残業時間の上限規制のメリット

残業時間の上限規制のメリット

長時間労働の是正

働き方改革の大きな柱のひとつが「長時間労働の是正」です。
これまでも残業時間の上限規制はあったものの、企業が労働組合と合意した特別条項付きの36協定さえあれば、残業時間数自体は際限なく増やすことができました。 この抜け穴を防ぎ、罰則付きの法律で残業時間の上限を規制することが、2018年6月29日の参院本会議にて可決、成立となりました。 大企業は2019年4月1日から、中小企業は2020年4月1日から施行されます。

残業時間の上限規制

36協定に関する厚生労働省告示では、「原則月45時間以内かつ年間360時間以内」が残業時間の上限とされていましたが、法的な強制力はなく、労使合意による「特別条項」を設ける(「特別条項付36協定」)ことで、実際には青天井(無制限)の残業が可能となっていました。 今回の働き方改革関連法による労働基準法の改正では、残業時間について何段階かのフェーズで上限規制を課しています。 もし企業がこの上限規制に違反した場合、罰則として、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることになります。

残業規制のメリット

企業にとってもメリットがある

  • 自分の時間確保
  • 家族サービスができる
  • 仕事のパフォーマンスの向上
  • 無駄な打ち合わせが減る
  • 人件費が削減できる

残業時間を規制することによりプライベートに時間を割けるようになる、時間内に仕事を行うようメリハリがつくなどのメリットがあります。企業側も残業による残業代、光熱費などの諸経費を削減することができます。

今後企業が求められる対応

残業時間の規制については、まず、現行法による残業規制を正しく守ることができているかどうかを確認することが必要です。 それは、改正法による残業規制は、現行法による残業規制が守られていることが大前提となっているからです。一部の従業員の残業時間が多すぎる場合は、他の従業員に手伝わせてその従業員の残業時間を減らしたり、あるいは新しく人を採用したり、テクノロジーも駆使した業務効率化をして、改正法による残業規制をクリアできる体制を今から整えておくことが必要です。

外国人労働者活用の事例

外国人労働者活用の事例

外国人労働者の活用成功事例

製造業での事例

自社にとって海外進出は必須であるという雰囲気を社長自ら積極的に発信し、グローバル化の意識をまず社内に浸透させることで、外国人労働者の受け入れ態勢を準備して行きました。採用にあたっては外国人留学生と企業とのマッチングサイトや合同会社説明会、就活フェアなど様々なチャンスを活用し、社長が率先して採用を進めました。同時に、日本人社員に対しても外国人講師による英語教室を開催することで、外国人と日本人社員の相互理解を深める施策に注力しました。その結果、外国人だけでなく日本人社員にも意欲向上がしました。

販売業での事例

労働力不足に悩むコンビニ業界でも外国人労働者採用は積極的に進められています。ある大手コンビニでは新卒採用の1割を外国人留学生枠として設定。留学生は日本に興味を持つ人が多いため、日本の文化を学べることから意欲を持って働けると好評で、従業員不足解消につながっています。また別のコンビニでは、これまで各加盟店に任せてきた外国人従業員の研修を本部主導で行うように変更。従業員だけでなく加盟店オーナーも研修に参加することで、外国人育成のノウハウを効果的に身につけられるように指導を行っております。

昇進を明確化することによって定着率を上げた事例

外国人労働者はどう働ければ昇進したり、評価されたりするのかという点をとても重視する。  グローバルトラストネットワークスの場合、外国人労働者が納得して働ける仕組みを導入している。当初、外国人労働者の離職率が50%を超えることに悩み、定着してもらうために人事評価の透明性を高める評価制度を導入した。チームワークや業務改善への貢献など28項目について、無作為で選んだ8人が評価をする。評価をポイントに換算し、100ポイント貯まれば、5000円昇給するように仕組みを考え、結果離職率は5%にまで下がった。社員の7割が外国人となり、13カ国出身者が働く職場になった。公平な評価を導入することで、外国人社員のやる気を引き出しました。

