2020年からの働き方改革の対応と罰則

2020年からの働き方改革の対応と罰則

施策の本格化に伴う対応

既に適用されているものも含め2020年以降も引き続き働き方改革の法案が実施されます。また中小企業の猶予期間も順次終了する為、対応を急がなければなりません。

有給休暇を5日以上取得できる体制の整備

2019年4月から適用された、有給休暇10日以上の保有者に対し、5日以上の付与の義務化が中小企業にとって一番インパクトが大きかったのではないでしょうか。
対応の事例として、個別指定方式、計画年休制度の二つがあります。

個別指定方式は、従業員ごとに消化日数が5日以上になっているかをチェックし、5日未満になってしまいそうな従業員について、会社が有給休暇取得日を指定する方法です。
例えば、就業規則で、「基準日から1年間の期間が終わる1か月前までに有給休暇が5日未満の従業員について会社が有給休暇を指定する」ことを定めて、実行していくというものです。個別の従業員ごとに管理の手間がかかりますが柔軟な運用が可能となります。

計画年休制度は、会社が従業員代表との労使協定により、各従業員の有給休暇のうち5日を超える部分について、あらかじめ日にちを決めることができる制度です。 法改正の前から存在する制度で、労働基準法39条6項に定められています。
計画年休制度で年5日以上の有給休暇を付与すれば、対象従業員について5日以上は有給を消化させていることになるため、今回の法改正による有給休暇取得日の指定義務の対象外になります。
計画年休制度の手続きとして労使協定が必要になります。従業員代表との話し合いを行い、労使協定を締結することが必要です。 また、計画年休制度の場合、労使協定で決めた有給休暇取得日は会社側の都合で変更することができず、休みにしても業務に支障が生じにくい日の見通しが立てづらく、後で日にちを変更する必要がでてくる可能性のある場合などには対応できません。

労働時間把握義務への対応

今回の改正で労働安全衛生法に「事業者は、労働者の労働時間の状況を把握しなければならない」という条文が追加されます。
これは、産業医の機能強化と同様に労働者の健康管理・維持が主たる目的となるため、労働者には管理監督者や裁量労働制適用者も含まれます。

労働時間はガイドラインで「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義づけられており、業務上義務づけられた研修や教育訓練の受講、業務に必要な学習、着替え等の時間も含まれます。また、終了打刻後退出までに行った業務があるなどの場合も正確な把握が義務化されるため、今後は始業・終業の打刻時間の正しい管理が求められます。
今回の改正では自己申告はほぼ認められていませんので、タイムカードやICカードなど客観的に労働時間を記録・管理する仕組みが必要になります。

同一労働同一賃金

2020年から中小企業の猶予期間が終了します。業務上の責任の範囲や人材活用の運用が異なる場合を除き、同じ業務を行っているのなら正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇に差をつけてはいけないことになります。

また、待遇について非正規雇用労働者は待遇差の内容や理由についての説明を求めることができるようになるため、企業は彼らの求めに応じて合理的根拠を説明しなければならなくなります。待遇差の内容・理由に関する説明については、行政による指導も行われます。

対応遅れの罰則

時間外労働の上限規制の罰則

時間外労働の上限規制に違反した会社に対しては、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則が定められました。

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、以下を超えることはできません。

  • 年720時間 以内
  • 休日を含む複数月平均80時間
  • 月100時間未満(休日を含む)

また、原則である月45時間を超えることができるのは、年間6か月までです。
罰則を受けた場合、懲役や罰金があるばかりでなく、程度によっては、厚生労働省によって企業名を公表されます。そうなってしまうと企業の取引などにも影響しかねません。

年次有給休暇の取得義務の罰則

年間10日以上の有給休暇を付与されている労働者に、年間最低5日の有給休暇を取得させなければならないことが、働き方改革法によって決定されました。
そして、この有給休暇の取得義務に違反した場合には従業員1人あたりにつき30万円以下の罰金という罰則が定められました。

罰則のない改正法条項

働き方改革法の中の同一労働同一賃金、高度プロフェッショナル制度は、いずれも違反に対する罰則はありません。
しかし、違反に対する制裁がないとはいえど、改正法を理解し対応していかなければ、トラブル発生時、訴訟など責任追及を受けるおそれがあります。

まとめ

2020年から適用開始になる働き方改革法案の対応、猶予期間の終了等で対応に追われている企業も多いと思います。 早めに準備して労働者の合意も取り付けた上で、適切な制度改正を行いましょう。

2020年からの働き方改革法案

2020年からの働き方改革法案

猶予期間終了による2020年問題

2019年から大企業を中心に適用が始まった働き方改革法案ですが、2020年4月からは適用範囲が中小企業に拡大され、さらに徹底されることになっています。
猶予期間があったにも関わらず、殆ど準備をしていない企業が出てくることが多かれ少なかれ予想されます。

中小企業の特例がなくなる

中小企業の猶予期間が終了し、一部適用除外されていた法案が適用されることになります。

例えば、2019年からすでに大企業には適用されていた月60時間を超える時間外労働における割増賃金率50%以上について、中小企業への猶予措置が廃止され、すべての企業が対象となります。また時間外労働の上限について月45時間・年360時間を原則とし、臨時的・特別な事情があるという場合でも年720時間・休日労働含む単月100時間が限度となります。

