外国人技能実習生と働き方改革

外国人技能実習生と働き方改革

外国人雇用と外国人技能実習生

技能実習制度は、国際貢献のため、開発途上国等の外国人を日本で一定期間に限り受け入れ、OJTを通じて技能を移転する制度となってます。これらの制度と働き方改革の関連性とはなんでしょうか。

外国人労働者受け入れを拡大の背景

働き手の不足を補う

日本は少子高齢化社会が進み、労働人口が減少しています。介護職種や建設業等、専門的な技術が必要な現場の従業員の高齢化も企業が抱える問題の1つといえます。この事態に対応 すべく、外国人材の受け入れに前向きに取り組んでいます。
2017年11月に技能実習生法改正があり、外国人技能実習制度専門の機関、外国人技能実習機構が設立され制度の強化が図られました。また2019年4月には技能実習の上位資格である特定技能という在留資格が誕生し、より外国人材受け入れの幅が広がりました。

グローバル・ダイバーシティ

ダイバーシティの概念には、女性活躍やマイノリティの他にグローバル化も含まれています。国際化が進む中で、多彩な異文化が共存共栄するグローバル・ダイバーシティを取り入れることは、企業イメージにも繋がります。文化に配慮し、互いに尊重することが重要となります。

技能実習制度の本来の目的

本来の目的

日本は少子高齢化が進む中で、業界によっては人手不足に悩まされています。この人手不足の現状からも技能実習制度は、今や日本にはなくてはならない制度となっています。 日本の人手不足の一助となっていることに違いありませんが、技能実習制度の本来の目的は人手不足解消とは別のところにあります。
そもそも技能実習制度は期限が決まっています。技能実習生はその期間に日本で培われた技能、技術又は知識を学び、母国(開発途上地域)に移転すること、帰国後に習得した技能で国の発展に寄与するという国際貢献が目的となっています。

技能実習制度は単純労働が目的ではない

この制度の問題点として、技能実習生に低賃金で単純労働をしてもらえるという誤解があります。 先にも述べましたが、本来の目的は技能実習生の母国への技術移転を目的としています。
そのため、受け入れ企業は受け入れの際、技能実習生が実習を行うための技能実習計画を提出しなければなりません。職種によって実習内容は異なりますが、提出した技能実習計画に沿って行わなければなりません。安い労働力であるとだけ認識していると技能実習生を受け入れる際のトラブルのもとにもなりかねません。

まとめ

改正入管法など、新たな労働力の確保を期待する業種には歓迎されつつも、受け入れ体制の面などで課題が多いのも現状です。制度の内容を知り、外国人労働者との共生に向けて一歩を踏み出しましょう。

2019年の働き方改革振り返り

2019年の働き方改革振り返り

2019年の働き方改革

2018年6月29日に成立し、2019年4月1日をもって、適用開始された働き方改革法案。 2019年はどのような動きがあったかまとめてみました。

有給休暇の時季指定が一斉スタート

年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、付与した日から1年以内に5日以上を取得させることが義務付けられました。この労働者には、管理監督者も含み、 また、パートタイム労働者も週の所定労働日数や勤続勤務年数によっては対象になる場合があります。労務担当者は、誰が対象者なのかを正確に把握する必要があります。

有給休暇管理簿の作成義務化

また、企業には年次有給休暇管理簿の作成と3年間の保存義務が課せられます。管理簿とは、時季、日数および基準日を労働者ごとに明らかにした書類のことです。

有給休暇の時季指定に違反した場合には、30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。

時間外労働の上限規制

労働基準法32条では、企業は労働者に、休憩時間を除いて1日8時間・週40時間を超えて働かせてはならないとされています。 36条でその延長について定めており、いわゆる36協定を結ぶことで時間外に労働させることができるようになります。これまでは、労働基準法の中にこの延長できる時間についての上限はありませんでしたが、今回罰則付きの残業時間の上限が定められます。
原則として月45時間まで、年間360時間までですが、業務上の事情がある場合は労使同意のもとで、月間100時間未満であること、2カ月~6カ月平均の全てがひと月当たり80時間以内であることを条件に年720時間以内まで上限を上げることができます。また、原則である月45時間未満を超えることは年6回までとされています。

労働時間の上限規制に違反した場合には、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。大企業では2019年4月、中小企業では2020年4月から施行され、業種によっては上限規制が変わったり適用されないものもあります。

