備えましょう。

2020年に向けての働き方改革 残業時間

2020年に向けての働き方改革 残業時間

労働時間に関する制度の見直し

従来抜け穴といわれていた特別条項付36協定締結の場合の残業時間数に制限を設ける、残業時間の上限規制が中小企業でも適用されます。
労働者の過労死等を防ぐため、残業時間を原則月45時間かつ年360時間以内、繁忙期であっても月100時間未満、年720時間以内にするなどの上限が設けられ、これを超えると刑事罰の適用もあります。

労働時間把握義務

労働時間の把握義務は、2019年4月1日から、産業医との連携や情報提供強化を背景に、労働安全衛生法の改正で事業主には労働者の労働時間把握義務が正式な法的義務として課せられました、これに関しては大企業も中小企業も共通です。残業時間の上限規制に対応する為には、各業務状況の正確な把握が重要となり、長時間労働を防ぐ意味でもこちらの徹底は必要不可欠となります。

改正36協定

これまでの36協定では、

  • 時間外労働の上限は、原則月45時間、年360時間
  • 突発的かつ一時的な特別の事情が予想される場合に限り、一年で6ヵ月を超えない期間内で、前述の原則を超える時間外労働時間を設定することができる(特別条項付36協定の締結)

となっています。
この場合、事業主には過労死ラインを意識するなどの安全配慮義務が課せられます。しかし、法律に時間などの具体的な定めがないため、上限なく残業時間数を設定することができてしまい問題視されていました。

今回の法改正で36協定の扱いが見直され、労働基準法には下記の内容が明記されました。

  • 従来通りの時間外労働の上限は、原則「月45時間、年 360時間
  • 突発的かつ一時的な特別の事情が予想されるケースに限り、下記の要件を満たす場合、 一年のうち6ヵ月を超えない期間内で時間外労働時間数の特別な設定が可能
  • 年間の時間外労働は月平均60時間 年720時間以内となること
  • 休日労働を含み、2ヵ月間、3ヵ月間、4ヵ月間、5ヵ月間、6ヵ月間のいずれかの月平均時間外労働時間が80時間を超えないこと
  • 休日労働を含んで、単月は100時間未満となること

上記に違反した場合には労基法違反として罰則の対象となります。
80時間、100時間は、過労死ラインといわれる健康障害のリスクが高まるとする時間外労働時間数に由来しています。

この改定36協定はすでに大企業では適用対象となっており、今回2020年4月以降、猶予期間が終了する中小企業にも適用範囲が拡大します。

罰則

時間外労働の上限を守らなかった企業は、罰則として6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される恐れがあります。
罰則を受けた場合、懲役や罰金があるばかりでなく、程度によっては、厚生労働省によって企業名を公表されます。そうなってしまうと企業の取引などにも影響しかねません。

60時間超えの残業は中小企業も手当てが1.5倍

大企業において、2010年より60時間を超える残業時間に対しては1.5倍の残業手当が義務化されています。
中小企業への適用は見送られていましたが、働き方改革関連法案によって2023年4月より義務化されます。こちらは当分先とは言え合わせて準備した方が良さそうです。

残業時間の上限規制への対応

労働時間管理方法の見直し

毎月どのくらいの時間外労働を労働者が行っているかを企業が把握していなければ、法律上の上限規制に違反しているかどうかを確認することすらできません。 そのため、現時点においてタイムカード等の客観的記録に基づく労働時間管理を行っていないということであれば、早急に整備を行う必要があります。

また厚生労働省のガイドラインにおいては、パソコンの使用時間が労働時間に関する記録として重要視されています。また労基署が違法な時間外労働の有無を調査するにあたっては、タイムカードのみならず「パソコンの使用時間」の記録の提出を求めてくることがあります。
そのため、企業はタイムカードによる労働時間管理方法を採用している場合であっても、タイムカード上の労働者の入退室の記録と、パソコンの使用時間の記録とに齟齬がないかを把握できるような状態にしておく必要があります。

36協定の見直し

現時点において、改正法の上限規制に抵触する内容の36協定の届出をしている場合には、施行期日までにこれを見直す必要があります。
なお、36協定の見直しとともに、人員や人事配置についても見直しを行い、改正法上の上限規制の範囲内に収まることができるような体制を整備しましょう。