働き方改革の手始めは、適切な勤怠管理

とはいえ、働き方改革に向けて何から始めれば良いのか、わからない方も多いかと思います。しかしもう先延ばしはできません。
まず、従業員の働き方を正しく把握することから始めましょう。具体的には、正しい形で勤怠を管理し、実態を知ることです。勤怠データから、職場の問題点や課題が明らかになります。例えば、長時間労働が恒常化する人や部署が特定されることで、より効果的な取組みの検討ができるようになります。

2020年から始まる施策

小企業の猶予期間が終了し本格化する取り組みが以下になります。

残業時間の罰則付き上限規制

労働者の過労死等を防ぐため、残業時間を原則月45時間かつ年360時間以内、繁忙期であっても月100時間未満、年720時間以内にするなどの上限が設けられ、これを超えると刑事罰の適用もあります。

同一労働同一賃金

同一労働同一賃金とは、同じ仕事に就いている限り、正規雇用労働者であるか、非正規雇用労働者であるかを問わず、同一の賃金を支給するという考え方です。 正規・非正規の不合理な格差をなくすため、判例で認められてきた「同一労働・同一賃金の原則」が法文化されます。

様々な事情により、非正規雇用を選択する労働者が増加している中、政府はいわゆる働き方改革のひとつとして、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を解消し、多様な働き方を選択できる社会にすることを目指します。

2020年以降の施策

割増賃金率の中小企業猶予措置廃止

中小企業には適用が猶予されていた、月の残業時間が60時間を超えた場合、割増賃金の割増率を50%以上にしなければならないという制度が2023年4月に全ての規模の企業に適用されるようになります。

同一労働同一賃金の中小企業猶予措置廃止

同一労働同一賃金の中小企業猶予措置は2021年までとなっており、2021年4月に全ての規模の企業に適用されるようになります。

時間外労働の削減が急務

まず、早急に取り組まなければならないのは、時間外労働の削減です。

法律で定められた上限を超える残業は絶対的に禁止となります。そのため現状、基準を超える残業が発生している企業においては、業務の効率化や負荷の偏りの見直しなどを行い、まずは、残業時間の絶対量の削減に注力すべきです。

また労働時間の把握義務についても、しっかりと取り組んでいかなければなりません。
管理監督者や裁量労働制の労働者を含め、残業代の計算のためではなく、健康管理や過重労働防止の観点から、労働時間管理が義務化されます。

それぞれの会社に合ったやり方で、管理監督者や裁量労働制で働く従業員も含めた労働時間の管理体制にする必要がありますが、規模が大きく、対象者にも様々な類型がある企業は、早急な対応が必要です。

同一労働同一賃金の対応

同一労働同一賃金の考え方は、正社員と非正社員の職務内容が同じであれば同じ賃金を支給し、 違いがある場合にはその違いに応じた賃金の支給をしなければならないというものです。
まずは、正社員と非正社員の職務内容を明確にする必要があります。
待遇の違いについて明確になっていないのであれば、すべて可視化するなどして、全体で共有し把握する必要があります。

まとめ

2020年から働き方改革法案の実施が本格化しより厳しく企業に求められることになります。企業の人事全てに影響する法改正ですので、早めに準備して労働者の合意も取り付けた上で、適切な制度改正を行いましょう。

固定残業代制の問題点

固定残業代制の問題点

悪用が多い制度?

固定残業代制とは、残業代があらかじめ固定給に含まれている労働契約のことを言います。 会社側からしてみれば、固定残業代で残業代は支払っているという認識になっているでしょうが、従業員からしてみれば「いくら残業しても給料は変わらない」そのようなイメージが固定残業代にはあるのではないでしょうか。

超過分の残業代は支払わなければ違法となる

固定残業代制は、あくまで賃金計算方法の一つに過ぎず、会社の割増賃金支払義務を免除するようなものではありません。
そのため、仮に労働者の実労働時間に応じて支払うべき割増賃金額がみなし残業代を超える場合には、当然、会社は労働基準法の規定に基づいて、超過分の割増賃金の精算が必要です。

よく「固定残業代制だからいくら働いても残業代は出ない。」「残業代は固定残業代制で支払い済みである。」という説明がなされていることがあります。
しかし、この説明は誤っています。したがって、もしも会社がそのような説明をして、割増賃金の支払を一切していないという場合は、このような超過分の割増賃金が精算されておらず、未払状態となっている可能性があります。

固定残業代制で起きるトラブル

企業側、働く側の理解度が不十分なため、またわざと悪用する事例が多くあり固定残業代制でのトラブルは以下のものがあります。

従業員の労働時間の管理を怠る企業がある

あらかじめ残業代を払う、みなし残業のシステムがあるからと、従業員がどのくらい残業しているか把握していない企業もあります。

みなし残業代分以上の残業代を支払わない企業が存在する

例えば、月に20時間分のみなし残業を支払っている場合、20時間を越えた際は超えた分の残業代を別途支払う必要があります。

定時退社をしづらい社風

残業代をあらかじめ払っているのだからと、暗黙の了解で定時に帰りづらい雰囲気の社風になっている企業もあります。固定残業代制でも、仕事を効率的にこなし、定時に退社することに何も問題はありません。

基本給を引き下げている

固定残業代制の金額を明確にした結果、基本給がその地域で定められた最低賃金を下回るのは違法です。

基本給に注意

みなし残業代制度の会社のメリットの1つとして、固定支給の残業代を賃金に上乗せすることで、労働条件や待遇をよく見せることができるということがあります。
きちんと求人の際に固定支給の残業代を含む金額であることを適切に明示していれば、これ自体は特に不当でも違法でもありません。