2020年以降の動向

時間外労働の上限規制、中小企業でも適用

働き方改革関連法案は2019年4月1日から施行されますが、中小企業に関しては1年間の猶予期間が設けられ、2020年4月1日から適用されます。

同一労働同一賃金

同一労働同一賃金が大企業では2020年4月、中小企業では2021年4月から施行されます。正規雇用労働者と非正規雇用労働者の不合理な待遇差を無くすというもので、同じ仕事をしている人で正規と非正規で待遇に差をつけてはいけないとガイドラインで示されています。
現状では、正規と非正規の待遇差について聞かれた場合に、企業は必ずしも説明をしなければいけない義務はありません。しかし同一労働同一賃金が施行されたあとは、労働者から求めがあった場合には、企業は説明をしなければならなくなります。 労働者から問い合わせを受ける窓口は、労務担当者になることがほとんどであると思います。同一労働同一賃金施行後は、求めに応じて回答できる態勢を整えておくことが必要です。

まとめ

働き方改革の取り組みは来年度も引き続き行われます。引き続き動向を注視し、しっかりと対応していきましょう。

パート・アルバイトの働き方改革の問題点

パート・アルバイトの働き方改革の問題点

パート・アルバイトの働き方改革の問題点

同一労働同一賃金のデメリット

パート・アルバイトの働き方改革において最もメリットが大きい同一労働同一賃金。しかし会社の運用次第では正社員、非正規社員共に大きなデメリットにつながる可能性もあります。

残業時間の短縮で賃金面にデメリット

正社員やフルタイム、パートやアルバイトの形態に関わりなく、残業時間の上限規制によって、残業代を生活費に充てていた場合は、家計に影響が出てしまう可能性があります。 また、半強制的になってしまうような残業禁止という風潮が起こってしまった場合、持ち帰り残業の横行に繋がりかねません。そうなってしまうと、本来であれば残業で割増賃金がもらえていたところ、サービス残業で1円ももらえないということになってしまいます。

働き方改革によって、パートの労働時間や勤務日が増える可能性がある

働き過ぎの防止に関して言えば、残業の上限や休暇取得に関するルールができても、直接的な影響をほとんど受けないものと考えられます。
一方、正社員については、長時間残業をなくす、休暇を積極的に取得するという動きが、これから加速していくことになるでしょう。その中で正社員の仕事を減らして、パートタイマーにその仕事を割り振る、正社員に休暇を取得させるために、パートタイマーの勤務日を増やすなどの対応策が講じられるものと考えられます。
働き方改革によって正社員の残業が減り、休暇が増えると、その分だけ、パートタイマーの労働時間や勤務日が増える可能性があるということになります。

従業員数削減につながる可能性

賃金単価が上がるなら、その分の人数を減らすという方向性です。 現在よりも少ない人数で回すという方向に企業が傾く可能性もあります。

正社員の賃金水準を引き下げられる

正社員と非正規社員の給与水準を同じにしなければならないなら、その中間に両者を近づける、というものです。低い方に合わせてしまうと言う発想自体あまり良くないですが、同一労働同一賃金の実現の難しい企業では行われてしまう可能性があります。

まとめ

働き方改革における同一労働同一賃金は、パートアルバイトにもメリットがある反面、運用次第では思わぬデメリットになります。動向を注視しつつ企業がどのような対応を行っていくか、確認していくのも重要です。

パート・アルバイトの働き方改革のメリット

パート・アルバイトの働き方改革のメリット

パート・アルバイトの働き方改革のメリット

パート・アルバイトも働き方改革法案の同一労働同一賃金の枠内で働き方改革の対象となります。これによるメリットとは何でしょうか?

正規、非正規間の不合理な待遇差がなくなる

働き方改革では非正規雇用の待遇面の改善が行なわれることになっています。これはパート・アルバイトも対象となっております。同一労働同一賃金など元々派遣社員などの非正規雇用向けの施策のように報道されていましたが、パート・アルバイトも同じ非正規の枠で保証されます。では具体的にはどのようなことなのでしょうか?