自社のスタイルに合わせた外国人人材の活用を

日本企業が持つ働き方への価値観と、外国人の方の働き方への意識が乖離しているケースは少なくありません。 労働力問題の解決を国外に頼っていく場合、そのギャップを埋めていく必要があります。もちろん、企業ごとにも文化が存在し、立ちはだかる課題は異なるでしょう。

外国人労働者の雇用傾向

外国人労働者を雇用する事業所ともに、製造業が最も多くなっていますが、近年では減少傾向にあります。一方で宿泊業、飲食サービス業、卸売業、小売業、建設業が増加してきています。 特に、日本に訪れる外国人観光客のインバウンド需要が拡大しており、そういった外国人観光客への対応を高めるために外国人の採用をしている企業が増えてきています。

外国人雇用の支援体制

外国人労働者を雇用する場合、前述のような雇用状況届け出や労働者本人状況の確認、雇用管理の指針の順守など、さまざまな手続きやルールに伴って実施をする必要があります。 日本人の労働者を雇う場合とは異なる内容があるため、国では外国人雇用を行う事業主向けのサポート体制を敷いています。

外国人雇用サービスセンター

外国人雇用サービスセンターは、東京、名古屋、大阪、福岡といった各拠点に設けられた外国人留学生向けの支援センターです。 具体的なサポート内容としては、留学生向けの就職ガイダンスや大学訪問ガイダンス、留学生対象のインターンシップ、就職説明会の実施、職業相談や職業紹介などが行われてます。

ハローワーク

ハローワークでは、外国人労働者の雇用状況届け出に関する業務を行っていることから、届け出書類の取り寄せや記入例などのアドバイスを実施しています。 また、主要都道府県に新卒応援ハローワークを設けており、その中にある「留学生コーナー」では専門的・技術的分野に該当する外国人や留学生の就職支援活動も行っています。

外国人雇用管理アドバイザー

外国人雇用管理アドバイザーは、外国人労働者を雇うにあたっての雇用管理にまつわるさまざまな相談を受けつける機関です。事業所ごとに雇用管理に関する問題点を洗い出し、改善案の提示を受けることができます。 アドバイザーの支援を希望する場合は、近隣のハローワークに依頼することで派遣を受けることが可能となります。

システム化によって業務をスムーズに

外国人労働者と仕事をする際どうしても言葉の受け答えや想定外の行動で、業務が思うようにいかない場合があります。そこでシステムを用いてその日ごとの予定、業務内容を入力、可視化することによってどのような行動をすれば良いのかなどの適切な指示を行うことができます。外国人労働者の指示による負担を軽減することができます

外国人労働者活用に関する補助金・助成金

外国人労働者活用に関する補助金・助成金

外国人雇用に関する助成金

中小企業緊急雇用安定助成金

対象となる企業は中小企業であることは名前の通りですが、直近の3カ月、もしくは前年の同じ時期に比べて生産量が減少していることが支給の対象となります。このケースでは休業手当や出向手当として5分の4が支給されるだけでなく、教育訓練を行う経費として1日6000円がもらえます。会社を立て直すために外国人労働者の労働力を頼る際に積極的な活用が求められるということです。

雇用調整助成金

もう1つは雇用調整助成金ですが、今度は大企業を対象としたものです。こちらも生産量が減少していることが条件となっていきますが、重要なのは生産量の減り方です。この場合は5%以上の減少が条件となり、それによって支給がなされます。もらえるお金は、休業手当や出向手当にあたるお金の2分の1、そして教育訓練の経費として1日1200円が支給される形です。中小企業向けのものと比べるとやや小規模な印象を与えますが、規模が全く異なることもあって、この程度のものでも問題はありません。

