2020/11/13

2021年4月から適用 中小企業におけるパートタイム・有期雇用労働法の適用とは

2021年4月から適用 中小企業におけるパートタイム・有期雇用労働法の適用とは

2020年から大企業で適用されていた。働き方改革関連法のひとつであり、同じ企業における正社員とパートタイム労働者等の間の不合理な待遇差を禁止することなどを定めたパートタイム・有期雇用労働法が2021年4月より中小企業でも適用対象となります。

パートタイム・有期雇用労働法とは

パートタイム・有期雇用労働法は、もともとはパートタイム労働者を対象としていた短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律が改正され、その対象としてパート労働者に加えて有期雇用の労働者も適用対象としたものになります。不合理な待遇差に関する規定が追加され正規非正規の格差を是正するものとなっております。今回の法改正において、正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与などあらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることが禁止されるようになりました。

不合理な待遇差についての規制

不合理な待遇差に関する直接の規定としてパートタイム・有期雇用労働法は、均衡原則8条、均等待遇の原則を定めています。

均衡原則

この原則は、正社員とパート従業員・有期雇用従業員との間で、給料やボーナス等の待遇について不合理な差を設けてはならないというものです。

均等待遇

こちらの原則は、正社員と同視できるようなパート労働者・有期雇用労働者については、待遇を正社員と差別的に取り扱ってはいけないというものです。
すなわち、一般のパート労働者や有期雇用労働者について、合理的な根拠に基づいていれば待遇に差があっても構わないのですが、正社員と同視できるパート労働者や有期雇用労働者に対しては、正社員と同じ待遇にしなければならないということです。 正社員と同視できるか否かは、職務の内容が同一かどうか、職務内容と配置の変更の範囲が同一かどうかという観点から判断されることになります。

判断要素

しかし、これだけではどのような場合が許されて、どのような場合が許されないのかはっきりとしません。
そこで参考になるのが、厚生労働大臣によって定められたガイドラインです。 ガイドラインに具体的な法的効力があるわけではありませんので、ガイドラインに違反することイコール違法ということではありませんが、実際上裁判所が違法性を判断するうえで大きな考慮要素になることは間違いありません。 基本的な考え方として、正社員との待遇の違いについて、その理由をきちんと説明できるかどうかということが大事になります。また、仮に説明できたとしても、主観的な説明や抽象的な説明では不合理性を払拭できるものではありません。
例えば、「正社員とパート労働者では将来の弊社に対する貢献や役割に対する期待が異なるからといった理由では不合理性を否定できないでしょう。

説明義務

パートタイム・有期雇用労働法の14条2項は、パート労働者や有期雇用労働者を雇い入れる際に、その者から求めがあった際には、正社員との待遇の相違の内容、理由等を説明しなければならないことを定めています。
これに違反することそれ自体に何かペナルティが用意されているわけではありませんが、十分な説明を行わなかったことは、上記の均衡原則や均等待遇の原則に反します。 この説明義務を果たすためにも現状のパート労働者らに対する待遇を見直し、必要に応じて変更するなどの対応が必要になります。

メリット・デメリット

雇用を控える可能性

この法律により、正社員との不合理な待遇差が解消されるため、待遇が改善することや、正社員になるハードルが下がることが期待される反面、人件費の削減のために非正規社員の雇用を控える企業が増える可能性も懸念されています。

正社員は減給の可能性

正社員と非正規社員の不合理な待遇差をなくすために、人件費が上がり、結果的に賃金全体が引き下がる可能性があります。 更に、非正規社員との違いを設けるために、会社から求められる能力が高くなる可能性もあります。

企業におけるメリット・デメリット

非正規社員の不合理な待遇差をなくすことで、非正規社員の仕事に対するモチベーションが上がり、労働生産性があがることが期待されます。  一方で、賃金や手当、福利厚生などの待遇を見直すことで、総人件費が上がるという懸念や、待遇差について説明を求められた時の対応などの義務が増加します。

まとめ

就業規則等を見直すためには想像以上に話し合いや手続きの手間がかかります。 特に中小企業ではパート・アルバイトが正社員と同一の業務・責任を行っているというケースも珍しくないでしょう。
早急に確認を行いましょう。