同じ業務であれば同じ賃金が支払われる

契約社員やパートタイマーなどの非正規雇用労働者であっても、正社員と同じ業務を行っている場合は、同等の給与や福利厚生を受けるべきということです。 これにより、非正規雇用労働者の賃金が上がる事になります。

通勤手当が支給される

同一労働同一賃金による格差是正の為、また、契約期間やパートタイマーであることを理由とする不合理な差別を禁止しています。
非正規雇用であっても正社員と同じように企業は通勤手当を支払う必要が出てきます。

働き方の選択肢が広がる

様々な都合に合わせた業務形態を促進する事にもなりますので、テレワークなど多様な働き方に対応できると期待されています。

働き方改革がパート・アルバイトに与える影響

パートの雇用が増える可能性

残業時間の上限が設けられたことで、正社員やフルタイム労働者の労働時間が短縮されます。 これにより、パートタイム労働者の雇用が増える可能性があります。

有給休暇取得率の増加

パートだから有休がないと考える労働者や企業は、いまだに多いのが実情です。 しかし今回の法改正により、年次有給休暇が10日以上の労働者に対し年5日以上の有給休暇を与えないと、企業に罰金が課せられます。
働き方改革によって、有給休暇に対する意識が向上することが期待されます。

待遇面が改善される

社員並みの働きをしているにも関わらず、パートだからと低い時給で我慢している方も多いと思われますが、これから取り組みが進めば正社員と同様の待遇に改善されていくことになります。

まとめ

同一労働同一賃金は、本来の目的通りに実現すればパートアルバイト含む非正規雇用者の賃金アップにつながるかもしれません。 一方で、実現に至るまでには多くの課題があるため今後の動向にも注目する必要があります。
しかし、これまで労働市場にいなかった女性や高齢者の方にとっては、働くきっかけにつながる可能性があり、多様な働き方が実現できるメリットもある為、多様なワークスタイルの人が働きやすい環境づくりは今後重要になって行くでしょう。

パート・アルバイトの働き方改革

パート・アルバイトの働き方改革

パート・アルバイトの働き方改革

2019年4月より施行された働き方改革関連法。時間外労働の上限規制や有給休暇取得義務化などが話題になっていますが、パートアルバイトにも実は影響があることをご存知でしょうか?
パート・アルバイトの働き方改革の影響などを紹介します。

働き方改革の影響

働き方改革では非正規雇用の待遇面の改善が行なわれることになっています。これはパート・アルバイトも対象となっております。同一労働同一賃金など元々派遣社員などの非正規雇用向けの施策のように報道されていましたが、パート・アルバイトも同じ非正規の枠で保証されます。

同一賃金同一労働

2020年4月から、中小企業は2021年4月から、。パートタイム・有期雇用労働法が施行されます。これは、正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差を禁止する法律です。同じ企業の間で、基本給や賞与を含めたすべての待遇において、同じ能力や同じ貢献度を持つ労働者であれば、正社員とアルバイトの間で同一の賃金を支給すべきと定めています。厚生労働省はこの考え方を同一労働・同一賃金として、ガイドラインを定めています。
同一労働・同一賃金ガイドラインによれば、正社員とパートタイム労働者の賃金決定基準に違いがある場合の根拠として「正社員とパートタイム労働者では将来の役割期待が異なる」という主観的説明では不十分。職務内容や職務内容・配置の変更の範囲が同じ場合は、差別的な扱いをしてはいけないと定めています。賞与についても、会社への貢献度に応じた金額が支給される場合は、正社員とアルバイトが同一の貢献度の場合、同一の賞与を支払わなければなりません。
また、待遇に関する説明義務の強化も盛り込まれています。アルバイトで働く人は、正社員との待遇差の内容や理由について、事業主に対して説明を求めることが可能で、事業主にはその説明義務があり、説明を求めた労働者への不利益な取り扱いも禁止されています。

有給義務化の対象

今までパート・アルバイトに有給がないあっても取りづらいという風潮がありました。 今回の法改正により、年次有給休暇が10日以上の労働者に対し年5日以上の有給休暇を与えないと、企業に罰金が課せられます。
これはパート・アルバイトも対象です。有給休暇付与日数が10日以上という条件を満たせば対象になります。
10日の有給休暇が付与される条件は、半年間継続して雇われ、全労働日の8割以上を出勤している場合。原則として、半年間勤務すれば10日の有休が付与され、取得義務の対象となります。