外国人雇用にも適用できる助成金

日本人労働者を本来対象にしたものでも外国人労働者に対して適用することは可能です。 例えばトライアル雇用奨励金は要件さえ満たせば1人当たり最大4万円を3カ月にわたって支給してもらえます。 条件としては外国人労働者が週に20時間以上働くことや、半年以上にわたって雇用がなされることが条件となっています。

助成金を活用する際の注意点

外国人を採用する際に最も気を付けなければいけないのは不法就労です。 例えば、採用した外国人が在留資格外の活動を行った場合などがそれに当たります。採用した外国人が不法就労の対象となれば、雇用主も一緒に罪に問われます。外国人を採用する際には、在留資格やパスポートなどをきちんとチェックして、就業後の指導も丁寧に行いましょう。 また、助成金の対象期間中に対象の外国人スタッフが休業しなければならない時は助成金の申請を調整しなければなりません。

外国人労働者活用のポイント

外国人労働者活用のポイント

外国人労働者を受け入れる際にまず確認すること

在留カードの内容確認

外国人労働者を受け入れるとなった場合、「就労ができる在留資格」を取得していることが大前提となります。在留期間がいつまでかを確認し、雇用期間と照らし合わせることも必要です。 もし、この工程を踏まずに、就労ができない外国人を雇用した場合は、不法労働助長罪の対象となり、雇用している企業も罰則の対象となります。
また、外国人労働者を受け入れた場合、ハローワークに必ず届出をしなければなりません。もし届出をしなかったり、虚偽の申告をした場合は、刑罰の対象となります。届出は外国人労働者が離職した場合も必要となります。 また、きちんと届出をして外国人労働者を受け入れた場合、日本人労働者と同様に、厚生労働省の助成金を受けられるメリットもあります。

受け入れ体制整備

会社の求める業務における能力基準や日本語力を明確化する

これは、外国人を採用する段階で最も重要になってくる要素です。 特に日本語能力に関しては、周囲とのコミュニーケーションが取れる程度の日本語力でいいのか、それとも商談等の場できちんと交渉できる程度の日本語能力まで求めるのかで、採用に掛かる労力が大きく変わってくる可能性があります。 また、日本語能力の見極めをおろそかにして採用してしまうと、もし、配置された仕事に適性がないと判断せれた場合であっても、配置転換するにも適所が見つからず結局は解雇するしかないという結果にもなりかねません。 こういったことからも、採用後揉めないために、語学力を含めた能力をどの程度まで求めるのかという基準をしっかり明確に作っておくことは不可欠なわけです。

法律上の必須事項

労災事故予防のために、雇入れ時に安全衛生教育を実施することが法律で義務化されています。 ただ、外国人労働者に対しては、教育をしても理解度がどれくらいあるのかということが懸念されます。 本人が理解できる言語での教材、レジュメで教育してあげれるような体制を作る場合があります。 大事なことは会社が理解される努力を可能な限り行い、本人からも理解している旨のフィードバックがあることです。 これは、安全衛生教育だけに限らず、業務のマニュアルも本人がわかる言語、もしくはイラスト対応してあげるなどのシステムを構築してあげることが大切です。また、これは雇入れ時の労働条件通知にも同じことが言えます。

労基法15条で従業員を雇入れた際は、書面による労働条件の通知が事業主に義務付けられています。 法律では特に“本人の母国語で”というところまでは義務付けられてはいませんが、ここは今後のトラブル発生の予防のために、本人の母国語で明示する努力はしておいた方がよいと思います。労働条件の要になってくるような部分や、服務規律などで、どうしても遵守して欲しい項目等からプライオリティーをつけて対応する等していく必要はがあります。

制度の有効活用

自治体によっては外国人労働者に向けた制度、雇用に関する制度が検討、運用されております。外国人労働者の雇用を行う際に利用することによってより優秀な人材を採用することができます。

高度人材ポイント制

高度人材ポイント制は、国内で働く研究者や経営者のうち、高度人材と認められた外国人に在留期間や永住許可要件の緩和などの優遇措置を与える制度です。 優秀な外国人の研究者や経営者を雇用する際には、高度人材ポイント制による優遇装置が受けられる可能性があります。