時間外労働の抑止方法

企業が、労働時間管理方法の見直し及び36協定の見直しを行っても、労働者の意識が変わらなければ、これまでと同じように長時間労働を行ってしまい、意図せず法律上の上限規制に違反する可能性があります。
そのような事態を防ぐための方法として、時間外労働を削減していく通知文を出し、長時間労働是正を社内に周知を徹底させます。

長時間労働の是正のための具体的な方法としては、時間外労働を行う場合のルールを厳格化することが考えられます。例えば、これまで時間外労働に関して事後届出制を採用していたのであれば、これを事前許可制に変更し、不必要な時間外労働を削減していくべきです。
このような対応策を講じても、労働者が長時間労働を行ってしまう場合、個別に残業禁止命令を出すことも検討すべきかもしれません。

残業時間の削減に成功した事例

徹底した労働時間の把握を行なったケース

海運会社の事例で5年間で残業時間を27.8時間減らし、残業時間の減少率は77.7%を達成したケースです。
具体的取り組みとしては、PCのログオン打刻時間の確認により、正しい労働時間を把握、月中での残業見通し把握、 所属部長に対し注意喚起を行い対策指示、対策状況の確認を行うという物でした。
また同時に有給休暇取得の推進にも努めており、2017年度は2012年度の7.4日から9.3日増加の16.7日を達成しています。

ノー残業デーを活用したケース

大手ドラッグストアではノー残業デーの実施や変形労働時間制度の活用を行い、2017年度の残業時間5.0時間、減少率は84.0% それと同時に年間の有給休暇取得日数も3.6日から7.7日と大幅にアップし、残業時間の削減に成功しております。

まとめ

中小企業の猶予期間終了に伴い残業削減の動きは本格化していきます。企業は上限規制に対応していくだけでなく、労働者のワーク・ライフ・バランスの改善のため、生産性向上の取り組みとあわせてさらなる労働環境の整備に取り組んでいくべきでです。

2020年からの働き方改革 同一労働同一賃金

2020年からの働き方改革 同一労働同一賃金

2020年4月から同一労働同一賃金が徹底化

正規雇用者と非正規雇用者の不合理な待遇差をなくす同一労働同一賃金が、大企業では2020年4月、中小企業では2021年4月から適用されます。
法改正後は、不合理に当たる待遇差の明確化や労働者の待遇に対する説明義務の強化などが徹底されるようになります。

同一労働同一賃金とは

同一労働同一賃金とは、同じ仕事に就いている限り、正規雇用労働者であるか、非正規雇用労働者であるかを問わず、同一の賃金を支給するという考え方です。
様々な事情により、非正規雇用を選択する労働者が増加している中、政府はいわゆる働き方改革のひとつとして、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を解消し、多様な働き方を選択できる社会にすることを目指しています。

今回の法改正について

同一労働同一賃金の徹底化が盛り込まれた働き方改革関連法は、2020年4月1日から施行されます。中小企業への適用は猶予期間が入り、2021年4月1日となります。
今回の法改正では、同じ企業内において、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間などで雇用形態による不合理な待遇差を設けることが禁止されます。具体的に何が不合理な待遇差に当たるのかについては、指針を示したガイドラインが策定されており、改正法の施行と同時に適用される予定です。

均等待遇規定

同じ働き方をしている場合に、賃金をはじめとして労働条件における処遇を同じにすることです。同じ働き方であるかどうかは、職務内容と職務内容・配置の変更の範囲によって判断されます。現在の仕事だけではなく、転勤や昇進などの人事異動が見込まれるかどうかでも判断される為注意が必要です。職務内容には、業務内容と有している責任の両方が含まれます。

均衡待遇規定

働き方が違うのであればその違いに応じてバランスを考えた待遇をしなければならないという規定で、したがって不合理な待遇差を禁止しています。このバランスは職務内容、職務内容・配置の変更の範囲、その他の事情の3点を考慮して決定されます。

派遣労働者の待遇

派遣労働者の待遇についても、派遣先の労働者との均等・均衡待遇、一定の要件を満たす労使協定による待遇の2つの方式のいずれかを確保することを派遣元企業の義務とする規定が設けられています。
併せて派遣先の企業に対しても、派遣労働者の待遇に関して派遣元企業への情報提供をしなければいけないというルールが設定されます。