ただしアルバイトなどで所定労働日数が少ない場合は、付与される有給休暇の日数は、所定労働日数に比例して計算。たとえば、1週間の所定労働日数が4日で、かつ1週間の所定労働時間が30時間未満の場合、10日の有給休暇が付与されるまでの継続勤務年数は、3年6ヵ月。週3日の場合は5年6ヵ月となります。勤務日数に応じて、取得義務化の対象となるまでの勤務期間が異なるので注意が必要です。

残業時間の上限規制はアルバイトにも適用

残業時間の上限規制は正社員だけでなく、アルバイトの場合も、これを超えた労働は時間外労働とみなされ、月60時間までの時間外労働は通常の賃金の2割5分以上、月60時間を超える時間外労働には5割以上の割増賃金が支払われます。
また、時間外労働が月45時間を超えることができるのは年間6ヵ月までという上限も、正社員だけでなく、アルバイトとして働く人にも同様に適用されます。

まとめ

学業や子育て、本業などを理由にフルタイムで働くことを選ばない人が、能力を発揮できる余地は多くあります。人材が不足する中、労働者だけでなく企業にとっても、パートタイムで働く人がより活躍できる環境を整えることは急務です。
まだまだ改善の余地がある働き方改革ですが、これまで労働市場にいなかった女性や高齢者の方にとっては、働くきっかけにつながる可能性があります。

公務員の働き方改革の事例

公務員の働き方改革の事例

公務員の働き方改革の事例

公務員の働き方改革の事例

働き方改革による長時間労働是正の動きは民間だけでなく、公務員などにも広まりつつあります。 実際にどの様な動きがあるでしょうか。

公務員の働き方改革動向

人事院が国家公務員の残業時間規制を改正

2019年2月1日には人事院規則15-14(職員の勤務時間、休日及び休暇)として、正式に一部改正、改正労働基準法と同様、2019年4月1日から施行されることになりました。
具体的には、超過勤務命令(時間外労働)の上限時間を、1か月について45時間かつ1年について360時間までと規程を改正。他律的業務の比重の高い部署に勤務する職員に対しても、1か月について100時間未満かつ1年間720時間までという、明確な上限が設けられました。

フレックス制の導入

実は2016年より国家公務員全職員に対してフレックスタイム制が導入済みとなっております。地方公務員については、国家公務員の様にフレックスタイム制の全体拡充はされていませんが、各自治体において時短勤務制度など一部でのみフレックスタイム制が本格的に導入している自治体も少なくありません。
働き方改革では、柔軟な働き方がしやすい環境整備においてフレックスタイムの導入が推奨されており、多くの一般企業ではフレックスタイムが導入されているのにも関わらず、実際には稼働されていない現状があったため、これを踏まえ、働き方改革の一環として国家公務員へのフレックスタイム制度導入に総務省が踏み切りました。

テレワークの導入

国家公務員にも積極的にテレワークを導入できるように取り組みがされています。国家公務員にテレワークが導入されれば現場での拘束時間が少なくなり、付随した通勤時間なども短縮されるので、負担が軽減され生産性の向上や長時間労働の是正にも繋がります。
しかし、機密性の高い業務を行なって関係上テレワーク業務での情報漏洩などのリスク管理の課題も残っています。

地方公務員の働き方改革

公務員の働き方改革は国家公務員の方でも民間に追従する様に少しづつ行なわれておりますが、地方でも働き方改革を積極的に行おうとしている地方自治体が目立つようになってきています。

副業解禁の神戸市

これまで、法律で禁止されていることもあり、公務員のダブルワークは基本的に自治体から禁止されてきました。 しかし、こうした考え方は政府が推進してきた働き方改革と矛盾をなす内容であり、多くの自治体で公務員のダブルワークを認めるかどうかが議論されてきました。
そんな中兵庫県神戸市で、2017年4月より、神戸市は職員が副業を行うことを認めると発表しました。
副業先はNPO団体など公共性の高い組織に限定されており、すべての副業が容認されたわけではありません。また、勤務時間外に限る常識外の報酬額を受け取ってはいけないなどの条件も課せられています。