逆に、そのような明示を適切に行わない求人行為は、違法となる可能性があります。

厚生労働省では、若者雇用促進法の改正に伴い、


「固定残業代(名称のいかんにかかわらず、一定時間分の時間外労働、休日労働及び深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金)を採用する場合は、固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法、固定残業代を除外した基本給の額、固定残業時間を超える時間外労働、休日労働及び深夜労働分についての割増賃金を追加で支払うことなどを明示すること。」と規定しております。


このように高待遇だと思っていたら、実際は相当の割増賃金を含む金額であり基本給は非常に低かったということもあります。

まとめ

固定残業代制はあまり良いイメージがないのは事実ですが、時間内に業務を終えれば、残業代込の給与が保証される、早く仕事を終わらせた方が得になる制度でもありますので、一概に労働者に不利な制度というわけでもありません。

従業員側も企業側もこのシステムを充分理解し、お互いにとってメリットとなり、効率的に業績を上げられる環境を整えることに務めた方が建設的です。

固定残業代制とは

固定残業代制とは

残業時間にかかわらず一定の残業代

固定残業代制とは、企業が一定時間の残業を想定し、あらかじめ月給に残業代を固定で記載し、残業時間を計算せず固定分の残業代を支払うという制度です。一般的には「みなし残業」とも言われています。
一方、残業が想定する時間を超えてしまった場合は、別途残業代が支払われないといけません。

明示義務

職業安定法と指針の改正により、平成30年1月から、固定残業代制による求人を行う際の募集要項には、

  • 固定残業代の時間数及び金額
  • 固定残業代を除外した基本給の額
  • みなし残業時間を超えた残業に対して残業代を追加で支払うこと

などを明示することが義務付けられました。ハローワーク等に求人申込みをする場合だけでなく、自社HPなどで労働者を募集する場合なども明示が求められます。

固定残業代制の種類

事業所内労働

営業職などで一日中顧客回りなどをしている場合、労働時間を正確にすることができません。 この為固定残業代制を採用することができます。

裁量労働制

研究者やソフトの製作者など仕事の進み具合によっては激務になることもあるが、仕事がひと段落するとまとまった休みが取れるような仕事の場合に用いられる制度です。
このような業務はいちいち指示を受けて働くよりも、労働者の判断で仕事を進めたほうが合理的とされ、固定残業代制によって、働いた時間をみなすことが可能です。

しかし、裁量労働の場合、労働時間の配分は労働者に任せられているにもかかわらず、実際は会社が管理していて、「残業しても残業代は出ないのに、仕事が早く終わったりしても休めない」状況となってしまい、サービス残業の温床となっていると言われています。

固定残業代制の違法性は

労働基準法に則った就業規則なら違法ではない

たまに聞く裁量労働でも事業所外労働でもないのに、企業がみ固定残業代制を採用しているケース、これは違法なのでしょうか。
労働基準法は労働環境を守る最低限の法律で、労働基準法に定められた内容を満たしているのならば、その企業独自で就業規則を決めることは可能で、必ずしも違法とはいえません。 定額の残業代が労働基準法で定められた割増賃金以上の額であれば、問題ないという裁判の判例もあります。

残業代が定額の残業手当を上回る場合は請求の対象

しかし、みなし残業制度として定額の残業代が支払われていても、実際に行われた残業が多く、残業代が定額の残業手当を上回る場合に、上回った部分については、企業は別途残業代を支払わなくてはならず、実際に行われた残業が少なくても、定額の残業代は支払わなくてはなりません。

また、残業が多かった月に定額の残業代を超えた分を支払わず、残業が少なかった月に支払われたものとすることもできません。
しかし、固定残業代分を超える残業時間があっても、超えた部分に関しては支払われず、サービス残業となるケースが多く、 残業代の未払いの一つとして問題になっています。

違法な固定残業代の運用事例

固定残業代の金額・時間が明確に記載されていない

固定残業代でよくある内容は、曖昧な記載をされているということです。

  • 月給22万円(みなし残業手当42時間分含む)+交通費(上限3万円)
  • 月給21万3750円(一律残業手当含む)

例えばこのようないくら分が残業代なのか、残業代の時間も金額も全く分からない求人の場合違法となります。

こちらは、求人票だけではなく就業規則にも言えることです。会社で固定残業代制を取り入れていて、その金額や時間がはっきりしていないようであれば、固定残業代は無効になります。

一定時間に満たないと固定残業代が支払われない

ブラック企業での過労死が問題にもなりましたが、例えば月に80時間以上残業しないと、固定残業代が払われず給料が下がってしまうような労働体制をとっている企業もありました。
固定残業代は、例え決めてある残業時間に達成しなかったとしても一律で支払わなくてはいけません。

超過した残業代が支払われない

固定残業代の問題でよくあるのがこの内容です。例えば、残業手当5万円、月45時間分という形で固定残業代を設定した上で、 月に45時間以上働いたのであればその分の追加の残業代を支払う義務があります。
もし、45時間を超えているのに「うちは、固定残業代だから残業代は出ないよ」という姿勢の企業ならば完全に違法です。