対象となる活動分野

  • 高度学術研究活動「高度専門職1号(イ)」は、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う研究、研究の指導又は教育をする活動」とされ、大学などにおける研究・教育活動や民間企業における研究活動が認められます。
  • 高度専門・技術活動「高度専門職1号(ロ)」は、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動」とされ、企業で技術者として製品開発業務やセールス・プロモーションなどの企画立案業務を行う活動が認められます。
  • 高度経営・管理活動「高度専門職1号(ハ)」は、「本邦の公私の機関において事業の経営を行い又は管理に従事する活動」が認められます。

出入国管理上の優遇措置

  • 複合的な在留活動の許容
  • 在留期間「5年」の付与
  • 在留歴に係る永住許可要件の緩和
  • 配偶者の就労
  • 一定の条件の下での親の帯同
  • 一定の条件の下での家事使用人の帯同
  • 入国・在留手続きの優先処理

認定要件

認定要件は、ポイント合計が70点を超えることに加えて、高度専門・技術分野及び高度経営・管理部門においては年収300万円以上であることです。 年収が300万円に達しない場合は、ポイントの合計が70点を超えていたとしても高度人材と認定されません。

外国人労働者活用のデメリット

外国人労働者活用のデメリット

文化の違いのデメリット

文化の違い

日本と外国では文化や常識が大きく違います。 それはビジネスシーンでも例外ではなく、文化や習慣の違いはプラスに働くこともあればマイナスに働く事もあります。 例えば、日本人同士なら可能な「空気」を介したコミュニケーションも外国人とは難しいです。 そう言ったことも理解し、配慮をした上で、日本の文化も含めて指導する必要があります。

仕事に対する意識の違い

日本人であれば、その日、その週に終わらせなければいけない仕事があれば、残業したり家に持ち帰ってでも終わらせる風習がありますが、 外国人は時間にルーズな面もあったり、仕事以上にプライベートを大切にする人も少なくないです。 労働時間が終われば退社する人、その日のタスクが終わったのだからそれ以外の事をする必要が無いと考える人もいます。 そう言った仕事意識の違いからくる弊害が社内で完結するならまだいいですが、取引先などの信頼を失ってしまう可能性もあります。 多くの場合、外国人労働者は仕事に対する意欲も高く、日本に合わせて変化できる柔軟さも持ち合わせていますが、 場合によっては、外国人労働者の仕事意識を理解する努力、日本の労働観を知ってもらう努力も必要になってくるでしょう。

言語

外国人労働者の中には、日本語を高いレベルで身につけている人もいれば、ほとんど話せない人もいます。 いずれにしてもネイティブではありませんので、言語の違いからくるデメリットは考えられます。 言語の違いによる弊害が少ない業種だとしても、社内での情報共有など、外国人労働者が理解できる言語での伝達が必要になります。 場合によっては外国人労働者が孤立してしまい、本来のスキルが引き出せないケースもあります。

雇用に関するトラブル等

労働者管理

外国人労働者を採用する上での書類手続きや労務者管理が複雑になります。日本での滞在資格や就労資格があるかどうか、その職種に就く資格があるのかどうかの確認が必要です。さらに、外国人労働者を一定数以上雇用するときには、管理責任者を選定しなくてはなりません。また外国人労働者を受け入れる社内体制を導入し、整備するまで、時間と手間がかかります。また知らずに不法就労者や就労できない在留資格を所持している人材を受入れてしまった場合、受入れた企業にも責任が問われる可能性があります。

差別的待遇の禁止

「外国人労働者=安価な労働力」という見方は根強いようですが、賃金や労働時間等の差別は禁止されています。

社会的な影響

外国人労働者が多数浸透することにより日本人の雇用機会が減少する可能性が指摘されています。また地域社会における文化・習慣の違いに基づく摩擦の発生、不法就労、犯罪の増加も懸念されています。