川崎市の働き方改革のプログラム

神奈川県川崎市では多様化する住民のニーズに応えるため、自治体のサービス向上に努めてきました。しかし、一方で職員に過度な責任と仕事量を与える弊害も起こり、ワークライフバランスをいかに保つかが重要な課題になっていきました。
そこで、2018年4月から川崎市は働き方改革の取り組みとして、川崎市働き方・仕事の進め方改革推進プログラム」を作成しました。同プログラムにより職員のワークライフバランスと市のサービス向上を両立させるのが大きな狙いです。川崎市働き方・仕事の進め方改革推進プログラムでは、36協定の厳守、ノー残業デーの実施、午後8時を超える残業の禁止などを細かく指導しています。
また、会議の進め方やシステムの導入など、業務効率化に向けた取り組みも推奨し、現場が実践していくよう促しています。そのほか、テレワークの施行なども推進されています。

大阪府の長時間労働抑制システム

大阪府では職員のPCを午後6時以降は強制終了し、長時間労働を抑制する施策を打ち出しました。以前から同様の施策を府内の市区町村の一部で行なわれていました。 残業申請を行わないと午後6時以降のPC使用が出来なくなります。
しかし申請の手間が増えて逆に仕事が終わらなくなるという懸念もあります。

まとめ

地方公務員の働き方改革も積極的に行おうという動きは今後も多くあるでしょう。有事や災害時に働かざるを得ない公務員に、働き方改革が浸透するには時間がかかりそうですが、着実に前進していることが分かります。

公務員の働き方改革

公務員の働き方改革

公務員の働き方改革

残業や長時間労働も多い公務員

一般的に公務員と言えば、定時で帰れて給料も安定しているというイメージがありますが、公務員の現状として長時間労働も当たり前、残業代はあってないような環境で働いている方も少なくありません。
平成26年度に総務省が実施した地方公務員の時間外勤務に対する実態調査からは、都道府県と主要市の常勤職員1人当たり時間外労働時間は約158時間という結果が出ました。なお、国家公務員は233時間、民間事業所は154時間です。
地域住民への説明会の開催が夜間や休日が多い事、税金の徴収業務や相談を受ける為の自宅訪問などが時間外労働の要因となっています。

そもそも労基法適用外の公務員

一般企業で働くサラリーマンと異なり、公務員はやむを得ない理由での長時間労働や休日出勤があります。民間で働く労働者の労働規則を定めた法律が労働基準法ですが、公務員の場合は労働基準法ではなく公務員の労働規則を定めた法律の勤務時間法、及び人事院規則に従って働く事になります。
そして、人事院規則15-14(職員の勤務時間、休日及び休暇)第16条では正規の勤務時間以外の時間において職員に勤務することを命ずる場合には、職員の健康及び福祉を害しないように考慮しなければならないと定めていますが、災害その他避けることのできない事由に基づく臨時の勤務については、この限りでない国会関係、国際関係、法令協議、予算折衝等に従事するなど、業務の量や時期が各府省の枠を超えて他律的に決まる比重が高くと追記があります。災害発生や有事の際には、各省庁に指示を出す内閣府を始め、自衛隊、消防や警察、市町村役場などの地方公務員まで不眠不休で任務にあたる公務員も多くいます。
公務員である限り災害その他避けることのできない事由に基づく臨時の勤務においての長時間労働は避けられません。

公務員の長時間労働は是正されるのか?

公務員の働き方は、さまざまな法律で定められていますが、労働時間や時間外労働、休日労働などに関しては、国家公務員が人事院規則、地方公務員は人事委員会規則で定められています。これらの規則が改正労働基準法に準じる形で改正されれば、公務員の時間外労働は、民間と同様の上限に抑えられる可能性があります。

人事院が国家公務員の残業時間規制を改正

2019年2月1日には人事院規則15-14(職員の勤務時間、休日及び休暇)として、正式に一部改正、改正労働基準法と同様、2019年4月1日から施行されることになりました。
具体的には、時間外労働の上限時間を、1か月について45時間かつ1年について360時間までと規程を改正。他律的業務の比重の高い部署に勤務する職員に対しても、1か月について100時間未満かつ1年間720時間までという、明確な上限が設けられました。

まとめ

労働法の適用対象とならない公務員も、働き方改革がまったく関係ないということではなく、民間の動きに追随するように規定の改定を行なっております。 公的機関で働き方改革が浸透するには時間がかかりそうですが、着実に前進していることが分かります。
一方、公的機関の職員という公務員の業務特性から、テレワーク導入や副業解禁など簡単にできるものではないのも事実です。 柔軟な改革が続くか今後も引き続き注視しましょう。