最低賃金を下回っている

厚生労働省が発表している平成30年の最低賃金の全国平均は一時間あたり874円になっています。 時間外労働の計算方法は×1.25。例として、時間外労働の平均最低賃金は1,092円/時間になります。
例えば「残業手当3万円(月45時間分)を含む」と、時間も金額も明確に設定されていたとします。 しかし、時給に換算してみると666円にしかなりません。この料金設定だと違法になり、今までの過不足を請求することができます。

雇用側が固定残業代を周知していない

固定残業代制を取り入れる企業は、労働者に周知せず給料形態に固定残業代制を含むということは許されません。基本的に固定残業代を今までの固定給に上乗せするような企業はありません。
今までの基本給は変えず、その一部を固定残業代にする企業がほとんどです。例えば、今までの基本給が25万円だったとします。 それを基本給20万円にして、5万円を固定残業代にするので、実質貰える金額は変わらない。という説明を労働者にする義務があります。

まとめ

固定残業代制は悪用されるケースが多く、あまり良いイメージを持っていない人が大半かと思われます。しかし、現在固定残業代制を取り入れている企業が多いのも事実です。
一言に固定残業代制と言っても運用に問題なければ適法な為、正しい知識を身につけておくことが重要となります。
また今後、働き方改革関連法の成立によって労働時間の把握・管理が法律上義務化されることなどとも相まって、固定残業代に対する今後指導強化されると考えられます。

健康経営のデメリット

健康経営のデメリット

健康経営とは

健康経営に限らず、どのような施策にもメリットとデメリットはつきものです。双方をしっかりと把握し、課題と目的を明確にして取り組むことで成功により近づくことが可能になります。

健康経営の目的

健康経営の目的は2つあり、1つは、少ない労働人口のなかでいかに生産性を高めて企業成長を促進させる事
もう1つは、社員の健康増進による医療費削減といった経営上のリスク回避が挙げられます。

健康経営のデメリット

健康経営といっても、始めたからといってすぐに効果が現れるものではなく、日々の行動と継続が重要となります。短期間で効果が現れないという事と長期間の継続性が健康経営の現状のデメリットとなります。

効果の不透明性

健康経営導入のデメリットとして、健康経営の効果がみえにくいという点があります。
例えば、離職者や休職者がゼロになった場合、喜ばしいのことのように感じますが、必ずしもそうとは限らないのです。
休職や離職がしにくい雰囲気が社内で広がり、従業員が無理をしてまで仕事をしていたとしたら、その会社はいい会社になったというのは、難しいからです。 成果が必ずしも数字の上がり下がりだけでは示せないことがあります。

また効果もすぐ現れるものでもないため、長期的な継続が課題となります。

社員の健康経営に関する意識の定着

経営層がやる気でも、社員にとっては面倒だと感じることはどのような施策にも起こりがちです。
社員一人一人の行動意識は、健康経営を成功させるうえで必要不可欠です。少々時間がかかるとは思いますが、社員へ意識を根付かせることは大変重要な課題と言えます。

データの管理に手間かかる

健康経営では、従業員の健康に関するデータを扱うこととなり、それらは重要な個人情報です。
データを管理するための労働力や設備の導入も必要になり、データの管理にセキュリティを厳重にしたり、プライバシーに配慮するなど、コストがかかることがありそうです。

従業員の健康は企業の発展に不可欠

働き方改革が行われる一方で、いまだに長時間労働で心身に不調をきたし、メンタルヘルスの疾病から完全回復できないという人は後を絶ちません。健康を損ねるような働き方は、働く個人からは労働生産性を奪い、企業は収益性の低下、ひいては日本社会の経済力低下にもつながります。

健康経営にしっかりと取り組む企業が増えることで、働く個人は生産性や働きがいを取り戻し、企業はブランドイメージと従業員満足度を上げることができます。

まとめ

健康経営は効果の数値化が難しく、また目に見えた効果も現れづらいため続けていくのは難しいと思われます。
しかし従業員の健康を維持することにより、離職率を減らすと同時に企業イメージの改善にも繋がります。すぐに効果は現れなくとも、継続して行うことで初めて効果が現れます。

健康経営銘柄とは

健康経営銘柄とは

健康経営銘柄

健康経営銘柄は、経済産業省と東京証券取引所が共同で実施している企業の認定制度です。
健康経営において優れた企業を選定し、健康経営の取組が社会的に促進されることを図っています。東証に上場している企業から1業種につき1企業が選出されます。

健康経営

健康経営とは、従業員の健康への配慮を単なる人事・労務管理と捉えるのではなく、利益をもたらす経営戦略として考え実践することです。
過労問題やワークライフバランスなどが注目されている昨今、いかに健康で気持ちよく働ける職場であるかは求職者にとって非常に重要な要素となっています。
労働人口が減少する中で人材を安定的に確保するために、健康経営への取り組みは必須の課題となります。

健康経営銘柄の選定基準

健康経営優良銘柄に選ばれるには以下の基準をクリアする必要があります。

  • 健康経営度調査に回答した企業の上位20%に入ること
  • 法令違反の有無や社内の体制づくりなど、定められている健康経営の必須項目を全て満たすこと
  • 自己資本利益率の直近3年間平均が0%以上であること

以上の3つを満たした企業のうち、業種内で最も健康経営度が高い企業が健康経営銘柄として選出されます。2019年は2018年までの1業種1社の制限が払われ、28業種37社と多くの企業が選定されました。