受け入れは慎重に

外国人労働者の受け入れに関しては、やるべきことは多々ありますし、受け入れ後も多くのことが必要になります。外国人労働者の受け入れは日本人を採用することとは異なり気をつけるべきポイントが多くあります。社内の状況を見て本当に外国人労働者を受け入れる必要があるのか慎重に判断する必要があります。

外国人労働者活用のメリット

外国人労働者活用のメリット

増えている外国人労働者

日本の少子高齢化は歯止めがかからず、労働者人口は減っていくばかりで、改善する気配がありません。「労働力として移民政策を推進するべき」という意見も多く、実際に企業は外国人労働者を増やす傾向にあります。

外国人の採用によるメリット

グローバル化による多言語対応

自国の言語はもちろん、日本語や英語も話せる方もいて、3ヶ国語以上のマルチリンガルも珍しくありません。 そのため、外国人のお客様の接客、翻訳・通訳など、さまざまな場面で活躍が期待できます。また国内市場の縮小を見据えた海外進出への足掛かりにも期待ができます。

優秀な若手人材の確保

日本では採用が苦戦しがちな「若手の優秀人材」を海外から採用することができます。特に新卒のエンジニアに関しては、海外から採用している企業が増えてきています。

日本人を採用するより人件費を削減しやすい

発展途上国の場合自国で働くよりも、給与面での待遇が良いということで、日本に仕事を求めてやってくる場合があります。 このような外国人労働者は、言語能力の不足などの理由により、比較的低賃金で採用できるというメリットがあります。 もちろん、法律で定められた最低賃金を下回るような水準にすることは禁止されています。外国人労働者と使用者との話し合いにおいて、法律の範囲内で決定する必要があります。

外国人労働者受け入れの注意点

外国人労働者の受け入れにあたって気を付けなければならないポイントも多々あります。

異文化と民族性を理解する

気質や常識は世界共通ではありません。

差別的待遇の禁止

「外国人労働者=安価な労働力」という見方は根強いようですが、賃金や労働時間等の差別は禁止されています。

労務管理の知識が必要

基本的なことですが、日本での滞在資格や就労資格があるかどうか、その職種に就く資格があるのかどうかの確認が必要です。さらに、外国人労働者を一定数以上雇用するときには、管理責任者を選定しなくてはなりません。

外国人労働者を雇用するメリットは、ただ単に日本人労働者より安い賃金で多くの労働者を確保できるほかに、労働意欲のある外国人労働者を活用することで日本人だけの企業に起こってしまいがちな業績停滞の打破、そして日本人だけでは到底出てこないようなアイデアなどを期待することができます。 さまざまなメリットがある一方で、デメリットにも目を向ける必要があります、外国人雇用の際には、事前に専門家に相談しながらトラブルが起きないよう準備を進めておく必要があるでしょう。

高齢者活用に関する補助金・助成金

高齢者活用に関する補助金・助成金

高齢者活用に関する補助金・助成金

老齢年金の受給開始年齢が引き上げられるなど、高齢者にとって定年後の再就職は死活問題になっていますが、簡単に就職できるほど企業が門戸を開いている状況でもありません。 そこで政府では、60歳以上の高齢者の雇用を促進するための施策として、数々の助成金を用意しています。

高年齢者雇用開発特別奨励金

入社日の満年齢が65歳以上の離職者をハローワーク等の紹介により、1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者として雇い入れる経営者に対して助成されます。(1年以上継続して雇用することが条件です。) 定年を迎えたような労働者が活躍できるよう、労働市場を拡げる動きを政府が応援するために作られた制度です。

支給要件

  • 対象従業員の雇入れ日の前後6か月間に、事業主の都合による解雇をしていないこと。
  • 労働者名簿、賃金台帳、出勤簿等を法の定めに則って整備・保管していること。
  • ハローワーク、民間職業紹介事業者等を経由し、紹介されたうえで雇用されること。
  • 1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者として雇い入れられること。