労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

非正規雇用労働者が自身の待遇について説明を求める権利が、法的に明確化されます。これまで、パートや派遣の労働者に関しては、雇い入れ時に待遇内容の説明を、さらに要求があった場合には待遇決定に際しての考慮事項についての説明を行うことが、企業側の義務として定められていました。
しかしながら、有期契約の労働者についてはその限りでなく、また、労働者の雇用形態にかかわらず、正社員との待遇差についての説明義務に関しては特に規定がありませんでした。
今回の法改正によって、これらの事柄についての説明を求める労働者側の権利と、それに対して事業主が答えなければいけないという義務が明確化します。

行政による事業主への助言・指導や行政ADRの規定整備

労使紛争について行政がどう関わるかの規定が改正されます。都道府県労働局において、無料かつ公開で労働者と使用者の間の紛争解決手続きを行うようになります。

企業の対応

正規労働者・非正規労働者間の賃金の違いを、多くの企業が正規雇用労働者と非正規雇用労働者とでは将来の役割期待が異なるため、賃金の決定基準・ルールが異なるという主観的・抽象的な説明に終始しがちですが、これだけでは同一労働・同一賃金の説明としては不十分です。
職務内容、配置の変更範囲、その他の客観的・具体的な実態に照らして合理的に説明できるものでなければなりません。規程の整備や職務内容の見直し、社内の意識醸成等をしながら最新の情報をキャッチアップしていく必要があります。

ガイドラインなどを読み込み、具体的な事例を通して何が違法で合法となるのかを把握しておきましょう。

罰則は

罰則は設けられていません。
ただし、訴訟に発展し、違法性が裁判で認められると、差分の賃金や手当を払わなければならないこともあります。過去に企業側に差額の支払いが命じられています。

同一労働・同一賃金による各種手当の均等・均衡待遇の確保

賞与

賞与とは定期または臨時的に一時金として支払われるもので、会社が規程等で自由に定める事ができます。しかし、会社の業績等への貢献に対して支給しようとする場合、正規雇用労働者と同一労働・貢献である非正規雇用労働者には、同一の支給をしなければならないとされています。ガイドライン案によると、業績や目標数値に対して、正規雇用労働者に対してのみ未達の場合に処遇上のペナルティを課しているような場合、その見合いの範囲内であれば同一賃金の考え方は当てはまらないとされています。また、賞与の趣旨を職務内容や貢献等に関わらず正規雇用労働者全員に支給している場合、非正規雇用労働者に対しても同一賃金の考え方を持たなければなりません。

役職手当

役職の内容、責任範囲・程度に対して支給するのが一般的ですが、役職の内容、責任の範囲・程度が同一の場合、同一の役職手当を支給しなければなりません。

その他の手当

業務の危険度や作業環境に応じて支給される特殊作業手当や、精皆勤手当、時間外(深夜)割増率、特定の地域で働く補償として支給する地域手当なども正規と非正規労働者の間で同一労働・同一賃金の考え方があてはまります。ただし、それぞれの手当の性格や趣旨に照らして、同一として考えられるのかはしっかり見定める必要があります。各種手当について定義を曖昧にしておくと、合理的な説明に欠けてしまう恐れがありますので、定義を明確にしておく必要があります。

まとめ

働き方改革関連法の成立によって、同一労働同一賃金の実施がより厳しく企業に求められます。早めに準備して労働者の合意も取り付けた上で、適切な制度改正と対応を行いましょう。

2020年に向けての働き方改革 テレワーク

2020年に向けての働き方改革 テレワーク

テレワークが本格化?2020年の働き方改革

2020年に東京オリンピックが行われる関係で、オリンピック期間中の混雑緩和を目標に総務省を中心にテレワークの普及を目指す施策が行われております。
ただ来年に向けての予行練習をするだけではなく、イベントをきっかけに、柔軟な働き方の実現や企業のコスト削減など多くのメリットがあるテレワークを広く普及させるのが目的となっており。政府は、2012年に11.5%だった企業のテレワーク導入率を、2020年には12年度比で3倍にすることを目標に掲げています。