健康経営銘柄に選定されるメリット

企業イメージが向上し、社会へのアピールになる

健康経営銘柄に選定されると、従業員の健康に対して戦略的に取り組んでいる企業として、社会に魅力を伝えることができます。求職者にも大きなアピールポイントとなり、優秀な人材の確保につながります。

指標の一つとなる

健康経営銘柄に選定されれば、健康経営施策を担当する管理部や総務にとっては明確な評価となり、健康経営の指標となります

株式の評価が向上する

健康経営銘柄は、経済産業省と東京証券取引所が行なっている取り組みです。選定されると投資家にとって魅力的な企業として紹介されるため、株価の向上が期待できます。

健康経営優良法人

健康経営銘柄とよく似たものに、健康経営優良法人という認定制度があります。 こちらも健康経営に取り組む企業を認定・公表する経済産業省実施の制度ですが、以下のような違いがあります。

  • 認定を受けるのに上場企業である必要がない
  • 中小規模法人部門と大規模法人部門(ホワイト500)があり、企業規模を問わず認定を受けられる
  • 中小企業の場合、健康経営度調査に回答する必要がない
  • 大企業の場合、健康経営度調査の回答企業の上位50%以内に入れば良い
  • 認定企業数に制限がない(500社しか認定されないわけではない)
  • 健康経営銘柄よりも認定を受けやすい制度となっております。その一方で、近年ではホワイト企業の証として採用力の強化などに大きな効果が期待されています。

    まとめ

    働き方改革の推進を加速させるには、まず社員の健康と就業環境の健全化が必要不可欠です。
    社員の健康増進によって、集中力の向上やモチベーションアップなど、働き方改革を進めるうえでプラスの効果を発揮するメリットが多くあります。またこのような制度を活用し、健康経営企業であることや、適切な労働管理ができる企業である事をアピールすることでコンプライアンス上でも効果があります。

働き方改革と健康経営の事例

働き方改革と健康経営の事例

健康経営の企業取組事例

労働人口減少が著しいと叫ばれる今日の日本では、働き方改革のように従業員のパフォーマンスを高め、より長く働ける環境を整えることが企業の課題になっています。 そうした従業員満足度を高めることが重視される中、健康経営という言葉も注目を集めています。
2016年から経済産業省も「健康経営優良法人」のような認定制度を設け、国を挙げて健康経営に力を入れています。

健康経営銘柄とは?

健康経営銘柄とは、経済産業省と東京証券取引所によって運営される、健康経営に取り組む上場企業の中から、原則1業種1社を健康経営銘柄として認定し表彰する制度です。
健康経営銘柄を取得した企業は、各社が行った健康経営の経営理念・方針、組織体制、制度・施策実行、評価・改善というフレームワークに則り、選定企業紹介レポートという形で公表されています。

人間ドック受診制度の導入

建設会社の事例では、30歳以上の従業員に年1回の法定健診に加えて人間ドック受診を義務化し、受診休暇制度や費用補助を実施。
30歳未満の従業員には年2回の健診受診を義務化することにより、従業員の健康管理意識の改善・向上につなげています。
こうした施策をより効果的に進めるため、人間ドック予約や定期健診の有所見者への精密検査の受診勧奨は専門業者に委託するなど、PDCAによる体制改善を進めています。

全員面談のデータ活用したセルフケア

産業医・保健スタッフが毎年全従業員を対象とした個別面談を行い、抽出した課題を土台に施策を実施。面談結果や健診データなどを一元管理する統合システム導入によってセルフ・ケア度の可視化・定量化を進めるとともに、施策改良につなげています。さらに、ライフログデータを記録できるスマホアプリを活用し、個人の生活習慣や価値観に合わせた的確なセルフ・ケア指導にも役立てています。
サテライトオフィスの整備や設備見直しをはじめとする生産性向上への取り組みの結果、2017年度の売上高は前年度比5%増、総実労働時間は同74時間減少となり、着実な成果に結びついています。

測定会

ヘルスリテラシーの低い従業員のために、内臓脂肪や骨密度を測定してその場でデータを確認できる体感型測定会を開催しています。
その場でデータがわかるだけでなく、専門スタッフによるアドバイスも実施しています。保健指導の対象者や健康診断後のフォローとして行い、従業員の健康状態の指標が主要企業10%以内に入ることを目指しています。
また従業員の健康増進をするために、朝食や運動習慣など従業員が健康的な生活を包括的にサポートしています。

健康経営を行なっている企業の共通点

健康経営の施策に成功している企業に共通して見られるのは、長時間労働の改善をまず行なっている点になります。
長時間労働、残業による食生活の乱れから体調不良や肥満を引き起こしていることを突き止め、部署ごとの状況などを可視化することで長時間労働を改善し、有休取得率の向上、欠勤、休職する従業員の減少に効果を出した事例があります。

長時間労働の削減はともすれば従業員の残業代などの減少で収入に影響しますが、健康経営に成功している企業では、労働時間が短くなることで削減された人件費を賞与支給時に従業員にそっくり還元したり、従業員一人一人の健康に対する取り組みにポイント制を導入して、一定以上のポイントを取得することで資格手当を支給したり、定年後の再雇用時に優遇するなどの取組みを実施しています。
従業員にもはっきりとわかる利益がある形で還元することで、長時間労働の削減が人件費のカットを目的としたものではないことを示し、従業員の健康や就業に対するモチベーションを高めることがポイントとなります。