支給金額

1週間の所定労働時間が週20時間~週30時間未満の労働者の場合 約50万円(1年に2回半額支給)
1週間の所定労働時間が週30時間以上の労働者の場合約70万円(1年に2回半額支給)となっています。

65歳超雇用推進助成金

少なくとも65歳まで希望者全員が安心して働ける雇用基盤を早期に整備するとともに、定年70歳に向け65歳以上への定年引き上げ、定年の定めの廃止、または66歳以上までの継続雇用制度の導入を行う企業に対して、助成金が支給される制度です。この助成は雇用内容によって三つのコースがあります。要件の確認や相談、申請は独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構の各都道府県支部が窓口となっています。

65歳超継続雇用促進コース

「A.65歳以上への定年引き上げ」「B.定年の定めの廃止」「C.希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入」のいずれかを採用した事業主に対して助成を行うコースです。要件として

  • 制度を規定した際に経費を要した事業主であること。
  • 労制度を規定した労働協約または就業規則を整備している事業主であること。
  • 制度の実施日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、高年齢者雇用安定法第8条または第9条第1項の規定と異なる定めをしていないこと。
  • 支給申請日の前日において、当該事業主に1年以上継続して雇用されている者であって60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いること。
  • 高齢者雇用推進員の選任および年齢者雇用管理に関する措置を一つ以上実施している事業主であること。(教育訓練の実施、作業施設・方法の改善、健康管理、安全衛生の配慮、処遇の改善など)

高年齢者雇用環境整備支援コース

高齢者向けの機械設備の導入や雇用管理制度の整備を行う場合に支給されるコースです。

1.機械設備・作業方法・作業環境の導入や改善を行う場合

中小企業であればかかった費用の60%が助成されます。

2.高齢者の職務に応じて賃金・能力の評価制度、短時間勤務制度などを導入した場合

1年以上の雇用で60歳以上の雇用保険被保険者のうち「措置により雇用環境整備計画の終了日翌日から6カ月以上雇用されている人数×28.5万円」が助成されます。 これらは、1と2の金額を比較して少ない方の金額が支給となります。また、企業規模問わず総額で1,000万円が上限となります。

高年齢者無期雇用転換コース

50歳以上で定年年齢未満の有期契約従業員を無期雇用に転換した場合に支給されるコースです。

申請を行うためには

「特定求職者雇用開発助成金」などはハローワークより案内をしてもらえますが、提出する出勤簿、賃金台帳、雇用契約書等についてはそれぞれの整合性など法律に沿った審査が入ります。 法令に沿っていなければ、最悪不支給になるケースもあります。
また、65歳超雇用推進助成金は、審査を行うのが各都道府県労働局ではなく、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構という機関になっています。こちらは労働局に提出する助成金申請書よりも数段チェックが厳しいとのです。 確実な申請のためには労働基準法を始めとした労働法令をクリアする必要がありますので、社労士等に相談する必要があります。

高齢者活用に関する事例

高齢者活用に関する事例

再雇用事例

65歳以上の再雇用に関しては、一部企業では以前から行われていますが、年齢の問題により多くの企業はなかなか高齢者の活用に関してはあまり積極的ではありませんでした。しかし人材不足が本格化してきた今高齢者の再雇用の動き、定年の延長などが少しずつ動き始めています。

ダイキンの場合

ダイキンでは2001年時点で65歳まで希望者全員を再雇用する制度を導入、勤務形態は、それぞれの勤務の必要性と本人希望を勘案し、個別に決めていきます。その際、体力面の衰えをはじめ、家庭の関係で介護などといった個人の事情を考慮して、フルタイム、短時間、隔日、登録型の4つの勤務形態から選択する形での形態で再雇用を行っています

介護業での事例

人材不足が叫ばれている業界では年齢問わず採用しているところもあり、高齢者雇用の動きが活発になっております。介護業界は常に人材不足の状態が続いています。実際に、60歳を過ぎてから訪問ヘルパーとして活躍する人も少なくありません。また高齢者同士なので入所者とのトラブルの発生率も抑制することが期待できます。