今一つ普及しないテレワーク

2018年の総務省通信利用動向調査によると、2017年時点でテレワーク導入企業は2割弱。さらに、その導入企業においてもテレワークを利用する従業員の割合は5%未満が最多と、あまり普及していない状況です。
過去にも普及の機会はあったと思われますが、仕組み作りや、導入時の整備などでなかなか進まないのが現状です。

テレワーク普及を妨げる要因

テレワークを行う際、勤務時間の管理や残業手当等の扱い、勤務評価基準などいままでのルールと異なる基準を用いらなければならない、新たな仕組みを作らなければならないという点であまり導入が進んでおりません。しかし、幅広い働き方の選択肢として、必要とされているのも事実です。
仕組みづくりや評価基準などの整備、ツールの導入など準備にかかるコストは安くはありません。しかし、導入してしっかり運用できればかかったコスト以上の成果を生み出す事も十分可能です。

テレワーク・デイズとは

そんな中政府が取り組んでいる、テレワーク・デイズとは来年のオリンピックの開会式からパラリンピック閉会式までと同じ期間が設定されていて、特別協力団体としてご参加いただける企業・団体にはテレワーク・デイズの期間に最低1週間、東京都内では2週間、100人以上にテレワークを実施するという取り組みです。
テレワーク・デイズは全国で展開しており、そのようなイベントを通すことによってテレワークの良さや課題が見えてくるはずです。

テレワークのメリット

社員の業務生産性が向上する

会社から距離を置くことにより、雑談や、不必要な会議、夜の接待などからも遠ざかることになり、妨害のない環境で必要な業務に集中して取り組むことができ、1日の業務量が向上します。

企業コストの削減効果

会社に必要な人員のほとんどがテレワーク社員となれば、それまでにかかっていた机やイスなどの備品、また光熱費を初めとした固定費部分が削減できます。中でもオフィスに関わる家賃や土地代は多くの削減が見込まれ、アメリカのあるソフトウェア開発企業では、従業員1人当たり年間10,000ドル(約110万円)の節約に成功したという報告もあります。

従業員コストの削減効果

企業全体に係るコストだけではなく、テレワークを導入することによって、交通費をはじめとした経費類が削減され、従業員1人に関わるコストも低減が見込まれます。

通勤時間の削減

通期時間の長さが従業員の健康に及ぼす影響には多数の報告があり、ストレスの増加、体重の増加、孤独感の醸成など、特にメンタルヘルスに対しての関連性が指摘されています。こうした従業員のストレス要因がテレワークによって低減できる可能性があります。

地方社員の採用

都心以外の従業員の採用など地域を選ばない採用活動や業務を行うことが出来ます。またふるさとテレワークなど地方創生などでもテレワークを用いた取り組みが行われており、今後地方を用いたテレワークの取り組みが進むと思われます。

従業員の健康状態の増強

通勤時間が短くなるということは、その分、従業員にとっては自分の時間が増えることになり、趣味に費やす時間や、家族と過ごす時間が増えるなど、メンタルヘルスにもプラスの効果が見込まれます。また、勤務地が固定されていたために、地元かかりつけの病院に行きにくいといいった通院に関する不満も解消され、健康状態の向上にも効果が期待されます。


このように単純に通勤の手間がはぶけるだけでなく、モチベーションの維持や長期的な経費の削減につながります。

まとめ

テレワークは導入の難しさから話題に上がっても中々導入が進みませんでした。しかし東京オリンピックをきっかけに、テレワークを推進する取り組みが活発になってきております。
テレワーククの導入に至っては導入したツールやシステム、サービスの活用が大きな鍵となります。また、数多くの支援ツールやサービスが提供されております。 他の企業のツールやサービスの導入事例などを参考に自社にあったツールの導入を進めてみてはいかがでしょうか?

