2019/08/26

働き方改革と人材育成のポイント

働き方改革と健康経営のポイント

健康経営とは

健康経営とは、従業員等の健康管理や健康増進の取り組みを投資と捉え、経営的な視点で考えて、戦略的に実行する新たな経営手法です。
これは、従業員の健康保持や健康増進を目的とした企業側の積極的な取り組みは、コストではなく将来への投資であるという考え方の元、健康管理を重要な経営課題の1つとして経営的な視点で向き合う事を指します。

メンタルヘルスやブラック企業が社会問題として取り上げられる昨今、健康管理を企業の経営課題ととらえる企業が増加しています。
この傾向は、経済産業省と東京証券取引所が、従業員の健康管理に戦略的に取り組む企業を「健康経営銘柄」として選定していることにも現れています。
健康経営は、単に健康管理面でのマネジメントが行えるだけではなく、長期的にみて経営面もよくなっていく可能性が高い方法です。

日本で健康経営が推進される背景

労働力人口とGCPの減少

昨今、労働者不足問題が深刻化するなか、官民を挙げて働き方改革が推進されています。 しかし、労働生産性の向上を実現するためには働き方を変えるだけでなく、全ての従業員が心身ともに健康な状態で活き活きと働くことのできる土台作りにも、力を入れなければなりません。

従業員一人ひとりの労働生産性を高めることができなければ、労働力人口の減少とともにGCP(社内総生産)も減少していくばかりです。健康経営を通じて個々のパフォーマンスを高い状態で維持し、魅力的な企業を作り上げることによって、多くの求職者が希望する強い企業を作り上げることができるでしょう。

機会損失に対するリスク回避

組織は人なりという言葉があるように、組織は従業員がいなければ何の活動も行うことができません。
また、多くの従業員を抱えていたとしても、常習的に遅刻や早退、欠勤を行う従業員や、出勤はするものの心身の不調によって十分なパフォーマンスを発揮することができない従業員の割合が多ければ生産性や業績を高めることはできません。
健康経営は、 足踏み状態による機会損失を未然に防ぐリスクマネジメント の観点からも大きな期待が寄せられているのです。

医療費の増大と健康保険組合の解散

近年、メンタルヘルスの不調を訴える社会人が増加しており、企業が負担する医療費は年々増加の一途をたどっています。 また、その影響を受けて大企業の社員とその家族が加入する1,394の健康保険組合のうち、4割以上もの組合が経営赤字に陥っています。
医療費の企業負担が増加すれば利益が減少し、戦略的投資に使用できる資産が少なくなってしまいます。 そして、健康保険組合が解散すれば全国健康保険協会に加入することになるため、組合独自の給付が受けられなくなる上、自社が加入している健康保険組合の保険料が協会けんぽよりも低く設定されている場合には支払う保険料が増加することになってしまいます。
健康保険組合連合会の試算によると、団塊世代が後期高齢者となる2025年には、全体の4分の1を超える健康保険組合が解散の危機を迎えるといいます。
従業員やその家族の健康に配慮して医療費の削減を図ることは、企業が率先的に取り組むべき重要課題 になっているのです。

健康管理の具体的な取り組み

会社の現状を知る

社員の健康管理を行う前に、先ずは会社の人事制度や具体的な取り組みの実態を把握する必要があります。自社の人事制度では健康的な労働生活を送ることができるか、健康に関して既に取り組んでいることはあるかなど、現状をしっかりと把握しましょう。働く人の環境変化や年齢により求められていた制度が今は変わっている場合もあります。

自社の現状をどのように把握すれば良いのか分かりかねているという企業担当者の方は、厚生労働省が提供している働き方・休み方改善指標や、経済産業省が実施する健康経営度調査と自社を照らし合わせてみると良いでしょう。

定期的な健康診断・ストレスチェックの実施

社員の健康に関する実情を把握するには、社員全員に対して定期健康診断を実施すること、さらにはストレスチェックも行い、体には表れていない精神衛生の部分も現状を把握するといった取り組みを行うべきです。そして、形だけを作るのではなく、健康診断受診率100%を目指し、実質を伴ったものにしなくてはいけません。会社での疲弊やストレスは、社員の心身ともに影響を与えます。定期的に社員の心身の両面から管理し、実際の取り組みにつなげていくことが大切です。

社員の健康を維持する仕組みづくり

ただ定期的に心身の状態を確認するだけでは、データが集まるだけで社員の健康にはつながりません。大切なのは、社員が自ら健康増進を心がけ、健康を維持できる仕組みをつくることです。十分な休憩時間の確保や長時間労働の是正、専門家による健康セミナーの開催、社内での部活動の推進など、様々な制度として設けたり、健康を意識する機会や情報を提供したりすることで、社員が健康へ関心を寄せるよう計らいます。1度のセミナーやイベント実施で終わるのではなく定期的に健康についての情報を発信し続けることで、社員が積極的に健康を意識するようになれば、自然と健康増進、維持につながるはずです。

女性の働きやすさにも配慮

女性のさらなる社会進出および活躍が期待されている昨今、企業は女性の働きやすさについても考える必要があります。
希望者は定期的にカウンセリングを受けられる制度や、婦人科検診が受けられる制度といった施策は大変効果的でしょう。また、産休育休制度を充実させることで出産育児と仕事の両立への不安も少なからず解消されるはずです。

まとめ

働き方改革の推進を加速させるには、まず社員の健康と就業環境の健全化が必要不可欠です。
社員の健康増進によって、集中力の向上やモチベーションアップなど、働き方改革を進めるうえでプラスの効果を発揮するメリットが多くあります。まずは会社の現状を把握し、課題に適した取り組みを行うことが大切です。社員の健康管理から、働き方改革を加速させていきましょう。