まとめ

健康経営とひとまとめに言っても、事業所や企業ごとで実施している施策やその効果は様々です。
企業によって事情は異なるため、全く同じ施策が有効であるとは限りませんが、健康経営に取り組む上で、検討するのもいいかもしれません。

働き方改革と健康経営のポイント

働き方改革と健康経営のポイント

健康経営とは

健康経営とは、従業員等の健康管理や健康増進の取り組みを投資と捉え、経営的な視点で考えて、戦略的に実行する新たな経営手法です。
これは、従業員の健康保持や健康増進を目的とした企業側の積極的な取り組みは、コストではなく将来への投資であるという考え方の元、健康管理を重要な経営課題の1つとして経営的な視点で向き合う事を指します。

メンタルヘルスやブラック企業が社会問題として取り上げられる昨今、健康管理を企業の経営課題ととらえる企業が増加しています。
この傾向は、経済産業省と東京証券取引所が、従業員の健康管理に戦略的に取り組む企業を「健康経営銘柄」として選定していることにも現れています。
健康経営は、単に健康管理面でのマネジメントが行えるだけではなく、長期的にみて経営面もよくなっていく可能性が高い方法です。

日本で健康経営が推進される背景

労働力人口とGCPの減少

昨今、労働者不足問題が深刻化するなか、官民を挙げて働き方改革が推進されています。 しかし、労働生産性の向上を実現するためには働き方を変えるだけでなく、全ての従業員が心身ともに健康な状態で活き活きと働くことのできる土台作りにも、力を入れなければなりません。

従業員一人ひとりの労働生産性を高めることができなければ、労働力人口の減少とともにGCP(社内総生産)も減少していくばかりです。健康経営を通じて個々のパフォーマンスを高い状態で維持し、魅力的な企業を作り上げることによって、多くの求職者が希望する強い企業を作り上げることができるでしょう。

機会損失に対するリスク回避

組織は人なりという言葉があるように、組織は従業員がいなければ何の活動も行うことができません。
また、多くの従業員を抱えていたとしても、常習的に遅刻や早退、欠勤を行う従業員や、出勤はするものの心身の不調によって十分なパフォーマンスを発揮することができない従業員の割合が多ければ生産性や業績を高めることはできません。
健康経営は、 足踏み状態による機会損失を未然に防ぐリスクマネジメント の観点からも大きな期待が寄せられているのです。

医療費の増大と健康保険組合の解散

近年、メンタルヘルスの不調を訴える社会人が増加しており、企業が負担する医療費は年々増加の一途をたどっています。 また、その影響を受けて大企業の社員とその家族が加入する1,394の健康保険組合のうち、4割以上もの組合が経営赤字に陥っています。
医療費の企業負担が増加すれば利益が減少し、戦略的投資に使用できる資産が少なくなってしまいます。 そして、健康保険組合が解散すれば全国健康保険協会に加入することになるため、組合独自の給付が受けられなくなる上、自社が加入している健康保険組合の保険料が協会けんぽよりも低く設定されている場合には支払う保険料が増加することになってしまいます。
健康保険組合連合会の試算によると、団塊世代が後期高齢者となる2025年には、全体の4分の1を超える健康保険組合が解散の危機を迎えるといいます。
従業員やその家族の健康に配慮して医療費の削減を図ることは、企業が率先的に取り組むべき重要課題 になっているのです。

健康管理の具体的な取り組み

会社の現状を知る

社員の健康管理を行う前に、先ずは会社の人事制度や具体的な取り組みの実態を把握する必要があります。自社の人事制度では健康的な労働生活を送ることができるか、健康に関して既に取り組んでいることはあるかなど、現状をしっかりと把握しましょう。働く人の環境変化や年齢により求められていた制度が今は変わっている場合もあります。

自社の現状をどのように把握すれば良いのか分かりかねているという企業担当者の方は、厚生労働省が提供している働き方・休み方改善指標や、経済産業省が実施する健康経営度調査と自社を照らし合わせてみると良いでしょう。

定期的な健康診断・ストレスチェックの実施

社員の健康に関する実情を把握するには、社員全員に対して定期健康診断を実施すること、さらにはストレスチェックも行い、体には表れていない精神衛生の部分も現状を把握するといった取り組みを行うべきです。そして、形だけを作るのではなく、健康診断受診率100%を目指し、実質を伴ったものにしなくてはいけません。会社での疲弊やストレスは、社員の心身ともに影響を与えます。定期的に社員の心身の両面から管理し、実際の取り組みにつなげていくことが大切です。

社員の健康を維持する仕組みづくり

ただ定期的に心身の状態を確認するだけでは、データが集まるだけで社員の健康にはつながりません。大切なのは、社員が自ら健康増進を心がけ、健康を維持できる仕組みをつくることです。十分な休憩時間の確保や長時間労働の是正、専門家による健康セミナーの開催、社内での部活動の推進など、様々な制度として設けたり、健康を意識する機会や情報を提供したりすることで、社員が健康へ関心を寄せるよう計らいます。1度のセミナーやイベント実施で終わるのではなく定期的に健康についての情報を発信し続けることで、社員が積極的に健康を意識するようになれば、自然と健康増進、維持につながるはずです。

女性の働きやすさにも配慮

女性のさらなる社会進出および活躍が期待されている昨今、企業は女性の働きやすさについても考える必要があります。
希望者は定期的にカウンセリングを受けられる制度や、婦人科検診が受けられる制度といった施策は大変効果的でしょう。また、産休育休制度を充実させることで出産育児と仕事の両立への不安も少なからず解消されるはずです。