2020年からの働き方改革の対応と罰則

2020年からの働き方改革の対応と罰則

施策の本格化に伴う対応

既に適用されているものも含め2020年以降も引き続き働き方改革の法案が実施されます。また中小企業の猶予期間も順次終了する為、対応を急がなければなりません。

有給休暇を5日以上取得できる体制の整備

2019年4月から適用された、有給休暇10日以上の保有者に対し、5日以上の付与の義務化が中小企業にとって一番インパクトが大きかったのではないでしょうか。
対応の事例として、個別指定方式、計画年休制度の二つがあります。

個別指定方式は、従業員ごとに消化日数が5日以上になっているかをチェックし、5日未満になってしまいそうな従業員について、会社が有給休暇取得日を指定する方法です。
例えば、就業規則で、「基準日から1年間の期間が終わる1か月前までに有給休暇が5日未満の従業員について会社が有給休暇を指定する」ことを定めて、実行していくというものです。個別の従業員ごとに管理の手間がかかりますが柔軟な運用が可能となります。

計画年休制度は、会社が従業員代表との労使協定により、各従業員の有給休暇のうち5日を超える部分について、あらかじめ日にちを決めることができる制度です。 法改正の前から存在する制度で、労働基準法39条6項に定められています。
計画年休制度で年5日以上の有給休暇を付与すれば、対象従業員について5日以上は有給を消化させていることになるため、今回の法改正による有給休暇取得日の指定義務の対象外になります。
計画年休制度の手続きとして労使協定が必要になります。従業員代表との話し合いを行い、労使協定を締結することが必要です。 また、計画年休制度の場合、労使協定で決めた有給休暇取得日は会社側の都合で変更することができず、休みにしても業務に支障が生じにくい日の見通しが立てづらく、後で日にちを変更する必要がでてくる可能性のある場合などには対応できません。

労働時間把握義務への対応

今回の改正で労働安全衛生法に「事業者は、労働者の労働時間の状況を把握しなければならない」という条文が追加されます。
これは、産業医の機能強化と同様に労働者の健康管理・維持が主たる目的となるため、労働者には管理監督者や裁量労働制適用者も含まれます。

労働時間はガイドラインで「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義づけられており、業務上義務づけられた研修や教育訓練の受講、業務に必要な学習、着替え等の時間も含まれます。また、終了打刻後退出までに行った業務があるなどの場合も正確な把握が義務化されるため、今後は始業・終業の打刻時間の正しい管理が求められます。
今回の改正では自己申告はほぼ認められていませんので、タイムカードやICカードなど客観的に労働時間を記録・管理する仕組みが必要になります。

同一労働同一賃金

2020年から中小企業の猶予期間が終了します。業務上の責任の範囲や人材活用の運用が異なる場合を除き、同じ業務を行っているのなら正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇に差をつけてはいけないことになります。

また、待遇について非正規雇用労働者は待遇差の内容や理由についての説明を求めることができるようになるため、企業は彼らの求めに応じて合理的根拠を説明しなければならなくなります。待遇差の内容・理由に関する説明については、行政による指導も行われます。

対応遅れの罰則

時間外労働の上限規制の罰則

時間外労働の上限規制に違反した会社に対しては、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則が定められました。

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、以下を超えることはできません。

  • 年720時間 以内
  • 休日を含む複数月平均80時間
  • 月100時間未満(休日を含む)

また、原則である月45時間を超えることができるのは、年間6か月までです。
罰則を受けた場合、懲役や罰金があるばかりでなく、程度によっては、厚生労働省によって企業名を公表されます。そうなってしまうと企業の取引などにも影響しかねません。

年次有給休暇の取得義務の罰則

年間10日以上の有給休暇を付与されている労働者に、年間最低5日の有給休暇を取得させなければならないことが、働き方改革法によって決定されました。
そして、この有給休暇の取得義務に違反した場合には従業員1人あたりにつき30万円以下の罰金という罰則が定められました。

罰則のない改正法条項

働き方改革法の中の同一労働同一賃金、高度プロフェッショナル制度は、いずれも違反に対する罰則はありません。
しかし、違反に対する制裁がないとはいえど、改正法を理解し対応していかなければ、トラブル発生時、訴訟など責任追及を受けるおそれがあります。

まとめ

2020年から適用開始になる働き方改革法案の対応、猶予期間の終了等で対応に追われている企業も多いと思います。 早めに準備して労働者の合意も取り付けた上で、適切な制度改正を行いましょう。

2020年からの働き方改革法案

2020年からの働き方改革法案

猶予期間終了による2020年問題

2019年から大企業を中心に適用が始まった働き方改革法案ですが、2020年4月からは適用範囲が中小企業に拡大され、さらに徹底されることになっています。
猶予期間があったにも関わらず、殆ど準備をしていない企業が出てくることが多かれ少なかれ予想されます。