地域サービス業・観光業の事例

地方の飲食店や観光業では利用者や客層に高齢者が多いため、同じ目線を持つ高齢者を採用することによって、高齢者ユーザーに向けたサービスを企画するなど、地域の活発化に期待ができます。

高齢者雇用促進の動き

高年齢者雇用開発コンテスト

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が厚生労働省との共催で毎年開催している「高年齢者雇用開発コンテスト」では、職場環境の改善や新職場の創設により、生涯現役で働ける職場を実践している事例や、高齢者が身につけた能力を十分に発揮できる職場環境を創意工夫して実現した事例などを募集し、優れた取組みを表彰しています。このような形で高齢者活用事例などを広めることにより高齢者の活用の推進を行っております。

高齢者活用のヒント

高齢者ならではの仕事を用意する

現在、高齢者の主な職務領域は、共通事務や庶務などを代表とする単純作業が大半を占めています。定年前に従事していた業務でその一部を引き続き担当する、専門的な知識や経験を生かした業務を行う、といったケースもありますが、量的にはごく限られたものに過ぎません。

増加する高齢者ユーザーへのサービス

企業にとって社会の高齢化はエンドユーザーの高齢化も意味しています。営業職や接客の現場などでは、高齢者ユーザーへの対応はもちろん、同世代の視点での商品開発やサービスの向上、サポートなどが期待できます。

知識や経験を生かした品質管理

研究・開発といった現場では、長年の従事で培った知識を活用することで既存製品の保守や品質管理といった分野での活躍も期待できます。

セカンドキャリアを意識したUターン・Iターン

若者の仕事に対する価値観が変化し、転勤が好まれなくなってきていることから、新卒・中途採用の現場でも積極的に実施されている地方採用・現地採用ですが、生まれ育った地元や企業が事業展開している地域への「Uターン・Iターン」といった地方勤務も、高齢者の職務領域として挙げられます。定年退職後は田舎でゆったり仕事をしながら暮らしたいと考えている高齢者も多く、セカンドキャリア・サポートの観点からも有効だと考えられます。

特に近年では「地方創生」がキーワードに挙げられる機会も多く、助成金を受けることができたり積極的に支援する自治体も出てきたりするなど、企業としても取り組みやすくなっていると言えます。

高齢者活用のポイント

高齢者活用のポイント

再雇用のポイント

モチベーションを理解する

労働意欲のある高齢者と言っても、年金受給年齢に達するまでの生活費や孫にあげる小遣いを稼ぎたい人、社会とのつながりを維持したいと考えている人、自身の技術を埋もれさせたくないと考えている人など、モチベーションは様々です。 高齢者人材のモチベーションを理解し、中途採用並みに個々に焦点を当てる考え方にシフトすることが必要となります。

高齢者が活躍するために

さらなる法的整備も必要ですが、企業の努力も必要となります。高齢者自身の努力や意識改革も必要となってきます。現在若年層として働いている人たちにも、今のうちから考え備えておくべきことがたくさんあります。

企業側で行うこと

高齢者ができる仕事は高齢者に任せられるようなシステムを作ったり、高齢者の体力やその日の体調で勤務時間を調整できる柔軟な体制を整えたりする必要があります。定年前から再就職に向けての職業訓練を積極的に行って、高齢者の再就職のサポートをすることも有効です。 このような行政、企業の努力も期待されるところですが、それ以上に今後の高齢者の努力・意識改革が必要であると考えられます。