まとめ

働き方改革の推進を加速させるには、まず社員の健康と就業環境の健全化が必要不可欠です。
社員の健康増進によって、集中力の向上やモチベーションアップなど、働き方改革を進めるうえでプラスの効果を発揮するメリットが多くあります。まずは会社の現状を把握し、課題に適した取り組みを行うことが大切です。社員の健康管理から、働き方改革を加速させていきましょう。

働き方改革と健康経営のメリット

働き方改革と健康経営のメリット

働き方改革を阻む意外な要因

働き方改革を阻む意外な要因として社員の不健康が挙げられます。

・休職者の増加

社員の不健康化が進んでしまうと、生活習慣病などの疾病、メンタルヘルスの不調などを引き起こす可能性が高まります。重度の場合は休職せざるを得ない場合もあるでしょう。
突然の欠員が増えると他の社員がカバーすることになるので、長時間労働やオーバーワークなどが起こりかねません。

・モチベーションの低下

社員が疲弊し、心身共にストレスを抱えた状態であると、出社をしても仕事をする気にならない、集中力が続かないといった事態に陥ります。仕事へのモチベーションが保ちづらくなり、パフォーマンスの低下にもつながります。
このように、社員が不健康であることは、働き方改革が進まない要因の一つになりえるのです。

社員の健康管理の重要性

近年社員の健康管理、増進が注目されるようになりましたが、どうしてここまで叫ばれるようになったのかというと、「社員の健康を増進させることが、結果的に労働生産性を高めることにつながる」ということが分かってきたからです。
長時間労働や過重労働で疲弊した社員は、体調不良や集中力の低下によってミスを起こしやすくなります。また、組織が全体的に落ち込んだ雰囲気では、前向きな行動やアイデア、活発な意見交換などは成しがたいものです。社員が集中して取り組むことができ、前向きで活発な組織づくりを行うには、まず社員の健康管理から始める必要があります。社員が健康になれば、その分労働生産性は向上していくはずです。

リスク管理と健康経営

電通事件をはじめ、過労死が表面化してきました。健康障害が発生しない取り組みを講じていかないと、大きな社会的非難を浴びる時代となっています。労働基準監督署の調査も次々と入り、細かいチェックが入ってます。企業イメージが損なわれることのデメリットも計り知れません。
また、従業員の健康障害や過労死があった場合、雇用主はもとより管理監督者である上司も訴えられる事態となっています。健康経営はリスク管理として捉えなければならないのです。

健康経営とは

健康経営とは健康経営研究会によると「企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても大きな成果が期待できるとの基盤に立って、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することを指します。
従業員の健康を経営資源と捉え、企業主導で従業員の健康維持に取り組むことにより、従業員の活力及び生産性の向上の実現、業績アップが期待できます。また、従業員が健康であれば、会社負担分の医療費の削減ができるといったメリットもあります。

健康経営優良法人認定制度とは

「健康経営」を評価する認定制度や表彰制度はいくつか存在しますが、最も注目度が高いものが、経済産業省による「健康経営優良法人認定制度」です。
これは、「地域の健康課題に即した取組や日本健康会議が進める健康増進の取組をもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度」です。
認定基準は、

  • 経営理念(経営者の自覚)
  • 組織体制
  • 制度・施策の実行(健康課題の把握、対策の検討、ワークライフバランスの推進、健康増進・生活習慣病予防対策、メンタルヘルス対策など)
  • 評価・改善
  • 法令遵守・リスクマネジメント

という5つの大項目をベースに、それぞれ具体的な取組みが評価項目として設けられています。これらの認定基準が十分に満たされていることで、「健康経営優良法人」と認定されます。

健康経営優良法人に認定されれば、企業のイメージや社会的評価の向上はもちろん、認定企業は金融機関から低利融資などの優遇措置を受けられることもあります。

健康経営のメリット

医療費の削減

メリットの一つに、医療費削減があります。
従業員が健康になり病院に行く回数が減ることで、企業が負担する医療費も減ることとなります。

労働生産性の向上

健康経営の各施策によって、心身の体調不良による休業や休職者が減ること、出勤していても調子が悪く、ボーッとしてしまい、生産性が落ちてしまうことを減らしていく効果があります。
特に後者の「出勤しているけれどパフォーマンスが悪いことによる損失」は、企業が負担する医療費や、休業による損失額よりも大きいと言われています。

従業員が健康になる

従業員にとっての最大のメリットは、健康になるということです。
健康経営の施策によって、健康に対する意識づけや、正しい知識を学ぶことができ、生活習慣の改善などにつながるでしょう。

まとめ

働き方改革の推進させるには、まず社員の健康と就業環境の健全化が必要不可欠です。社員の健康増進によって、集中力の向上やモチベーションアップなど、働き方改革を進めるうえでプラスの効果を発揮するメリットが多くあります。まずは会社の現状を把握し、課題に適した取り組みを行うことが大切です。

働き方改革と人材育成のポイント

働き方改革と健康経営のポイント

健康経営とは

健康経営とは、従業員等の健康管理や健康増進の取り組みを投資と捉え、経営的な視点で考えて、戦略的に実行する新たな経営手法です。
これは、従業員の健康保持や健康増進を目的とした企業側の積極的な取り組みは、コストではなく将来への投資であるという考え方の元、健康管理を重要な経営課題の1つとして経営的な視点で向き合う事を指します。