中小企業の特例がなくなる

中小企業の猶予期間が終了し、一部適用除外されていた法案が適用されることになります。

例えば、2019年からすでに大企業には適用されていた月60時間を超える時間外労働における割増賃金率50%以上について、中小企業への猶予措置が廃止され、すべての企業が対象となります。また時間外労働の上限について月45時間・年360時間を原則とし、臨時的・特別な事情があるという場合でも年720時間・休日労働含む単月100時間が限度となります。

働き方改革の手始めは、適切な勤怠管理

とはいえ、働き方改革に向けて何から始めれば良いのか、わからない方も多いかと思います。しかしもう先延ばしはできません。
まず、従業員の働き方を正しく把握することから始めましょう。具体的には、正しい形で勤怠を管理し、実態を知ることです。勤怠データから、職場の問題点や課題が明らかになります。例えば、長時間労働が恒常化する人や部署が特定されることで、より効果的な取組みの検討ができるようになります。

2020年から始まる施策

小企業の猶予期間が終了し本格化する取り組みが以下になります。

残業時間の罰則付き上限規制

労働者の過労死等を防ぐため、残業時間を原則月45時間かつ年360時間以内、繁忙期であっても月100時間未満、年720時間以内にするなどの上限が設けられ、これを超えると刑事罰の適用もあります。

同一労働同一賃金

同一労働同一賃金とは、同じ仕事に就いている限り、正規雇用労働者であるか、非正規雇用労働者であるかを問わず、同一の賃金を支給するという考え方です。 正規・非正規の不合理な格差をなくすため、判例で認められてきた「同一労働・同一賃金の原則」が法文化されます。

様々な事情により、非正規雇用を選択する労働者が増加している中、政府はいわゆる働き方改革のひとつとして、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を解消し、多様な働き方を選択できる社会にすることを目指します。

2020年以降の施策

割増賃金率の中小企業猶予措置廃止

中小企業には適用が猶予されていた、月の残業時間が60時間を超えた場合、割増賃金の割増率を50%以上にしなければならないという制度が2023年4月に全ての規模の企業に適用されるようになります。

同一労働同一賃金の中小企業猶予措置廃止

同一労働同一賃金の中小企業猶予措置は2021年までとなっており、2021年4月に全ての規模の企業に適用されるようになります。

時間外労働の削減が急務

まず、早急に取り組まなければならないのは、時間外労働の削減です。

法律で定められた上限を超える残業は絶対的に禁止となります。そのため現状、基準を超える残業が発生している企業においては、業務の効率化や負荷の偏りの見直しなどを行い、まずは、残業時間の絶対量の削減に注力すべきです。

また労働時間の把握義務についても、しっかりと取り組んでいかなければなりません。
管理監督者や裁量労働制の労働者を含め、残業代の計算のためではなく、健康管理や過重労働防止の観点から、労働時間管理が義務化されます。

それぞれの会社に合ったやり方で、管理監督者や裁量労働制で働く従業員も含めた労働時間の管理体制にする必要がありますが、規模が大きく、対象者にも様々な類型がある企業は、早急な対応が必要です。

同一労働同一賃金の対応

同一労働同一賃金の考え方は、正社員と非正社員の職務内容が同じであれば同じ賃金を支給し、 違いがある場合にはその違いに応じた賃金の支給をしなければならないというものです。
まずは、正社員と非正社員の職務内容を明確にする必要があります。
待遇の違いについて明確になっていないのであれば、すべて可視化するなどして、全体で共有し把握する必要があります。

まとめ

2020年から働き方改革法案の実施が本格化しより厳しく企業に求められることになります。企業の人事全てに影響する法改正ですので、早めに準備して労働者の合意も取り付けた上で、適切な制度改正を行いましょう。

固定残業代制の問題点

固定残業代制の問題点

悪用が多い制度?