運送業と働き方改革

運送業と働き方改革

運送業と働き方改革

トラックドライバーは、平均的な職業と比較しても長時間労働、低賃金の傾向があり、業務の改善が求められております。どのような取り組みが行われているのでしょうか

運送業と働き方改革

運送業は一般企業とは異なり、時間外労働の上限規制も適用時期も異なり、独自の働き方改革実現に向けたアクションプランを策定し取り組んでおります。運送業の働き方改革は建築業と同じく特殊特殊な事情があります。

改正労働基準法適用の例外

運送業は改正労働基準法に独自のアクションプランで取り組むことが明らかにされているだけでなく、時間外労働の上限規制も適用時期も、一般企業を対象にしたものとは異なっています。これは、時間外・休日労働が月100時間を超える労働者が多い運送業の特殊性と実態を考慮し、労働環境改善に時間がかかると判断されたためです。
厚生労働省の立ち入り調査によれば、トラック・バス・タクシーなどの運送事業所の8割以上で、労働基準法関係の法令違反が発覚したといわれています。激化する競争のなか、荷主のムリな要求を飲まざるを得ない運送業で、そのしわ寄せが労働者である運転手に転嫁されている状況となっております。
運送業の長時間労働を是正し、労働者の処遇を改善していくには、まず荷主の理解も含めた運送業全体の状況を改善していく必要があります

運送業に適用される働き方改革関連法案とは?

2019年4月1日に施行される改正労働基準法の一般則とは別枠で、2024年4月1日から適用となる、運送業に向けた働き方改革関連法案が制定されました。具体的には、一般則施行から5年間の猶予期間が設けられたほか、36協定による例外措置が、月平均80時間となる年間960時間とされました。
一般則よりも年間240時間多い上限とされたのは、運送業の特殊性が考慮されたものですが、宅配業を含めて年間720時間の上限適用検討に含みを持たせているのも特徴です。また直ちに取り組む施策として、2018年7月1日より国土交通省が行政処分の基準を引き上げました。
ドライバーの拘束時間・休日労働上限や、社会保険未加入などの法令遵守違反が認められた際の行政処分基準を厳格化した一方、ホワイト経営認証制度の創設が進められ、優良事業者がドライバーを確保しやすい環境構築も行われております。

働き方改革実現に向けたアクションプラン

2024年4月1日までに、年間時間外労働960時間超の事業所ゼロを目指すべく、働き方改革実現に向けたアクションプランを全日本トラック協会が策定し、実現のための要望を提言を行なっております。

  • 労働生産性の向上
  • 運送事業者の経営改善
  • 適正取引の推進
  • 多様な人材の確保・育成

まとめ

運送業と同様、改正労働基準法適用に、5年間の猶予措置が設けられている産業には建設業が挙げられます。しかし、5年後の労働時間上限規制が960時間にとどまる運送業は、ドライバーの長時間労働是正が容易ではないことがわかります。運送企業の努力だけでは業界全体の状況を改善できず、荷主企業の理解と協力が欠かせません。
運送業の働き方改革が進まず、業界に参入する労働者人口が減少し続けてしまえば、荷主企業にとってもタイムリーな物流が妨げられる要因となります。こうした状況を荷主企業と運送企業で共有し、今すぐにでも対話を進めていく必要があるでしょう。

高度プロフェッショナル制度の事例

高度プロフェッショナル制度の事例

高度プロフェッショナル制度の事例

高度プロフェッショナル制度が成立しましたが、実際に導入に踏み切った企業など話題に上がりません。現状どうなっているのでしょうか。

導入に高いハードル

高度プロフェッショナル制度は本人が適用に同意する事や健康管理規定、年収目安など、導入に高いハードルがあります。 そのため積極的に導入する企業が少ないのが現状です。

多くは導入に否定的

企業側からは対象者の給与が平均年収の3倍を保証するとなると、給与水準が高すぎて導入は難しいなど、成果と労働コストのバランスの問題や、従業員への影響について成果だけを評価し、モチベーションを維持できるか非常に疑問、対象となる人は過労死基準を超える長時間残業をしているのが実態など、良い影響は及ぼさないという意見が多く、こうしたことから定着するとは思えない、目的が長時間労働の抑止なのか、労働生産性向上なのか、わからないといった不満も多く、導入に否定的なのが現状です。

裁量労働制で間に合っている

似たような業務体制として裁量労働制である程度対応できることも大きな要因となっております。金融商品の開発、証券アナリスト、研究開発は、現行の専門業務型裁量労働制でも対応でき、こちらの方が運用は簡単です。