高齢者が行うこと

高齢者が雇用されにくい理由に、「適した仕事がない」というものがあります。これを解決するためには高齢者の側で努力し、さまざまな職種に適応できる能力を身に着けておく必要があります。高齢者には体力的に難しい仕事も多い為、身体に過度な負担がかからない職種の能力を高めておくとよいでしょう。 60歳になるまでにいくつか資格を取得しておく方がいいかもしれません。
また60歳まで頑張ればいいという考えから、社会のためにも生涯現役を続けるという考えに変える必要があります。報酬については収入が下がることを当たり前と考えて、60歳までの収入と比較しないこと。60歳までは部下を持っていた方でも、再就職では人から使われる立場になります。プライドを捨てて、これに対しても謙虚に受け入れ、若い世代ともうまくコミュニケーションをとることが重要になります。

管理体制を構築する

高齢者を受け入れる現場にも、意識改革・体制強化が必要となります。年齢や過去の肩書に囚われない高齢者向けの評価方法を現場での役割に応じて確立させるのはもちろん、実際にシニア人材とともに働く現場の従業員やスタッフに対しても研修や教育が必要となります。

高齢者のモチベーションを維持する為にも目標を立てる、などモチベーションを維持しやすい環境を作ることも重要になります。

高齢者活用のデメリット

高齢者活用のデメリット

在職老齢年金制度

年収によっては老齢厚生年金の支給額が減額されることがあります。厚生年金の被保険者が老齢厚生年金の支給を受ける場合、総報酬月額相当額と年金の月額に応じて年金の一部または全部が支給停止されるという内容です。 総報酬月額相当額とは年金の受給権が発生した月以後の月収に、その月以前1年間における年間賞与を12カ月で割った額を足した金額です。 特別支給の老齢厚生年金が受けられる60歳~64歳の場合、この総報酬月額相当額と年金月額の合計が28万円以下であれば年金は減額されません。

高齢者活用のデメリット

待遇

高齢者の場合、体力や健康状態の問題が就業のネックにならないか、肉体的に負担の少ない仕事に配置することや、加齢に伴う労災事故(転倒や墜落、転落など)の発生に注意する必要があります。 60歳以降の継続雇用で再雇用後の賃金低下が就業意欲を失わせているという議論や、定年前と同じ業務であるにも関わらず、再雇用後に有期雇用契約の嘱託社員のトラック運転手が不当にさげられたのは、おかしいと会社を訴えたケースもおきています。 それとは別に、年金の受給額に合わせて、正社員を選択せずに、短時間のパート・アルバイトで週に数日だけ、短時間で勤務したいという生活費全額を働いて稼ぐ必要がない高齢就業希望者にとっては、ワークシェアリングなどの柔軟な勤務の選択肢を用意する必要があるでしょう。 高齢者雇用を考える企業が把握しておきたい点として、以下が考えられます。

  • 担当する仕事の内容・範囲
  • 職責
  • 期待する仕事の成果
  • 配置転換の頻度

新規で高齢者を雇用する場合は、企業が期待する仕事と高齢者が希望する仕事のミスマッチに気を付ける必要があります。

健康面の不安

高齢者に限ったことではありませんが人間には体力的な限界があります。 特に高齢者では体力的に長時間の労働が難しい場合がほとんどです。 そのため、長時間勤務が必須の職場や、体力を多く消耗する作業などには向いていません。また判断力も衰えている為素早い行動を求められる仕事は難しいのではと思います。

社員の高齢化

会社全体の高齢化が進みます。 もちろん技術や知識を持ったベテランが会社に残ることは会社に大きな利益をもたらしますが、短期的な目標ばかりを追求してしまうと、若手の人材育成が滞ってしまったり、会社としての柔軟性を失ってしまうという悪影響も考えられます。また社内の対人関係においても若年層との年齢の壁ができてしまう可能性もあり、業務が滞るリスクもあります。

高齢者の雇用は慎重に

高齢化の進行によって働き手が足りない、定年延長による年金の支給年齢の変更など、今後高齢者雇用の機運が増加するものと思われます。しかしデメリットが大きく体力的な問題や再雇用の際に待遇面でトラブルが絶えないなど問題点が大きいです。継続、再雇用に関しては慎重に行う必要があります。