固定残業代制とは、残業代があらかじめ固定給に含まれている労働契約のことを言います。 会社側からしてみれば、固定残業代で残業代は支払っているという認識になっているでしょうが、従業員からしてみれば「いくら残業しても給料は変わらない」そのようなイメージが固定残業代にはあるのではないでしょうか。

超過分の残業代は支払わなければ違法となる

固定残業代制は、あくまで賃金計算方法の一つに過ぎず、会社の割増賃金支払義務を免除するようなものではありません。
そのため、仮に労働者の実労働時間に応じて支払うべき割増賃金額がみなし残業代を超える場合には、当然、会社は労働基準法の規定に基づいて、超過分の割増賃金の精算が必要です。

よく「固定残業代制だからいくら働いても残業代は出ない。」「残業代は固定残業代制で支払い済みである。」という説明がなされていることがあります。
しかし、この説明は誤っています。したがって、もしも会社がそのような説明をして、割増賃金の支払を一切していないという場合は、このような超過分の割増賃金が精算されておらず、未払状態となっている可能性があります。

固定残業代制で起きるトラブル

企業側、働く側の理解度が不十分なため、またわざと悪用する事例が多くあり固定残業代制でのトラブルは以下のものがあります。

従業員の労働時間の管理を怠る企業がある

あらかじめ残業代を払う、みなし残業のシステムがあるからと、従業員がどのくらい残業しているか把握していない企業もあります。

みなし残業代分以上の残業代を支払わない企業が存在する

例えば、月に20時間分のみなし残業を支払っている場合、20時間を越えた際は超えた分の残業代を別途支払う必要があります。

定時退社をしづらい社風

残業代をあらかじめ払っているのだからと、暗黙の了解で定時に帰りづらい雰囲気の社風になっている企業もあります。固定残業代制でも、仕事を効率的にこなし、定時に退社することに何も問題はありません。

基本給を引き下げている

固定残業代制の金額を明確にした結果、基本給がその地域で定められた最低賃金を下回るのは違法です。

基本給に注意

みなし残業代制度の会社のメリットの1つとして、固定支給の残業代を賃金に上乗せすることで、労働条件や待遇をよく見せることができるということがあります。
きちんと求人の際に固定支給の残業代を含む金額であることを適切に明示していれば、これ自体は特に不当でも違法でもありません。

逆に、そのような明示を適切に行わない求人行為は、違法となる可能性があります。

厚生労働省では、若者雇用促進法の改正に伴い、


「固定残業代(名称のいかんにかかわらず、一定時間分の時間外労働、休日労働及び深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金)を採用する場合は、固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法、固定残業代を除外した基本給の額、固定残業時間を超える時間外労働、休日労働及び深夜労働分についての割増賃金を追加で支払うことなどを明示すること。」と規定しております。


このように高待遇だと思っていたら、実際は相当の割増賃金を含む金額であり基本給は非常に低かったということもあります。

まとめ

固定残業代制はあまり良いイメージがないのは事実ですが、時間内に業務を終えれば、残業代込の給与が保証される、早く仕事を終わらせた方が得になる制度でもありますので、一概に労働者に不利な制度というわけでもありません。

従業員側も企業側もこのシステムを充分理解し、お互いにとってメリットとなり、効率的に業績を上げられる環境を整えることに務めた方が建設的です。

固定残業代制とは

固定残業代制とは

残業時間にかかわらず一定の残業代

固定残業代制とは、企業が一定時間の残業を想定し、あらかじめ月給に残業代を固定で記載し、残業時間を計算せず固定分の残業代を支払うという制度です。一般的には「みなし残業」とも言われています。
一方、残業が想定する時間を超えてしまった場合は、別途残業代が支払われないといけません。

明示義務

職業安定法と指針の改正により、平成30年1月から、固定残業代制による求人を行う際の募集要項には、

  • 固定残業代の時間数及び金額
  • 固定残業代を除外した基本給の額
  • みなし残業時間を超えた残業に対して残業代を追加で支払うこと

などを明示することが義務付けられました。ハローワーク等に求人申込みをする場合だけでなく、自社HPなどで労働者を募集する場合なども明示が求められます。

固定残業代制の種類

事業所内労働

営業職などで一日中顧客回りなどをしている場合、労働時間を正確にすることができません。 この為固定残業代制を採用することができます。

裁量労働制

研究者やソフトの製作者など仕事の進み具合によっては激務になることもあるが、仕事がひと段落するとまとまった休みが取れるような仕事の場合に用いられる制度です。
このような業務はいちいち指示を受けて働くよりも、労働者の判断で仕事を進めたほうが合理的とされ、固定残業代制によって、働いた時間をみなすことが可能です。