メンタルヘルスやブラック企業が社会問題として取り上げられる昨今、健康管理を企業の経営課題ととらえる企業が増加しています。
この傾向は、経済産業省と東京証券取引所が、従業員の健康管理に戦略的に取り組む企業を「健康経営銘柄」として選定していることにも現れています。
健康経営は、単に健康管理面でのマネジメントが行えるだけではなく、長期的にみて経営面もよくなっていく可能性が高い方法です。

日本で健康経営が推進される背景

労働力人口とGCPの減少

昨今、労働者不足問題が深刻化するなか、官民を挙げて働き方改革が推進されています。 しかし、労働生産性の向上を実現するためには働き方を変えるだけでなく、全ての従業員が心身ともに健康な状態で活き活きと働くことのできる土台作りにも、力を入れなければなりません。

従業員一人ひとりの労働生産性を高めることができなければ、労働力人口の減少とともにGCP(社内総生産)も減少していくばかりです。健康経営を通じて個々のパフォーマンスを高い状態で維持し、魅力的な企業を作り上げることによって、多くの求職者が希望する強い企業を作り上げることができるでしょう。

機会損失に対するリスク回避

組織は人なりという言葉があるように、組織は従業員がいなければ何の活動も行うことができません。
また、多くの従業員を抱えていたとしても、常習的に遅刻や早退、欠勤を行う従業員や、出勤はするものの心身の不調によって十分なパフォーマンスを発揮することができない従業員の割合が多ければ生産性や業績を高めることはできません。
健康経営は、 足踏み状態による機会損失を未然に防ぐリスクマネジメント の観点からも大きな期待が寄せられているのです。

医療費の増大と健康保険組合の解散

近年、メンタルヘルスの不調を訴える社会人が増加しており、企業が負担する医療費は年々増加の一途をたどっています。 また、その影響を受けて大企業の社員とその家族が加入する1,394の健康保険組合のうち、4割以上もの組合が経営赤字に陥っています。
医療費の企業負担が増加すれば利益が減少し、戦略的投資に使用できる資産が少なくなってしまいます。 そして、健康保険組合が解散すれば全国健康保険協会に加入することになるため、組合独自の給付が受けられなくなる上、自社が加入している健康保険組合の保険料が協会けんぽよりも低く設定されている場合には支払う保険料が増加することになってしまいます。
健康保険組合連合会の試算によると、団塊世代が後期高齢者となる2025年には、全体の4分の1を超える健康保険組合が解散の危機を迎えるといいます。
従業員やその家族の健康に配慮して医療費の削減を図ることは、企業が率先的に取り組むべき重要課題 になっているのです。

健康管理の具体的な取り組み

会社の現状を知る

社員の健康管理を行う前に、先ずは会社の人事制度や具体的な取り組みの実態を把握する必要があります。自社の人事制度では健康的な労働生活を送ることができるか、健康に関して既に取り組んでいることはあるかなど、現状をしっかりと把握しましょう。働く人の環境変化や年齢により求められていた制度が今は変わっている場合もあります。

自社の現状をどのように把握すれば良いのか分かりかねているという企業担当者の方は、厚生労働省が提供している働き方・休み方改善指標や、経済産業省が実施する健康経営度調査と自社を照らし合わせてみると良いでしょう。

定期的な健康診断・ストレスチェックの実施

社員の健康に関する実情を把握するには、社員全員に対して定期健康診断を実施すること、さらにはストレスチェックも行い、体には表れていない精神衛生の部分も現状を把握するといった取り組みを行うべきです。そして、形だけを作るのではなく、健康診断受診率100%を目指し、実質を伴ったものにしなくてはいけません。会社での疲弊やストレスは、社員の心身ともに影響を与えます。定期的に社員の心身の両面から管理し、実際の取り組みにつなげていくことが大切です。

社員の健康を維持する仕組みづくり

ただ定期的に心身の状態を確認するだけでは、データが集まるだけで社員の健康にはつながりません。大切なのは、社員が自ら健康増進を心がけ、健康を維持できる仕組みをつくることです。十分な休憩時間の確保や長時間労働の是正、専門家による健康セミナーの開催、社内での部活動の推進など、様々な制度として設けたり、健康を意識する機会や情報を提供したりすることで、社員が健康へ関心を寄せるよう計らいます。1度のセミナーやイベント実施で終わるのではなく定期的に健康についての情報を発信し続けることで、社員が積極的に健康を意識するようになれば、自然と健康増進、維持につながるはずです。

女性の働きやすさにも配慮

女性のさらなる社会進出および活躍が期待されている昨今、企業は女性の働きやすさについても考える必要があります。
希望者は定期的にカウンセリングを受けられる制度や、婦人科検診が受けられる制度といった施策は大変効果的でしょう。また、産休育休制度を充実させることで出産育児と仕事の両立への不安も少なからず解消されるはずです。

まとめ

働き方改革の推進を加速させるには、まず社員の健康と就業環境の健全化が必要不可欠です。
社員の健康増進によって、集中力の向上やモチベーションアップなど、働き方改革を進めるうえでプラスの効果を発揮するメリットが多くあります。まずは会社の現状を把握し、課題に適した取り組みを行うことが大切です。社員の健康管理から、働き方改革を加速させていきましょう。