高度プロフェッショナル制度導入までの流れ

労使委員会の設置

高プロ制度を導入するにはまず労使委員会を設置し決議で5分の4の賛成を得る必要があります。労使委員会はその構成員の半数が労働者を代表する者となります。労組がある場合はその労組が、ない場合は労働者の過半数を代表する者が指名します。

労使委員会での決議

労使委員会では導入する高プロ制度の内容を決議していきます。具体的には対象業務、対象労働者の範囲、健康管理時間の把握とその方法、年間104日以上、4週間4日以上の休暇の付与、対象労働者の選択措置、健康・福祉確保措置、同意の撤回に関する手続き、苦情処理の具体的内容、同意しなかった場合に不利益取扱をしないことなどを決議します。

届け出と同意

上記決議を行い、その内容を労働基準監督署長に届出を行い。対象となる労働者から書面で同意を得ます。

運用

実際の運用過程では対象労働者の健康管理の把握や決議どおりに休日を付与し、健康・福祉措置の実施などを行う必要があります。そして労使委員会での決議から6ヶ月以内ごとにその運用状況を労基署長に報告することとなります。また同意した対象労働者も対象期間内は同意を撤回することができます。

まとめ

対象職種や年収の規定、また導入までの流れからあまり高度プロフェッショナル制度は導入が進んでいません。しかし今後の動向次第で制度の緩和などの動向もある可能性もあり、今後も動向に注目する必要がありそうです。

高度プロフェッショナル制度の問題点

高度プロフェッショナル制度の問題点

高度プロフェッショナル制度の問題点

高度プロフェッショナル制度は、残業などの時間外労働の概念がなくなることから残業代ゼロ法案とも呼ばれております。残業代ゼロ法案と批判される要因となった制度の問題点について確認してみましょう。

労働制度の悪用が主な問題

正しく運用されるのであればこれほど問題にはならないのですが、これらの制度は会社側が誤った認識をして制度を悪用する場合もあります。

残業代の概念が無くなる

高度プロフェッショナル制度では、労働時間の規定がなくなるため、残業や時間外労働という概念自体がなくなります。 つまりどんなに時間をかけて取り組んでも成果がでなければ賃金が上がらないので、事実上残業代ゼロ法案になるのです。

評価基準が難しくなる

高度プロフェッショナル制度で対象となる研究職などの業種は、成果を出すのに時間がかかることもあります。 また、成果の評価は業種ごとに異なるため、賃金格差が生まれる可能性があります。

本当に働かせたい放題になるのか

高度プロフェッショナル制度が適用された労働者は、原則として労働時間や休日の概念がなくなり、労働基準法の適用が大幅に制限されます。従来、労働基準法は労働者を保護するために休日や残業の制限などが行われていました。しかし、高度プロフェッショナル制度が適用されるとこれらの制限が及ばなくなり、いたずらに長時間労働を強いられる可能性が生じます。極端な話、24時間を何日働いていても、労働基準法違反にならない可能性があります。
ただし高度プロフェッショナル制度が適用されたるためには、健康の確保措置などについての労使委員会での決議や、対象労働者本人が同意することが必要です。また、年間104日以上、かつ、4週4日以上の休日確保を義務があります。働かせ放題にさせないためには、これらのことを労使双方でどのように守っていくかが鍵になります。

対象業務は国会の議論がなく拡大できる

高度プロフェッショナル制度の対象業務は現状専門業務となっていますが、厚生労働省令で定める業務となっており国会の議論を経ずに範囲が拡大される可能性があります。

交通費や通勤手当の問題

高度プロフェッショナル制度の年収要件は1075万円以上とされていますが、その金額に交通費や通勤手当が含まれるのか。審議では入ると回答されており、その中に住宅手当や資格手当なども含む可能性があり、実質の年収が想定よりも低い労働者にも、高度プロフェッショナル制度が適用されやすくなります。

まとめ

高度プロフェッショナル制度は、活用法によっては、柔軟な働き方を実現して日本企業の生産性を向上させるきっかけとなります。しかし残業代の扱いをはじめとして、制度の運用に関して解決しなければいけない課題が多く、長時間労働を合法化するための制度と批判されても仕方がない側面も持ち合わせています。今後も動向に注目する必要がありそうです。