しかし、裁量労働の場合、労働時間の配分は労働者に任せられているにもかかわらず、実際は会社が管理していて、「残業しても残業代は出ないのに、仕事が早く終わったりしても休めない」状況となってしまい、サービス残業の温床となっていると言われています。

固定残業代制の違法性は

労働基準法に則った就業規則なら違法ではない

たまに聞く裁量労働でも事業所外労働でもないのに、企業がみ固定残業代制を採用しているケース、これは違法なのでしょうか。
労働基準法は労働環境を守る最低限の法律で、労働基準法に定められた内容を満たしているのならば、その企業独自で就業規則を決めることは可能で、必ずしも違法とはいえません。 定額の残業代が労働基準法で定められた割増賃金以上の額であれば、問題ないという裁判の判例もあります。

残業代が定額の残業手当を上回る場合は請求の対象

しかし、みなし残業制度として定額の残業代が支払われていても、実際に行われた残業が多く、残業代が定額の残業手当を上回る場合に、上回った部分については、企業は別途残業代を支払わなくてはならず、実際に行われた残業が少なくても、定額の残業代は支払わなくてはなりません。

また、残業が多かった月に定額の残業代を超えた分を支払わず、残業が少なかった月に支払われたものとすることもできません。
しかし、固定残業代分を超える残業時間があっても、超えた部分に関しては支払われず、サービス残業となるケースが多く、 残業代の未払いの一つとして問題になっています。

違法な固定残業代の運用事例

固定残業代の金額・時間が明確に記載されていない

固定残業代でよくある内容は、曖昧な記載をされているということです。

  • 月給22万円(みなし残業手当42時間分含む)+交通費(上限3万円)
  • 月給21万3750円(一律残業手当含む)

例えばこのようないくら分が残業代なのか、残業代の時間も金額も全く分からない求人の場合違法となります。

こちらは、求人票だけではなく就業規則にも言えることです。会社で固定残業代制を取り入れていて、その金額や時間がはっきりしていないようであれば、固定残業代は無効になります。

一定時間に満たないと固定残業代が支払われない

ブラック企業での過労死が問題にもなりましたが、例えば月に80時間以上残業しないと、固定残業代が払われず給料が下がってしまうような労働体制をとっている企業もありました。
固定残業代は、例え決めてある残業時間に達成しなかったとしても一律で支払わなくてはいけません。

超過した残業代が支払われない

固定残業代の問題でよくあるのがこの内容です。例えば、残業手当5万円、月45時間分という形で固定残業代を設定した上で、 月に45時間以上働いたのであればその分の追加の残業代を支払う義務があります。
もし、45時間を超えているのに「うちは、固定残業代だから残業代は出ないよ」という姿勢の企業ならば完全に違法です。

最低賃金を下回っている

厚生労働省が発表している平成30年の最低賃金の全国平均は一時間あたり874円になっています。 時間外労働の計算方法は×1.25。例として、時間外労働の平均最低賃金は1,092円/時間になります。
例えば「残業手当3万円(月45時間分)を含む」と、時間も金額も明確に設定されていたとします。 しかし、時給に換算してみると666円にしかなりません。この料金設定だと違法になり、今までの過不足を請求することができます。

雇用側が固定残業代を周知していない

固定残業代制を取り入れる企業は、労働者に周知せず給料形態に固定残業代制を含むということは許されません。基本的に固定残業代を今までの固定給に上乗せするような企業はありません。
今までの基本給は変えず、その一部を固定残業代にする企業がほとんどです。例えば、今までの基本給が25万円だったとします。 それを基本給20万円にして、5万円を固定残業代にするので、実質貰える金額は変わらない。という説明を労働者にする義務があります。

まとめ

固定残業代制は悪用されるケースが多く、あまり良いイメージを持っていない人が大半かと思われます。しかし、現在固定残業代制を取り入れている企業が多いのも事実です。
一言に固定残業代制と言っても運用に問題なければ適法な為、正しい知識を身につけておくことが重要となります。
また今後、働き方改革関連法の成立によって労働時間の把握・管理が法律上義務化されることなどとも相まって、固定残業代に対する今後指導強化されると考えられます。